■MISSION BARNS
日本経営合理化協会のシリコンバレー視察で、動物の1細胞をバイオリアクターで培養、増殖して肉を作っている「MISSION BARNS」というベンチャー企業を訪問した。
2050年に世界の人口は97億人に達するとされ、肉の需要も今後急増すると考えられている。
それに対応するために、動物を飼うとなるとスペースも足りなくなるため、バイオで作り出したクリーンミート(人工培養肉)が必要になると考え、今年創業したという。
ここは数年前に世界初の人工肉バーガーを作っているが、他のクリーンミート企業との違いは、肉の美味しさに欠かせない脂肪分も作り出しているところだ。
我々は6週間かけて作った200ドル(2万円)のつくねを試食、正直なところ味に関しては美味しいともまずいとも言えないものだったが、こういう肉を研究室で作り出したことには驚いた。
動物から細胞を取り、それをプロテイン、ミネラルなどが入った液体の中で培養して増殖しており、現在はひき肉(ミンチ)しか作れないが、将来的(3年後を目安)には3Dミート(ステーキ)も作れるようになるとのことで、ひき肉に関しては来年末には市場に出す商品を作る予定だという。
今は製造コストが10万円/kgだが、4?5年先には400円/kgになるという見通しを持っており、バイオリアクター内では毎日2倍になってゆくので、通常10?14日でできる。
小さな製品をスケールアップしてゆく方法で拡大し、規制、許可を取って安全性に配慮してゆくというが、大量生産プロセスが成功すると話題になりそうだ。
以下に、他のクリーンミート・ベンチャー企業もあげておく。
■Beyond Meat
出資者にビル・ゲイツやビズ・ストーン(ツイッター共同創業者)がいるベンチャー企業で、ここは植物性タンパク質をベースに、動物性タンパク質と同じ繊維構造を再現しようと研究している。
本物の肉と区別できない製品をつくり出すという目的は、80パーセントが達成されているという。
■Impossible Foods
ハンバーガーを製造するカリフォルニアのスタートアップで、製品はアメリカの4つのレストランで提供されている。
ここは赤身肉に多く含まれている血液中の分子「ヘム」が肉の色、味、匂い、肉の焼ける音を決定づけているという発見から、植物の根にも発見されている植物性の「ヘム」をハンバーガーの調理に利用している。
■Memphis Meats
10年のうちに、動物を殺すことなく本物の肉を食べることを可能にするという目標を持つMemphis Meatsは、「MISSION BARNS」と同様に、バイオリアクターで2?3週間培養させたブタやウシの幹細胞からミートボールをつくりあげる研究を行っている。
■Mosa Meat
ここは動物の幹細胞から作られる培養肉の開発を行っており、2021年までに10ドル(1,100円)で人工肉バーガーを提供したいと考えている。
ここの工程は再生医療に使われている手法と同じで、動物から筋肉の組織を生検用プローブで取り出し、そこから得た細胞を幹細胞にするものだ。
■クリーンミート(人工培養肉)
これまでは「培養肉(cultured meat)」という言葉が使われていたこれらの人工肉は、最近「クリーンミート(clean meat )」と呼ばれるようになっている。
アメリカではクリーンミートが食肉処理された動物や鶏を監督する農務省(USDA)の管轄に入るか、米食品の80%を規制する食品医薬品局(FDA)の規制下に入るのかが決まっていないことが、今後の課題の一つだ。
クリーンミートが農務省の管轄下に入れば「肉製品」として販売され、規制を受ける可能性が高いが、食品医薬品局の管轄になるとまったく別のものとして分類される可能性があるためだ。
シリコンバレーでもバイオベンチャーへの注目が高まっているが、人工肉バーガーが店頭に並ぶ日も近いのかも知れない。
======== DATA =========
●MISSION BARNS
●Beyond Meat
●Impossible Foods
●Memphis Meats
●Mosa Meat