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講師インタビュー【増収・増益・増“元気”!数字を社長の武器にする経営】田中靖浩氏

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 企業の会計指導を行う公認会計士でありつつ、ベストセラー『経営がみえる会計』、『会計の世界史』の著者、会計をわかりやすく伝えるプロである田中靖浩氏に、社長の正しい数字との向き合い方と、経営への上手な活かし方についてお伺いしました。■田中靖浩氏(たなか やすひろ)氏/作家・公認会計士
 作家・公認会計士。田中公認会計士事務所・所長。1963年生まれ。早稲田大学商学部卒業後、外資系コンサルティング会社などを経て独立開業。コンサルティング、執筆、講師といった堅めの仕事から、落語家・講談師との公演など柔らかい仕事まで幅広く活動中。経営・会計の基本から最新動向を真面目かつポップに、笑いを交えて解説する。最近は「会計の世界史」(日本経済新聞出版社)をはじめ「会計経済×アート」の掛け算コンテンツを得意としており、大学、カルチャーセンター、NHKラジオで歴史講義を担当している。著書の多くは海外諸国にも翻訳出版されており、好評を博している。故郷三重県の若手経営者支援事業「MIE塾」の塾長、文化庁各種ワーキンググループ委員など、公職を通じた中小企業支援や国立美術館・博物館等アート分野の支援にも積極的に取り組む。

数字を社長の武器にして経営を変える!

社長は何に注意して数字を学べばよいでしょうか?

 社長は「数字を学ぶ」というよりは「数字の活かし方を知る」ことに意識を向けるべきです。数字は一見無味乾燥に思えますが、そこには経営を取り巻くヒト・モノ・カネが息づいています。今回、「利益がみえる経営」というテーマでお伝えしたかったことは、数字から経営全体が見えるようになること。その情報を活かして、もっと利益があがり、元気な会社にする方法を知ってもらうことです。

 前回の《入門・教養編》にあたる「会計と経営20のカギ」は、会計の面白さを歴史や教養などのリベラルアーツと絡めて学ぶことがメインでした。今回は《実践編》として一歩踏み込み、数字を武器にして経営を変えていく考え方や実践法についてお伝えしました。

 ただ、難しい話はありません。経営や商売のお話なので、社長にとってはむしろ、なじみ深い内容だらけのはずです。

「銀行」や「社員」と良好なコミュニケーションを

数字が武器にできると、何が変わりますか?

 最もわかりやすいのは、「2つのコミュニケーションの質が上がる」ということでしょう。

 1つは「銀行」。中小企業の経営は、社長の頭の中で進んでいても、外からは見えにくい場合があります。経営の「方向性」や「ビジョン」、平たく言えば「社長が何をやりたいのか」が明確に数字を通して伝えられる様になる。取引銀行は安心してくれますよね。また、厳しい時でも方向性が見えていれば、応援してくれる様になります。

 もう1つは「社員」。中小企業は社長と社員の距離が近いことが特徴ですが、せっかくのその特徴を活かしきれていない経営者が多いように感じます。2代目、3代目といった後継社長が舵取りをする段階の中小オーナー企業では、数字をうまく活かせば、会社の雰囲気は見違えて良くなります。

AI時代に必要な「社長の数字力」とは?

数字で会社の雰囲気が良くなる、とはどういう事ですか?

 これまでは「会社の上層部だけがわかっていれば良くて、社員は知らなくて良いもの」の代名詞が「会社の数字」だったかもしれません。しかしもう、最近それではダメですね。

 経営環境が変わって景気も厳しくなってきたからこそ、社長がリードを取って会社の数字を上手に共有して、皆で危機意識を持って業務に取り組んでいくことが大事です。今回はそのためのお話が中心となっています。

経営環境の変化は数字との向き合い方にも影響が?

