こんにちは、1位づくり戦略コンサルタント佐藤元相です。
私はこれまで、多くの中小企業の経営者と向き合ってきました。
その中で、近年とくに相談が増えているテーマがあります。
それが「採用」です。
「募集しても人が来ない」
「若い人が地域に残らない」
「せっかく採用しても定着しない」
これは、とくに地方の中小企業にとって、非常に深刻な問題になっています。
しかし今回、長崎県・対馬で出会った取り組みの中に、私はこれからの地方企業に必要な“採用の本質”を感じました。
国境の島・対馬で始まった挑戦
長崎県・対馬。
人口約2万7000人。
韓国まで約50kmという、日本の国境に位置する島です。

この島で、病院、学校、空港、介護施設、ショッピングセンターなど、地域インフラを支えている会社があります。
それが、対馬ビルサービス です。
私は数年前から、この会社の取り組みに関わらせていただき、採用戦略やイベント企画、対話の場づくりなどを一緒に取り組んできまいた。
そこで感じたのは、
「対馬をもっと元気にしたい」
その願いを持ち、地域活動を続けている会社なのです。
「対馬には何もない」
地方では時々、こんな言葉を耳にします。
「うちの地域には何もない」
「若い人は出ていくしかない」
対馬でも、そうした空気があったそうです。
大人たちが「対馬には何もない」と言う。
すると子どもたちも、「この島には未来がない」と思ってしまう。
しかし、対馬ビルサービスの日高社長は、「仕事がなかったら、つくればいい」、「何もなかったら、つくればいい」、といつも語っています。
私は、この言葉に地域創生の本質を感じています。
地方には仕事がないのではありません。
「地域の可能性を語る大人」が減っているのです。
漂着ゴミから始まった地域活動
対馬には、大量の漂着ゴミが流れ着きます。
海岸には、海外から流れ着いたペットボトルや発泡スチロールが広がっている場所もあります。
私は10年ほど前、その現実を目の当たりにしました。
そして、対馬ビルサービスの日高社長とともに始めたのが、「環境スタディー」と呼ばれる海岸清掃活動です。
最初は、スタッフや家族、私たちを含め20名ほどからのスタートでした。
しかし今では、小学生から高校生、その親御さん、社員、さらに島外からの企業経営者まで参加する活動へと広がっています。
この活動は、対馬の環境保全活動に長年取り組まれている CAPPA(一般社団法人CAPPA) の代表・上野さんの協力のもと続けられています。
海岸清掃は、単なるゴミ拾いではありません。
「自分たちの地域を、自分たちで考える」
そんな場になっているのです。
そして清掃活動の後に行われるのが、「青空教室」です。
青空教室は「対話の場」
青空教室は、2025年で4年目を迎えました。
印象的だったのは、第3回の「未来をつくる」というテーマです。
フォークダンスのように向き合いながら、一人ずつ対話するワークを実施しました。
自分の名前の由来。
漂着ゴミをどう減らすか。
そうしたテーマを対話形式で語り合いました。
そこでは、
「互いの意見を否定しない」
「耳を澄ませて笑顔で聞く」
といった対話のルールが大切にされていました。
相手を否定せず、まず受け止める。
そんな心理的安全性のある空間の中で、大人も子どもも安心して言葉を交わしていったのです。

その中で、小学生の女の子が、
「対馬のみらいのために残したいものは?」
という問いに、
「優しい心です」と答えてくれました。

私は、この言葉に胸を打たれました。
知識を教える場ではなく、人の心を育てる場。
それが青空教室なのだと感じました。
第4回のテーマは「桃太郎」。
犬。
サル。
キジ。
みんな違う。
性格も得意なことも違う。
しかし、違うからこそ力を合わせることができる。
「違いがあるって素晴らしい」
を、大人も子どもも一緒に考え、発表しました。
私は、
“違う人がいるからこそ、地域も組織も豊かになる”
そんなことを、この青空教室から学ばせてもらっている気がしています。
結果的に「採用前接点」になっていた
ここからが非常に興味深いところです。
この活動は、最初から採用目的で始まったわけではありません。
地域を元気にしたい。
子どもたちに希望を持ってほしい。
その願いで続けてきた活動でした。
しかし活動を続ける中で、高校生たちが、
「また来たい」
と言うようになった。
福岡へ進学した学生が、予定を合わせて戻ってくることもある。
そして自然と、
「ここで働きたい」
という若者たちも現れるようになったのです。
私はここに、これからの地方企業の採用の本質があると感じています。
「採用前接点」が定着率を変える
この取り組みの素晴らしいところは、入社前から、お互いを知ることができる点にあります。
会社は、その人の考え方や雰囲気を知ることができる。
求職者は、会社の空気を知ることができる。
だから、入社後のミスマッチが減ります。
「思っていた会社と違った」
「聞いていた仕事内容と違った」
「人間関係が不安だった」
こうしたズレが減れば、当然、定着率も高まります。
採用は、入社して終わりではありません。
長く働き、育ち、会社の未来を支える人になってもらうこと。
そこまで考える必要があるのです。
地域活動は「社員育成」にもなる
さらに興味深いのは、この活動が社員育成にもつながっていることです。
社員が地域の人に仕事を語る。
子どもたちに会社の役割を伝える。
すると社員自身が、「自分たちの仕事は地域を支えている」と実感するようになります。
これは非常に大きい。
人は、「必要とされている」と感じたとき、自尊心が高まります。
「この会社は地域に必要とされている」
「自分も未来をつくる一員なんだ」
そう感じることで、仕事への誇りも育っていくのです。
地方企業にもできる「採用前接点」
これは、決して対馬だけの特別な話ではありません。
私はむしろ、
「これからの地方企業全体に必要な採用の考え方」
だと感じています。
たとえば、
- 地域清掃
- 職場見学
- 親子参加イベント
- 学生向け仕事体験
- 社員との座談会
- 社長の想い動画
- 先輩社員の一日密着
- 地元向け勉強会
- 地域のお祭りへの参加
- 子ども向けワークショップ
こうした活動を通じて、
「どんな会社なのか」
「どんな人が働いているのか」
「何を大切にしているのか」
を、地域へ伝えていくのです。
大きな予算はいりません。
大切なのは、「地域との関係を継続すること」です。
一度で成果を求めるのではなく、
少しずつ会社の存在を地域の中に残していく。
すると、
「この会社、知っている」
「なんだか安心できる」
「ここで働くイメージができる」
という空気が、少しずつ生まれていきます。
大手と同じ採用ではなく、自社らしい採用へ
中小企業の採用は、お金の勝負ではありません。
人柄。
地域性。
距離の近さ。
安心感。
仕事の意味。
地域とのつながり。
これらが、大きな価値になっていきます。
だからこそ、大手と同じ土俵で戦うのではなく、
地域に絞り、人に近づき、自社らしさを伝える。
これはまさに、ランチェスター戦略の考え方そのものです。
国境の島・対馬で始まっているこの取り組みは、
これからの地方企業の未来に、大きなヒントを与えてくれているように感じます。
2025年 青空教室・社長メッセージ動画
https://youtu.be/tFn4b3Kd8PU?si=FEMiB3AY_n6WZyF1






















