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- 第16回 越境EC
ネット決済会社のペイパル(PAYPAL)が発表した「世界越境コマースレポート(Global Cross-border Commerce Report)2018年度版」では、調査回答者の50%がオンラインショッピングで海外から買っている。
これは世界31カ国3万4,000人を対象に、買い物をする動機を調査したもので、「越境ECサイト」と呼ばれる自国以外の人に向けたネットショッピングサイトで買い物をしている地域をみると、中東が70%と多く、国別ではアイルランド(海外のみで購入19%、海外でも購入65%)、オーストラリア(海外のみで購入16%、海外でも購入56%)、イスラエル(海外のみで購入16%、海外でも購入64%)、香港(海外のみで購入13%、海外でも購入62%)、シンガポール(海外のみで購入14%、海外でも購入59%)、ベルギー(海外のみで購入16%、海外でも購入56%)、ルーマニア(海外のみで購入14%、海外でも購入56%)などで、最も少ないのがダントツで日本(海外のみで購入1%、海外でも購入5%)、次いでドイツ(海外のみで購入5%、海外でも購入27%)、アメリカ(海外のみで購入7%、海外でも購入27%)、インド(海外のみで購入7%、海外でも購入27%)、イギリス(海外のみで購入19%、海外でも購入65%)、ポーランド(海外のみで購入19%、海外でも購入65%)となっている。
越境ECサイトで買い物をする動機を見ると、1番多いのが「安く手に入る」(72%)で、多くの消費者は国に関係なく価格比較しており、越境ECサイトで購入する時は「送料が高いことがネック」(25%)、「関税や購入に際してかかる租税を気にしている」(24%)という回答も多かった。
買い物動機2番目は、「自国で手に入らない目新しい商品を探すため」(49%)、「新しく面白い商品を探すため」(34%)、「質のいいものを探すため」(29%)と続いており、送料や税金を気にしつつも、自国では手に入らなかったり、高かったりするものを求めて海外ECサイトで購入していることが伺える。
こう考えると日本では世界中の物が手に入り、値段の安いものも豊富に揃っているため、語学や為替、送料などを考えたりせず日本で探した方が快適に買えるため、利用者が極端に少なくなっているようだ。
また、購入に使われた端末を見ると、モバイルまたはタブレットを使った購入の割合が、中国53%、インド48%、アメリカ45%で、中東を除く世界各国で30%以上がモバイルで購入されており、発展途上国でもスマートフォンなどで簡単に海外から買えることも、越境ECが増える要因と考えられる。
経済産業省が2018年4月に出した「電子商取引に関する市場調査」では、世界31市場で越境ECを行ったネットユーザー(2万8,892人)が、購入先として利用したEC事業者の1位は「Amazon」(25%)、2位が「eBay」(18%)、次いで「Alibaba/AliExpress」(14%)、「Wish.com」(8%)、「Zalado」(2%)、「Apple」(1%)とAmazonの強さも目立った。
2017年の世界の越境EC市場規模は、前年比32.5%増の5,300億ドル(約58兆円)で、2020年まで20%以上の成長率が見込まれており、2020年の市場規模は9,940億ドル(約109兆円)になる見通しという。
日本から販売する2017年時点の越境ECの市場規模は、中国向け1兆2,978億円(前年比25.2%増)、アメリカ向け7,128億円(前年比15.8%増)で合計2兆106億円だが、2021年には4兆412億円に達すると推計されている。
それに対して、日本人が中国から越境ECで買っているのは243億円(7.3%増)、アメリカから買っているのは2,327億円(7.2%増)と額も伸び率も少ないため、日本のネット販売サイトが海外での販売を目指して始まった「越境EC」だが、海外顧客の日本サイトでの購入を目指した動きが主流であることは間違いない。
======== DATA =========
●Global Cross-border Commerce Report 2018
●「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る 基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」調査結果要旨