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第76回 十勝岳温泉(北海道) 道内最高所に湧く絶景の露天風呂

高橋一喜の『これぞ!"本物の温泉"』

■標高1280m、山の一軒宿

 温泉旅行に出かける日は、天候に恵まれることが多い。夕日が沈む風景が自慢の露天風呂で、直前までかかっていた雲が突然晴れたこともあるし、山の温泉宿で満天の星に感動したことも数多い。そんな晴れ男を自任する私が、まだ拝めていない絶景が北海道にある。


 ラベンダー畑などの美しい風景が広がる富良野から、十勝岳を目指し、ぐんぐんと山道を車で駆けあがる。この日は朝からくもり空。しかも濃い霧がかかっていて、運転が困難なほどに視界がきかない。「今回も、あの絶景は見られないかも」「いや、意外と到着するころには晴れているかも」という思いが交錯する。


 道中、ゆっくりと車を走らせていると、車道脇にキタキツネの親子がひょっこりと顔をあらわした。ざわつく心を北海道の大自然が静めてくれる。


 だんだんときつくなる山道を登りきると、広々とした駐車場に到着した。十勝岳登山の入り口である。その傍らに十勝岳温泉「湯元 凌雲閣」は建っている。断崖にへばりつくように建つ宿は、山小屋のイメージとはほど遠い立派な建物である。


 十勝岳の中腹に湧く十勝岳温泉は、標高1280メートル。北海道で最高所の温泉地である。露天風呂から望む山々の景色は、絶景といわれる。実は、前年にもこの地を訪ねているのだが、そのときは深い霧で、露天風呂からはほぼ何も見えなかった。「今回こそは」と意気込んでいたのだが、温泉宿の半分を覆い隠すほどの濃い霧を目の当たりにしたとき、その期待はあえなくしぼんでしまった。

 

■大きな岩から湧き出す源泉

 男女別に内湯と露天風呂がひとつずつある。男湯の浴室に足を踏み入れると、まず湯船のつくりに圧倒された。なんと、大きな岩が湯船に突き出している。突き出ているというより、大きな岩を動かせなかったので、内壁に岩をそのまま取り込んだと言うほうが正しいかもしれない。


 温泉は、加水も加温もなしの100%源泉かけ流し。巨岩の間から湧き出す湯は、一見、青緑色かと思いきや、湯船の底をかきまぜると、沈殿していた成分が攪拌され、たちまち赤さび色(赤茶色)に湯が染まっていく。


 酸性の泉質で、口にふくむと、レモンのような酸味に襲われる。予想以上のすっぱさに、思わず吐き出してしまった。金属が錆びたような匂いといい、肌がひりひりするような感覚といい、個性的な湯である。


 湯船に張り出した巨岩を見上げながら浸かっていると、人間は自然の恵みをいただいているのだ、という謙虚な気持ちになる。

 

■大自然からの小さなプレゼント

 体が温まってから露天風呂へ出た。湯船からは上ホロカメットクや富良野岳など十勝岳連峰の山々が180度のパノラマで望める……はずである。しかし、いちばん手前にある山肌がわずかに見える程度の視界しかない。もし晴れわたっていれば、ここから開放感のある絶景が望めたかと思うと悔しい。


 こんなときは温泉に専念するしかない。露天風呂は上下2段に分かれており、内湯と同じ赤さび色の湯が満たされている。2つの湯船を行き来していると、一瞬、霧が風に流され、猛々しい山々の一部が顔をのぞかせた。

 大自然から小さなプレゼントをいただいた気分で、うれしくなった。が、数分後にはすぐに深い霧に覆われてしまった。「ツイてないなあ」とぼやくと、隣で浸かっていた50代くらいの男性が、「しかたないさ」と慰めてくれた。男性は北海道をバイクで旅をしている途中で、これまで日本一周の旅を3回もしたのだという。旅の大先輩である。


 先輩は続けて、こんな言葉をかけてくれた。「旅は宿題を残すほうがいい。また来たいと思うから」。なるほど、深い言葉だ。同宿は冬季も休まずに通年営業しているので、次回は雪の季節に訪ねてみようか。また宿題ができたことに幸せを感じつつ、十勝岳温泉をあとにした。

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