ここ数年の大幅な賃上げや初任給の上昇が示すように、企業の総額人件費は年々膨らむ傾向にあります。こうした外部環境の変化にその場しのぎの対応をしていると、制度の整合性が揺らぎやすくなり、将来的な運用にも支障が出かねません。「何とか今年を乗り切れれば・・・」という経営者の想いも分からないわけではないのですが、目先の判断を積み重ねるほど、後戻りが難しくなる場面が増えていくでしょう。
だからこそ、今あらためて「合理的な賃金制度」を整える意義が大きくなっています。経験や勘に依存した給与決定では、環境変化のスピードに追いつけません。誰が見ても筋道が通り、説明可能な仕組みを持つことが、企業の持続性を支える基盤となります。しばしば「自社の特異性に合わせた複雑な制度が必要だ」と考える社長に出会いますが、制度は複雑であるほど優れているわけではありません。むしろ、次の7つの目的を満たす体系であれば、企業規模や業種を問わず、十分に合理性を備えた制度として機能します。
【合理的な賃金制度が満たすべき7つの目的】
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- 主観的な賃金決定を改め、客観的な決定方式をとること。
- 賃金体系を理論的に整理し、簡潔でわかりやすいものにすること。
- 従業員や組合に対して説明しやすく、理解・納得を得やすいこと。
- 運用の結果として不平不満が解消され、高い労働意欲の結集に役立つこと。
- 長期安定的に運営でき、矛盾や無理が生じないこと。
- 昇給・賞与・昇格昇進・ベースアップなどが制度と連動し、容易に実施できること。
- 新体系へ切り替えやすく、移行に伴う人件費増加(移行原資)が最小限で済むこと。
これらの目的を満たす制度は、単なる給与決定の仕組みではありません。企業が将来にわたり人件費を安定的に管理し、外部環境の変化に振り回されないための“経営インフラ”といえる存在です。客観的な基準が整えば、賃上げや初任給の引き上げといった外部要因が生じても、制度に沿って一貫した判断が可能になります。説明可能性が高まることで従業員の納得感も向上し、不信感や不公平感による離職リスクも抑えられるのです。
さらに、制度が簡潔であれば、昇給や昇格の運用もスムーズに進み、管理コストの削減にもつながります。複雑な制度は一見すると“自社らしさ”を反映しているように見えますが、運用が属人的になりやすく、長期的には制度疲労を招きやすいものです。対して、7つの目的を軸に据えた体系は、環境変化に対しても柔軟に調整でき、持続的な運用が可能になります。
環境変化が激しい今こそ、賃金制度の合理性が企業の競争力を左右します。複雑さではなく、原理原則に基づいた“筋の通った制度”こそが、これからの人件費マネジメントの土台となるはずです。
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