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第5話【最終回】日本的マネジメントのよさを見失ってしまった日本企業

行動科学マネジメント

1970 年代、日本企業がアメリカ経済を席巻した。自動車、鉄鋼、機械などの産業分野でアメリカ企業は急速にシェアを奪われ、メーカーは次々と倒産した。アメリカ 企業の経営者や経営学者たちは日本企業を徹底的に研究し、大躍進の秘密がチ一ムワークにあることを突き止めた。そして、彼らは競って日本型マネジメントを 取り入れたのである。

 それまでのアメリカ企業では、軍隊型マネジメントが主流だった。「Do it!(やれ)」と命令し、威圧することによって部下を統率する。部下の主張には耳を貸さない。貸す必要もないと考えられていた。日本型マネジメントはこ れと180度異なる。まず、チームワークの基盤に強固な人間関係が存在する。日本人は上司に尽くし、部下をかわいがり、同僚との軋轢を避け、会社への帰属 意識がきわめて強い。マネジメントもこの人間関係の上に成り立っていた。

 行動科学マネジメントは、こうした日本研究を踏まえて作り出された。アメリカ人は日本型マネジメントのいいところを見習いながら、関係性を重 視したマネジメントメソッドを研究した。リレーションシップを取り入れることで、職場に人間関係を築くよう努めたのである。さらに、科学的な知見に基づい た手法を関発し、それによって上司は部下と対話することをシステムとして実現した。

 約10年を費やして、アメリカ企業の多くは変わった。部下は上司に親しみを抱き、同僚は互いを認めあい、協力しあう。チームワークを作り上げ たことで、誰もが進んで働く環境が整った。

 それから数十年。日本企業はバブル崩壊によって自信を失い、グローバルスタンダードといった風潮に流され、結果だけに焦点を当てた成果主義を こぞって取り入れた。何のことはない、それはかつてのアメリカ企業が実践して苦い経験を踏んだマネジメントであった。アメリカのコンサルタントは、この逆 転現象を「なぜ日本人はいいものを捨てたのだ?」と、皮肉なものとして受け止めている。

 日本が、結果だけに焦点を当てた成果主義に走ったことで、何が起こったか。

 「自分さえよければいい」という風潮が蔓延し、職場はギスギスした雰囲気に支配されている。上位20%の社員にとってはいいが、残りの80% の社員は成果を生み出せず、離職率のアップという弊害も生まれた。

 われわれは日本型マネジメントのよい部分を見直す必要がある。人材マネジメントはアメリカ型に偏ってもよくないし、日本型に偏ってもよくな い。両者の長所を組み合わせたのが行動科学マネジメントといえるだろう。

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