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人間学・古典

第1講 「言志四録その1」
聡明にして重厚 威厳にして謙沖  人の上たる者はかくの如くなるべし

先人の名句名言の教え 東洋思想に学ぶ経営学

みなさんこんにちは。杉山巌海です。

この度、 日本経営合理化協会さんからご縁を頂き、
「東洋思想に学ぶ社長と幹部の経営学」シリーズを連載することになりました。
学校経営の傍ら30余年にわたり、禅宗・儒教・道教などを研究し、
東洋思想からみた人間学や経営学に関する講演をしてきました。

講演を通して感じましたことは、人心の企業の経営倫理が荒廃しつつある現代こそ、
経営者にこのような思想が必要だと痛感しています。

社長のネット情報局でも、帝王学や経営・人材育成につながる東洋思想の名句・名言を毎月紹介します。


   聡明にして重厚 威厳にして謙沖 人の上たる者はかくの如くなるべし

【意味】
賢明で存在感があり、威厳と謙虚さが湧き出てくるような人物。
上に立つような者はこのようにありたい。

【解説】
唐の時代の名僧百丈懐海を旧知の旅僧司馬が訪ねました。
司馬は旅の途中に仏寺の建設に絶好の場所を見付けた事を話します。
すると百丈はそのに住職として出向きたいと申し出ますが、
司馬は百丈の風貌が貧相だから適任ではないと制し、自ら百丈の弟子達の試験をしました。

試験は咳払い一回と数歩の歩みだけです。
そして多くの弟子の中から一人の雲水を選びました。
当時、末席の雲水だったこの男こそ、後に中国禅の五大宗派のひとつ爲仰宗を興した爲山(771~853)でした。
司馬はたった一度の咳払いと数歩の歩みだけで肩書きやキャリアのない年若い爲山に、
百丈を超える可能性を見出しましたが、司馬の人物鑑定眼のすごさを思わせる逸話です。
 

一定の年齢になったら自分の顔に責任が生まれます。
三十歳までの顔は親譲りの「基礎顔相」といい、三十歳以降の顔を「修行顔相」といいます。
修行顔相は自分で造り出すものです。
リンカーンが「あの男の顔相が気に入らない」と言ったのは、
才知活発の有能人物でも日常の修行の要素が顔に現れていなかったからです。

「顔」、「後姿」、「オーラ」等表現は異なるが、みな同じものです。
自分で造り上げることはなかなか難しいものですが、そこそこの人物になれば他人を評価することは十二分可能です。
ですから、社長や幹部の皆さんは多くの社員や取引先より
絶えず厳しい人物評価に晒されている事を意識しなければなりません。
掲句の教えは、このような立場を自覚して人物器量の修行を怠らないということです。
 

ところで、よく「修行は蓄積するのか?」と聞かれますが、答は、「継続する限り蓄積する」でする。
中断すれば瓦解する。ですから生活に密着した日常の修行が重要なのです。
三十数年前に大森曹元老師の写真を初めて見ましたが、
剣道・禅道・書道で鍛えられた素晴らしい顔相でありました。

 

杉山巌海

 

【言志四録】

言志四録は、幕末の大儒者佐藤一斎先生(1772~1859)が生涯をかけて書き上げた修養処世の大作です。言志録(246条:42歳から11年間)、言志後録(255条:57歳から10年間)、言志晩録(292条:67歳から12年間)、言志てつ録(340条:80歳から2年間)の全4巻1133条の総称で、『人生如何に生きるか』の視点から生き方の原理原則を格調高く説いた内容になってい ます。

当時数多くあったこの手の書物の中で、言志四録が後世に残った理由は、内容もさることながら明治の変革期に活躍した維新の志士たちに大きな影響を与えたからだといわれています。海舟・竜馬・鉄舟、特に南洲に至っては、「手抄南洲言志四録101 条」を作成するほどの惚れ込みようでした。

我々の民族の祖先にこれだけの名著を書き残した人物がいたことを誇りに思うとともに、この 語録の教えの恩恵に浴することの幸せを心より感謝して学ばなければならないと考えます。

 

 

第2講 「言志四録その2」年間の人事万端 算え来たれば十中の七は無用なり次のページ

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