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第28回「経営者・リーダーを育てる」

社長の「氣」

 大きな会社や組織では、経営者・リーダーを外部から招聘することがありますが、多くの会社や組織では、生え抜きの人材が経営者・リーダーを務めます。
 経営者・リーダーは高度に専門化された役割です。それにも関わらず、多くの会社や組織においては、経営者・リーダーとしての基礎を学ぶことなくその役割に就きます。これは自動車免許を持たずに公道で車を走らせるのと同じく大変危険なことであり、継続・発展を前提とした会社や組織における最大のリスクです。
 私自身は良き師に恵まれ、10年以上に渡って経営の基礎を学ぶことが出来ました。それに基づき、現在も日々、実践・検証を繰り返しながら組織運営をしています。世界24カ国に広がる組織ですので、組織の隅々まで行き届いているなどとは到底言えず、経営者・リーダーとしては私自身も途上の身にあります。
 私が長を務める組織は公益法人であり、営利を目的とした会社法人とは性質が異なります。組織の構成員である指導者は雇用関係にあるわけではありませんので、業務命令が通用しません。その繋がりは、形のある給与・報酬によるものではなく、形のない社会的使命ややり甲斐によるものです。その繋がりよって組織がまとまっています。
 そんな非営利組織においては、「氣を通す」と「氣が通う」が特に重要です。
 「氣を通す」とは、経営者・リーダーが「社会で果たすべき役割は何か」「どのような姿勢で取り組むか」「どのような将来像を目指すか」を明確にすることを指します。これにより、経営者・リーダー自身は勿論のこと、組織として共に歩む人々が過去・現在・未来に氣が通り、心を自在に使えるようになります。
 「氣が通う」とは、同じ目標に向かって共に歩む人々の心が一つになることを指します。どれだけ優秀な人材が揃っていても、氣が通わなければ機能しません。氣が通うとは「仲良しになる」ことではありません。多くの人間が集まるところ、必ず得手・不得手や好き・嫌いは生じるものです。同じ方向に心が向いているかどうかです。
 これらが重要なのは、何も非営利組織に限ったことではありません。
 近年では「働く目的」や「働き方」が多様化しており、高い給与・報酬を提示するだけでは望む人材が得られなくなっています。会社においても、社会的使命ややり甲斐を求めて働く人が多くなって来ました。
 そもそも、高額な給与・報酬だけを目的に働く人は、より良い条件を提示されたら、すぐに別の会社に移籍してしまいます。中・長期に渡って会社を支える人を育てるには、「氣を通す」と「氣が通う」を徹底することです。
 これまでコラムでお伝えして来たことに基づいて、ご自分の会社・組織を実際にチェックしてみましょう。
 
 ≪氣を通す≫
 ● 経営者・リーダーが「社会で果たすべき役割は何か」
  「どのような姿勢で取り組むか」「どのような将来像を目指すか」を明確にしていますか。
 ● 経営者・リーダーは、それを共に歩む人々に常に(正しく)共有していますか。
 ● 会社・組織内でそれぞれの人が自分の果たすべき役割を理解していますか。
 
 ≪氣が通う≫
 ● 会社・組織内で心身一如のコミュニケーションを交わしていますか。
 ● 同じ目標を共有し、部分最適ではなく全体最適で動いていますか。
 ● 会社・組織の現場はプラスの氣を発していますか。
 
 テレビ番組で「この食べ物が体に良い」と放送されると、翌日にはスーパーマーケットから売り切れます。私たちは「何かが良い」という情報を得るとすぐに飛びつく傾向がありますが、何か一つによって総てが良くなる「万能薬」など存在しません。経営・運営も同じです。何か一つをやれば万事が上手く行くことなどあり得ません。経営者・リーダーが学ぶべきこと、実践すべきことは多岐に渡ります。
 その中でも、特に重要な学びの一つが「氣を通す」と「氣が通う」です。経営者・リーダーが会社や組織を導いていくための必要条件です。中には天性で備わっている人もいますが、多くの場合は訓練によって身につけます。経営者・リーダーになってから突然備わるものではなく、時間をかけて習得していくものです。
 専門分野に優れている・業績を上げている・トップの補佐をしているというだけでは得られません。習得には実践の場と、実践によって得られる経験が不可欠なのです。
 
 

 

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