世界の最優秀な人材が集う
シュワルツマン学院は一年間の修士課程を設ける大学院である。募集対象は世界各国の優秀な若者たちだ。応募条件としては次の3つ。1つは大学卒の学歴、2つ目は年齢が18-28歳、3つ目は上達な英語能力。定員は200名だが、米国45%、中国20%、残る35%はほかの国が占める。
2016~17年期の応募者は3000人を超え、厳格な書類審査、面接を経た結果、110名が合格した。面接会場はニューヨーク、ロンドン、北京、バンコクなど4ヵ所に設けられ、アメリカの元政府高官や大手企業CEOが自ら面接を担当した。
一期生の出身校を調べてみると、110人のうち、ハーバード大学6人を筆頭に、プリンストン大5名、清華大5名、エール大4名、MIT、コーネル大、ウェストポイント、北京大学、南開大学などそれぞれ3名、スタンフォード大学とオックスフォード大学がそれぞれ2名、ケンブリッジ大学1名が続く。
これまで中国の最優秀な学生は欧米の名門大学に留学してきた。しかし、今は世界で最も有名な大学の優秀な人材が中国の清華大学に集結する。これは画期的な意義がある。シュワルツマン氏本人は2016年9月初め頃、「ウォール・ストレート・ジャーナル」紙のインタビューに応じ、シュワルツマン学院設立の意義を興奮気味で次のように強調した。
同年11月、シュワルツマン氏は「中国新聞週刊」誌のインタビューの中で、次のように述べている。「通常、最も優秀、最も聡明な人たちは、ハーバード大学や、エール大学、プリンストン大学、スタンフォード大学、オックスフォード大学またはケンブリッジ大学など西側の名門校を選ぶ。しかし、この度は初めて、これほどトップクラスの大学の学生が中国に来る。これは大きな変化で、象徴的な出来事である。つまり世界各国の人たちは中国に興味あることだ」。
シュワルツマン氏の構想によれば、毎年200名の優秀な人材を育成し、50年で1万人になる。50年後、今の中国を理解するグローバルリーダーが必ず「シュワルツマン学院」から出てくるだろう。
豪華な顧問委員会メンバーと教授陣
未来のグローバルリーダーを育成するために、シュワルツマン学院は欧米諸国の政府首脳経験者または重要閣僚経験者、著名大学の学長及び大手企業の経営者を顧問に迎えた。
学院の教授陣も凄い。ハーバード大学、エール大学、スタンフォード大学、オックスフォード大学、ケンブリッジ大学、清華大学、北京大学など世界名門大学の教授たちが学生を教えている。授業は全て英語で行われる。中国語の授業もある。清華大学やハーバード大学、エール大学の教授が教えることが多いが、アメリカのサマーズ元財務長官、ポールソン元財務長官、クリスティーヌ・ラガルドIMF専務理事ら大物ゲストの講義も頻繁にあるという。
コアコース(必修)と選択コース
シュワルツマン学院はコアコース(必修)と選択コースを設けている。卒業論文もあり、1年で学位を取得できる。
コアコースには、リーダーシップ論、中国文化・歴史及び価値観、中国と世界経済、中国と国際関係、比較公共治理などの科目が含まれる。
一方、選択コースは経済管理、国際関係、公共政策の3つから選ぶ。アメリカの金融機関やコンサルティング会社から既に内定を得ている学生も多く、経済管理や国際関係の科目の人気が高いという。
授業のほか、学生たちは中国企業や政府部門及び農村にも行って、短期間の研修を通じて中国社会・文化への理解を深める。一部の学生は中国ネット通販最大手のアリババで企業研修も経験した。
シュワルツマン学院は全寮制で、キャンパスには教室のほか、図書館、食堂、スポーツジムなどの施設も完備される。朝から晩まで数十カ国110人の学生が一緒にいる。こんなに濃厚に他の人と付き合いコミュニケーションができることはとても新鮮であり、国際的な人脈作りにも繋がる。各国に友だちができるのは、学生にとって、貴重かつ大きな財産になるのは間違いない。
米中は緊密連携 日本はカヤの外
米中は表向きでは様々な問題で対立しているが、水面下では緊密に連携し絆を深めている。シュワルツマン学院は正に米中緊密連携の裏付けであり、日米より遥かに密度が高い米中関係の象徴ともいえる。
シュワルツマン学院は構想段階から米中共同作業で行われ、参考モデルはイギリスのローズ奨学金で、学生は米中欧の優秀な人材が中心となる。米国の現役軍人も数人いる。米中軍事面の交流を重視するアメリカ政府の姿勢が伺える。
一方、日本はカヤの外に置かれている。寄付企業が欧米中心で日本企業の名前が見つからない。面接会場4カ所にも東京の名前がない。一期生110人のうち、日本人の生徒は僅か2人。1人は慶應大学卒、もう1人は米エール大学卒である。2017年度第2期の新入生126名のうち、日本人はゼロ。これだけ魅力的な学院だが、日本の若者たちは無関心だ。内向きになる日本の姿が如実に映される。
米中相互留学の学生数は年々増えている。中国からアメリカに留学する人は2015年度に約33万人で日本人の17倍。アメリカへの留学生全体の31.5%を占め、7年連続で国別トップ。一方、アメリカから中国に留学する人は2016年度23,838人で、国別で韓国に次ぐ2位。中国への日本人留学生の約2倍、日本に留学するアメリカ人の9倍に相当する。
科学の共同研究分野でも米国は中国を最も重視している。文部科学省の資料によれば、2013~15年、自然科学8分野のうち、米国が選ぶ共同研究の相手国は化学、材料科学、計算機・数学、工学、環境・地球科学、基礎生命科学など6分野で中国が1位、物理学が2位、臨床医学が3位。日本はすべての分野で5位以下となる。米中は連携の絆を深める一方、内向きな日本は置き去りにされつつある実態が浮き彫りになっている。