鶴亀社長は、島根県隠岐の島町で、従業員約150人を雇用し、文化財・寺社の修繕等を営む「㈱おきの匠」を経営しています。
最近、鶴亀社長は、同社の従業員から、女性活躍推進法の改正により、当社でも同法に基づく情報公開の内容を拡大するなどの対応が必要ではないかという話を聞かされました。
この話を聞いて、根っからのフェミニストを自認する鶴亀社長(男性)は、早速、改正法の内容に沿った対応をしなければならないと考え、隠岐の島出身の同級生で、韓流アイドルの推し活仲間でもある賛多弁護士の法律事務所に飛び込みました。
鶴亀社長:(息を弾ませながら)賛多君(同級生なので、鶴亀社長は、賛多弁護士のことを「賛多君」と呼んでいる。)、女性活躍推進法が改正されて、うちの会社でもその対応をしなければならないという話を聞いたんだけど、どういうことだい。
賛多弁護士:鶴亀君、まあ落ち着きなよ。君は子供のころから、真面目だけど小心者だね。まあ、そこが君のいいところだけどね。それでは、まず、女性活躍推進法がどんな法律か説明するね。
女性活躍推進法は、正式名称は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」といい、2016年(平成28年)4月から施行されている法律で、当初は10年の時限立法(注:一定の有効期間が付された法律)だったけど、2025年(令和7年)6月の改正により、さらに10年間期間が延長されたんだ(注:2036年(令和18年)3月31日まで)。
女性活躍推進法は、働く意思あるいは働こうとする意思をもつ女性労働者が、その個性と能力を十分に発揮して職業生活において活躍することを目指して制定された法律で、企業に対して、女性の活躍に関する情報公開などを義務付けることなどを定めているんだ。
鶴亀社長:なるほど、当社でも、総務部が、女性活躍推進法に応じた取組みをしていたと思うけど、僕はどのような法律なのかよく知らなかったんだ。
賛多弁護士:それでは、まず、企業が女性活躍推進法により義務付けられる取組みについて説明するね。従業員数が101人以上の企業は、
- 自社の女性の活躍に関する状況把握、課題分析、
- 所定の項目について数値目標を定めた一般事業主行動計画の策定、社内周知、公表、
- 行動計画を策定した旨の都道府県労働局への届出、
- 所定の事項についての情報公開
が義務付けられているんだ
(注:従業員100人以下の企業は、①~④の努力義務を負う。)。
ちなみに、②、④については、従業員数が301人以上か、101人以上300人以下かによって、その内容が異なっているんだ。①については、「基礎項目」(ア採用した労働者に占める女性労働者の割合、イ男女の平均継続勤務年数の差異、ウ労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間(健康管理時間)の状況、エ管理職に占める女性労働者の割合、オ男女間賃金差異)の状況把握、課題分析が必須なんだ。また、③の行動計画には、ア計画期間、イ数値目標、ウ取組内容、エ取組の実施時期を盛り込むことが必要とされているよ。
鶴亀社長:なんだか複雑で難しそうだね。とても理解できそうもないよ。
賛多弁護士:確かに、企業がこれらの取組みを行うのは大変だけど、厚生労働省のWEBサイト「女性活躍推進法特集ページ」に、その内容、手順、書式等が詳細に記載されているから大丈夫だよ。
次に、④の情報公開について、改正法が及ぼす影響について説明するね。
これまで、従業員数101人以上300人以下の企業には、所定の1項目以上の情報公開が義務付けられていたんだけど、令和8年4月1日から施行される女性活躍推進法の改正により、これまで従業員数301人以上の企業に公表が義務付けられていた男女間賃金差異について、101人以上の企業に公表義務が拡大されるとともに、新たに女性管理職比率についても101人以上の企業に公表が義務付けられることになり、その結果、3項目以上の情報公開が義務付けられることになったんだ。
ちなみに、男女間賃金差異は、男性労働者の平均賃金に対する女性労働者の平均賃金を割合(パーセント)で示すもので、「全労働者」、「正規雇用労働者」、「非正規雇用労働者」の区分で公表する必要があるよ。
鶴亀社長:一つ質問があるんだけど、「女性管理職比率」の「管理職」って具体的には何が該当するのかい。
賛多弁護士:概要を述べると、管理職とは、「課長級」と「課長級より上位の役職(役員を除く)」の合計だよ。より詳しい説明は、厚生労働省のWEBサイトに記載されているよ。
鶴亀社長:④の情報公開は、具体的には、どのような方法で行ったらいいのだろうか。
賛多弁護士:一般の求職者等から見て、情報がどこに掲載されているかが分かるように、厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」での公表が最も適切であるとされているよ。女性活躍推進法の定める義務に対応することは、企業にとっては大変だと思うけど、情報公開などを通じて、女性が活躍しやすい企業であることをアピールすることは、優秀な人材の確保や競争力の強化につながることが期待できるから、前向きに取り組んでいくべきだと思うよ。
鶴亀社長:賛多君、分かりやすく説明してくれてありがとう。僕も、厚生労働省のWEBサイトを確認して、今度は、総務部の担当者も連れて、また相談に来させてもらうよ。
* * *
賛多弁護士が話していた女性活躍推進法の改正による情報公開義務の拡大の内容の詳細は、以下のとおりです(厚生労働省WEBサイト)。
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企業等規模 |
改正前 |
改正後 |
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301人以上 |
男女間賃金差異に加えて、2項目以上を公表 |
男女間賃金差異及び女性管理職比率に加えて、2項目以上を公表 |
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101人~ |
1項目以上を公表 |
男女間賃金差異及び女性管理職比率に加えて、1項目以上を公表 |
- 301人以上の企業に公表が義務付けられる「2項目以上」は、以下の①「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」7項目から1項目以上を、②「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」7項目から1項目以上を選択する。101人~300人の企業に公表が義務付けられる「1項目以上」は、①及び②の14項目のうち1項目以上を選択する。
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女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供 |
職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備 |
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・ 採用した労働者に占める女性労働者の割合 ・ 男女別の採用における競争倍率 ・ 労働者に占める女性労働者の割合 ・ 係長級にある者に占める女性労働者の割合 ・ 役員に占める女性の割合 ・ 男女別の職種又は雇用形態の転換実績 ・ 男女別の再雇用又は中途採用の実績 |
・ 男女の平均継続勤続年数の差異 ・ 10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合 ・ 男女別の育児休業取得率 ・ 労働者の一月当たりの平均残業時間 ・ 雇用管理区分ごとの労働者の一月当たりの平均残業時間 ・ 有給休暇取得率 ・ 雇用管理区分ごとの有給休暇取得率 |
近年の就活市場は、「売り手市場」と言われており、企業が優秀な人材を獲得するためには、就活生(求職者)に「選んでもらえる会社」であることをアピールする必要があります。
厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」は、多くの就活生に閲覧されているともいわれており、女性活躍推進法に基づく取組みを強化し、それを「見える化」することは、企業にとっても大きなメリットがあります。
企業経営においても、同法の定める義務を順守するのみではなく、同法の趣旨にそったより積極的な取組み、情報公開を検討すべきだと考えます。
- 厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ」
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html) - 厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」
(https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/)
執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 橋本浩史

