 この変化はAIの登場にも深く関連があります。AIが全部やってくれるので、細かいことを「覚える」こと自体は不必要になりましたし、価値が下がりました。簿記の作業のことなんか社長は分からなくてもいいんです。大事なことは「何をやっているのか?」という「行為の意味」を大きく掴むことです。

 細かな部分は部下やAIにまかせて、大きな問題や重要な問題を社長が担当する。その際、大きな問題が何なのかを発見して考えるための思考の処方箋をもっていることが社長の数字の見方です。

 経営の全体を俯瞰する、鳥瞰図的な見方を持っていることが大切です。世の中にはビジネス会計書がたくさん出版されていますが、細かい部分はもうAI時代にはもう社長には要りません。極端な話、細かい会計の本を読んでるヒマがあるなら、その時間を活かして社長はお客さんを捕まえて飲みに行って営業して来た方がいいと思いますよ。

「数字型社長」と「気合型社長」との違い

うまくいっている社長とそうでない社長の違いはありますか?

 社長の特性として数字に詳しい「数字型」と行動力に富む「気合型」がいます。最近の傾向としてはどちらかに偏り過ぎていると最近はうまくいかないケースが多いようです。

 うまく行っているのは「気合」と「数字」のハイブリッド型です。人と接する場面では人情味にあふれるエンターテイナーな面を持ちつつ、数字もキッチリ押さえている。2世経営者に多いイメージです。お父さんの方がどちらかというと偏りがちなタイプが多いので、それをみて反省しているのかもしれません。後継社長にこのハイブリッド型が増えてきているのは、非常に良い事だと思いますね。

会社が良くなる「数字の習慣」

本講話を聞いた後、何から始めたらよいでしょうか?

 今回の講話を聞いていただいたあとは、早速幹部会議で話してほしいですね。聞いた内容を元に、単純に「気合だ!」ではなく、気合をこのように具体的に数字で達成してみないかということを共有してほしい、ということです。

 幹部の方と数字でディスカッションしてほしい。数字と目標を一緒に提示して、それをどうやって達成するかをさらに練っていく。この時に、数字を細かく出す必要はありません。大局観を持ち、明るい将来のビジョンを共有しながらコミュニケーションを取っていくことが重要です。

数字が気になってイライラしてしまう社長へ

明るいビジョンは理想でも厳しい現実の数字がある場合どうしたらよいでしょうか?

 毎月の売上目標に対して、月末に向けてドンドン機嫌が悪くなっていく社長も、当たり前ですがやはりいらっしゃいます。かつては月次データが主でしたが、技術の進歩で週次、日次とペースが早まっていき、現在では分単位、秒単位で情報が更新されていく世界観になってきました。データばかりを気にしていると、達成状況次第では焦りを感じてしまうのは当然ですよね。

 実際に何故そうなっているのかを捉えて対処するための「現場レベルの目」と、それを考えている自分が本当に正しいのか、という客観的な「経営の目」の両方が社長には必要です。画面に表示された短期的な目標の達成状況に縛られることが必ずしも良いわけではありません。

何かコツはありますか?

 自らを客観的に見る以外に、時間軸を大きくしてみる方法があります。一度、百年~千年単位で自社の経営について考えてみてください。いま、自分がやっていることは誰が受け継いでくれているだろう。自社の仕事は、どんな未来の日本に貢献しているだろう。そう考えてみると、目先の数字にとらわれない発想や余裕が生まれてきます。

 中小企業の強みは、大企業に比べて不安定なことです。不安定さとは、不確実な未来をワクワクしながらつくっていける余白です。社長は夢を語り、数字の裏付けを持って元気な会社にしましょう。増収・増益・増「元気」。そのために必要なことは、講話の中でお伝えしました。頑張りましょう!

ビジネス見聞録WEB4月号 目次
p1 収録の現場から 〈妹尾輝男「実践エグゼクティブ・コーチング」音声講座〉 
p2 講師インタビュー【増収・増益・増“元気”!数字を社長の武器にする経営】田中靖浩
p3 今月のビジネスキーワード「人的資本経営」
p4 令和女子の消費とトレンド「ベストセラーが生まれる理由とは? ヒットの裏にある『人を動かす隠れたホンネ』」
p5 展示会の見せ方・次の見どころ

収録の現場から  妹尾輝男「実践エグゼクティブ・コーチング」音声講座前のページ

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