2024年10月1日施行の景品表示法改正と管理上の措置
アパレル業を営む安斉社長は、新規事業について相談するため、賛多弁護士の事務所を訪問しました。安斉社長は、以前、賛多弁護士から景品表示法について助言を受けたことがあります(第31回)。今般、景品表示法が改正になるということを耳にしていたことから、新規事業の相談が終わったところで、当該改正に関して、特に自社で対応することはないか賛多弁護士に聞きました。
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安斉社長:先生、近々、法律名は忘れましたが、不当な広告や表示などを禁止する法律が改正されるそうですね。
賛多弁護士:以前、社長から御社の製品の広告について相談を受けたときに話に出た「不当景品類及び不当表示防止法」、略称で「景品表示法」のことでしょうか。
安斉社長:そうです。
賛多弁護士:確かに、2023年5月に改正がなされ、今年10月1日に施行されます。
安斉社長:改正の内容はどのようなものですか。
賛多弁護士: 主な改正点は、
①確約手続きの導入
②課徴金制度における返金措置の弾力化
③違反行為についての課徴金制度の見直し
④罰則規定の拡充
⑤適格消費者団体による開示要請規定の導入です(注1)。
本改正は、事業者等の自主的な取り組みを促進し、違反行為の抑止力を強化することにより、消費者の利益保護を進めることを目的としています。
安斉社長:確約手続きの導入というのと、適格消費者団体による開示要請規定の導入というのがよくわかりません。
賛多弁護士:消費者庁の調査の結果、景品表示法違反の行為が認められると、弁明の機会を与えたうえで違法行為の停止を命ずる措置命令を行い、また、違法行為の中でも一定の行為については弁明の機会を与えたうえで課徴金納付命令を行いますが、優良誤認表示等の疑いのある表示等をした事業者が是正措置計画を申請し、内閣総理大臣から認定を受けたときは、当該行為について措置命令及び課徴金納付命令の適用を受けないこととするというのが、確約手続きです。
また、適格消費者団体が、一定の場合に、事業者に対し、当該事業者による表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の開示を要請することができるとともに、事業者は当該要請に応ずる努力義務を負うことにしたのが、適格消費者団体による開示要請規定の導入です。
その他の改正についても、消費者庁のHPで、確認することができますよ。
安斉社長:それらの改正により、事業者にはどのような影響があるのでしょうか。
賛多弁護士:確約手続が導入されることは、事業者にとって、万一不当表示の疑いが判明した場合でも、その後適切に対応できれば、措置命令、課徴金納付命令がなされるリスクを回避できるというメリットがあると思います。
安斉社長:そうですね。
賛多弁護士:一方、課徴金制度の見直しや罰則規定の拡充、適格消費者団体による開示要請規定の導入により、景品表示法違反時の事業者のリスクは増すと考えられます。
安斉社長:なるほど。そうしますと、弊社としてはどのような対応をすればよいのでしょうか。
賛多弁護士:まず、確約手続きについては、違反の疑いのある場合の措置について理解をしておくこと、そして、そのような事態になったら適切な対応をするという体制を作ることが必要かと思います。
課徴金制度の見直し等の事業者のリスクになる改正については、景品表示法が、「商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止」して「一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護すること」を目的とする法律であることを踏まえて、この法律に違反しないよう、景品類の提供や表示の管理上の措置についての指針(注2)に記載されているような措置をとることが有益です。
安斉社長:指針を見たことがないのですが、どのような対策をとればよいのでしょうか。
賛多弁護士:指針には、①景品表示法の考え方の周知・啓発、②法令遵守の方針等の明確化、③表示等に関する情報の確認、④表示等に関する情報の共有、⑤表示等を管理するための担当者等を定めること、⑥表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採ること、⑦不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応が挙げられています。
それらの具体例については、指針の別紙に記載があります。
安斉社長:指針には目を通そうと思いますが、先生からお聞きしただけでもやることがたくさんありそうです。
賛多弁護士:事業者によって必要な措置は異なると思います。事業者は自社の規模や業態に応じて検討することになると思います。
安斉社長:わかりました。社員一同しっかり景品表示法の考えを理解したうえで、ルール作りとその適切な運用によって、景品表示法違反をしないよう対応していきたいと思います。
賛多弁護士:そうですね。消費者利益保護の視点は大切ですし、御社の利益にも関わることなので、しっかり検討、実施されるのがよいと思います。
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景品表示法では、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止して、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的として、不当表示の禁止や不当な景品類の制限・禁止について規定しています。
今回は本年(2024)10月1日に施行される景品表示法の改正について説明のうえ、景品表示法を順守するための管理上の措置について言及しました。管理上の措置については、各事業者において検討し、事前に措置を講じておくことが有益です。
執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 堀 招子
(注1)法案概要(消費者庁HP)
(注2)事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms216_220629_04.pdf