- ホーム
- 社長のメシの種 4.0
- 第73回 デジタル初版本
twitterのジャック・ドーシーCEOが、2006年の「just setting up my twttr(私のTwitterを設定したところ)」という初tweetを競売に出品、3月22日に291万5,835ドル(3億1,500万円)で落札され話題となった。
これはNFT(Non-Fungible Token、代替不可能なトークン)というブロックチェーン(分散型台帳)上に存在するデジタル資産として販売したものだ。
ブロックチェーンは公共性のある台帳なので、誰でもその資産の真正性や所有権を証明することができるため、固有のデジタル署名を持つデジタルの作品、商品、tweetなどの所有権を確定、保護できる。
最近では2月にBeeple(ビープル)というアーティストのデジタルアート作品が競売大手のクリスティーズで660万ドル(7億2,000万円)で売れたり、テスラのイーロン・マスクCEOがデジタル動画を競売に出品し1億円以上の値がつくなど、デジタルアート分野でも注目されている。
イーロン・マスク氏はその後、「実際に、これを販売するのは全く正しいと思わない。パスする」と NFT販売をやめたが、誰でも見られるtwitterの書き込みや、コピーが簡単にできるweb上のアート作品、動画、写真、音楽などが高値で売買される状況は「コロナバブル」の現れでもあり、不動産バブル期の1987年に、日本の会社がゴッホのひまわりを当時一枚の絵の取引としては最高額だった53億円で落札したことを思い出させる。
しかし、大量に印刷されて読まれた夏目漱石の小説の初版本に価値があるように、記念すべきtwitterの最初の投稿や記憶に残るスポーツの名場面などにも価値はあると思われ、NFTによるデジタルデータの所有権は「デジタル初版本」として画期的なことだと考えている。
■スポーツの名場面
米プロバスケットボール協会(NBA)が立ち上げた「トップショット」では、ゲームのハイライト映像を収集可能なNFTにしてファンが購入できる仕組みを作っている。
映像自体はYouTubeや「トップショット」のサイトで無料で見られるが、固有のデジタル署名を備えたNFTは「唯一無二」の存在なので、買った人は所有者としてのステータスを持つことができる。
今後は日本でもこのようなサービスは増えると考えられ、プロ野球だと長嶋茂雄の天覧試合ホームランや王貞治の756号ホームラン(世界記録達成)、サッカーだとドーハの悲劇やジョホールバルの歓喜、バレーボールの東洋の魔女やミュンヘンオリンピック金メダルなどの所有権を購入したい人は多いのではないかと思われる。
■NFTマーケットプレイス
NFTを売買するマーケットプレイスはアメリカを中心に増えており、それぞれで手数料などは異なっているが、冒頭のジャック・ドーシーCEOのtwitterの競売を行った「Valuables」の場合は、手数料が落札額の5%、再販の場合は販売額の87.5%が販売者、10%がツイートの製作者(オリジナルの製作者)、マーケットプレイス手数料が2.5%となっており、印税のようにオリジナルの製作者には転売されるごとに収入が入ってくる仕組みのため、音楽や映像のビジネスも変わってくる可能性もある。
また、NFTの存在が広まるとブロックチェーンの認知度が広がってゆくとも考えられ、仮想通貨や所有権のみならず、物流、企業間取引、流通、健康管理など幅広く利用されるきっかけになるのではないかと思っている。
======== DATA =========
●ジャック・ドーシーtwitter:「just setting up my twttr」
●Valuables
●Beeple(ビープル)のデジタルアート作品をクリスティーズで競売
●NBAトップショット