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第93話 右肩下がりの業界であっても!

北村森の「今月のヒット商品」

新年度の始まりです。今回はこのタイミングに相応しいような商品を取り上げてみましょう。手帳です。

手帳には1月始まりのものと4月始まりのものがありますね。新年に合わせて買うか、それとも新年度に合わせて購入するかで、選択はおのずと定まります。今回お伝えする手帳は、もちろん新年度からスタートできるタイプです。スケジュールを記すページが4月から始まって来年3月で締めくくりとなる構成です。


今回の商品、年度単位になっているのには理由があります。それは、小学校1年〜3年生をターゲットにした手帳であるためです。彼ら彼女らにすれば、入学したり進級したりするタイミングで手帳を新調するのが、すっきりするでしょうから。


でもちょっと待て、と感じる方は少なくないでしょう。どうして小学生向けの手帳なのか。デジタル全盛の時代であり、子どもたちだってスマートフォンやタブレットを当たり前に使うのに、と思われることと思います。


この手帳、2020年から毎年、その年度のバージョンが登場しています。一体どういう話なのか。

 

これが、その手帳の表紙です。手帳の名を「ぼうけんてちょう」といい、手帳の製造販売に70年以上携わってきた交通図書協会によるものです。値段は2480円。ちょっと高いのですが、それでも毎年、ユーザー(保護者と子ども)からの熱い反響が同社のもとに届くといいます。

 

真っ先に感じるのは、先ほどお伝えしたばかりですが、どうしていまの時代にわざわざ紙の手帳なのか、という点ですね。同社の社長はこう話してくれました。

 

「手帳の市場規模が年々縮んでいくなかで、自分たちが動いて、その文化を守ろうと考えた」

 

社長によると、紙の手帳の市場は年々5%程度の縮小となり続けているとのことです。手早くスケジュール管理したり、家族や仕事仲間でそれらを共有するには、当然ですがスマホなどで使えるデジタル系のツールがもはや必須ですからね。

 

それでも、社長は考えました。

 

「実は、紙の手帳を使っていない人こそが『まだ紙なの?』と話しているのではないかと仮説を立てた」

 

ああ、確かに、と私は感じました。私個人の話をしますと、デジタル系のスケジューラーと紙の手帳を併用しています。

 

紙の手帳には、スケジュール管理とはまた違った美点があります。それは何かというと、アイデアをメモしたり、仕事に役立つようなちょっとしたキーワードを記しておいたりするのに役立つからです。

 

同社の社長が考えたのも、まさにそこでした。子どものころから、紙の手帳を使ってもらい、その価値を実感する流れを創出しようと決断した。その価値とはつまり、「いまの自分をアウトプットする道具としての手帳」の意義であるわけです。

 

ちいさな子どもにそんな意義がわかる? いや大丈夫でしょう。この「ぼうけんてちょう」のページを実際にめくってみると、こういう話だな、と私たち大人を含めて理解できます。

 

「ぼうけんてちょう」では、カレンダー形式のスケジュール記入ページのずっと前、一冊の最初のほうに、こんなページがあります。「ねがいごと」「しょうらいのゆめ」「おきてからやること」。そして一冊の終わりのほうに配されているのは「冒険のきろく」。まさにアイデアスケッチに向けたページであり、また、子ども自身の行動なり考えなりを手軽にアウトプットできる構成となっています。

この「ぼうけんてちょう」、同社の社長によると、商品単体でみれば利益が十分に出る段階までは育っていないらしい。

 

それでも毎年発売しているのはなぜか。

 

「私たちはこの手帳を『子どもにも社会にも必要なもの』と、その価値を信じて製作しています」

 

どのような業界、どのような商品領域にも、時代の波や変化にさらされる局面がやってきます。それに対して1社で抗うことは難しいかもしれません。しかし、同社は「1社からでもできることはあるはず」と確信して、「ぼうけんてちょう」を販売し続けているという話です。

 

先ほどお話ししたように、購入したユーザーからの反響は極めて良好と聞きます。「ぼうけんてちょう」が今後さらに存在感を高めていき、紙の手帳市場に再び光が当たる一助となる可能性は十分にあると、私は考えます。

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