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健康

第17回 「距離感」

社長の「氣」

 自分の身を守るために必要な距離があります。これを武道では「間合い」と言います。どれだけ武道の達人であっても、間合いの内側からいきなり攻撃されると、「確実に身を守る」ことは出来ません。
 この間合いは「何メートル」「何センチ」と測るものではありません。相手との関わり、周囲との関わりによって決まるものであり、感覚で会得します。
 そうはいっても基準となる物差しがなければ分かりませんので、心身統一合氣道では、下記の3つの条件を満たす最低限の距離を「間合い」としています。
  これはあくまでも基本であり、実際には、武道であれば「身長差」や「武器の有無」、日常生活であれば「文化や習慣」によって間合いは変化します。
 二人が向かい合っているのを前提とします。
 
 ● 一歩踏み出さなければ相手に届かない距離
 ● 相手の顔を見ているとき、相手の全身が視界に入る距離
 ●お互いが心を静めていられる距離
 
 一歩踏み出さないとは、その場で手や足を伸ばしても(突いたり蹴ったりしても)相手に届かないということです。
 一歩踏み出すのであれば、相手も一歩下がることが出来ます。一歩踏み出さずに相手に届く状態では、相手は「確実に身を守る」は出来ません。相手の全身が視界に入っていると、相手の動きを良く感じ取れます。距離が近すぎると相手の足下が視界から外れます。すると感じ取れなくなります。
 距離が近すぎると、お互いに心が静まりません。特に見知らぬ相手であれば、本能的に危険を感じ取っています。最低限の距離があれば心は静まります。実際に二人で実験してみると「間合い」が分かります。さらに、間合いの内側、間合いの外側という感覚も生まれてきます。これを距離感と言います。
 例えば、握手をするときの距離は間合いの外側でしょうか。内側でしょうか。
 そうです。間合いの内側ですね。したがって、見知らぬ相手にいきなり握手を求める行為は「無断で相手の間合いを破る」ことで、礼を失した行為です。相手は驚きとまどうか、不快に感じることでしょう。
 見知らぬ相手の場合は、まず間合いの外側で了解を取り、それから間合いの内側に入って握手するとスムーズです。その了解とは、自己紹介であったり、ニッコリすることであったり様々です。
 さらに、ハグ(抱き合う)の習慣がある国もあります。ハグは握手よりも更に近い距離ですから、了解なくハグをして良いはずがありません。
 別の角度から見れば、握手とは「相手を自分の間合いの内側に入れる」行為です。「あなたは私の間合いに入って良い人ですよ」という信頼を表す行為なのです。ハグに至っては一層の信頼を表しているのでしょう。
 昨今、距離感が分からない人が増えています。一つの原因は、現代の環境では、人と接する機会が少なく成長することにあります。信頼関係が十分に出来ていないのに近づき過ぎてしまったり、近づいてはいけないときに近づいたり、あるいは近づくべきときに近づけなかったりします。
 特に、人に接する業種において距離感が分からないと様々な問題が生じます。
 距離感が分からない人に尋ねてみると「どうしたら良いか分からない」と答える人が大多数です。それもそのはず、距離は自分だけで決まるのではなく、相手や周囲との関わりによって決まるわけですから、「自分はどのくらいの距離を取ったら良いのだろうか」と自分中心で考えてしまうと分からなくなります。
 武道において間合いの稽古をするように、相手との関わりによって距離が決まることを理解すると、必要なときに必要な距離を取れるようになります。年間で数多くの企業研修に講師を派遣していますが、最近では、この距離感を学ばせたいという要望が多くなって参りました。どの企業も共通して抱えている問題であることが分かります。
 距離感を磨くことは、人との関わり方で特に重要なのです。
 
距離感を指導する筆者(今月行われた海外支部合宿にて)
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