中国のAIスタートアップ企業「DeepSeek」が発表した大規模言語モデル「DeepSeek-R1」が、GPT-4やClaude 3など米AI先端企業のサービスに匹敵する性能を発揮したことで、1月27日のNY株式市場ではNVIDIA、Microsoft、Googleなどの株価が一時10~20%急落する事態を招いた。
これは「DeepSeek」が、米輸出規制により性能が一段劣るGPU(NVIDIA・H800シリーズなど)を活用しながら、560万ドル(8.6億円)という従来の10分の1以下のコストで開発されたとされるためで、高価な高性能GPUが必ずしも必要ではないという認識が広がったためだ。
NVIDIAの株価は一時17%下落し、時価総額が6,000億ドル(93兆円)減少、Amazon、Microsoft、Google、Metaなどの大手IT企業が計画していた巨額のAI投資の必要性に疑問が生じ「AI関連株」とされて上昇していた企業の株価が暴落してナスダックも3.1%下落した。
トランプ政権のアドバイザーでもあるマーク・アンドリーセン氏は、この状況を1957年のソ連による人工衛星スプートニク1号の打ち上げがアメリカに与えた衝撃になぞらえて「AIスプートニクショック」と語った。
株価は翌1月28日にNVIDIAが9%上昇するなど、短期的な過剰反応修正の動きも出てナスダックも上昇した。
■今後の課題と展望
「DeepSeek」にこの件をレポートしてもらったところ、DeepSeekの成功は一時的な優位性に過ぎず課題も多いと以下のようなことを言っている。
・持続可能性:低コスト戦略は初期段階では有効だが、更なる性能向上には、依然として高性能GPUが必要との指摘がある。
・倫理的な懸念:中国企業のAI開発において、データ収集の透明性や倫理基準が不透明である点への批判が根強い。
・国際協調の必要性:AI技術が安全保障に関わる中、米中対立の深化は世界的な規格分裂を招くリスクがある。
その上で、「DeepSeek」の躍進はAI開発における「効率化」と「ローカル最適化」の重要性を浮き彫りにした一方で、技術競争が国家間の対立を深化させる危険性も示唆している。
今後の鍵はコスト削減だけでなく、倫理的なガバナンスと国際協調を両立させるイノベーションにあり、AIの民主化が進む中で技術優位性を巡る戦いは、新たな段階を迎えようとしている、と結論づけている。
■新しい時代
1957年の「スプートニクショック」でアメリカは宇宙開発競争で遅れを取ったと危機感を持ち、1958年にNASAを設立し、科学教育の大改革を推進するなどを行い、宇宙開発競争を加速させた。
今回の「DeepSeekショック」でも、OpenAIがChatGPTの最新機能版である推論モデル「o3-min」を無料ユーザーも利用できるようにするなど、単なる一企業の技術的成功を超え、AI技術の民主化と米中技術戦争の新たなフェーズを開く分水嶺となる可能性がある。
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●DeepSeek
https://chat.deepseek.com/