クレーム対応のルールを間違って理解しているから失敗する(3)
(※秀和システム刊 『ポケット図解 クレーム対応のポイントがわかる本』より、一部抜粋と加筆)
【その1】『説明』がお申し出者を引き下がらせるのではない。『説明』は短く、わかりやすく。
タイミングの早い『説明』、早口の『説明』、ダラダラと長い『説明』、専門的な『説明』。『説明』はすればするほどこじれる。なぜなら『説明』は企業の考えの押しつけだから。
『説明』で納得してくれるお客様とはこじれません。『説明』で納得できないからこじれるのです。
あなたが、製品の説明や、契約内容の説明、会社の考え方や、品質検査や、従業員教育の詳細などがきちんと詳しく説明できれば、このお申し出者は引き下がってくれるであろうと考えているとしたら、クレーム対応のスキルをもっと磨くことが必要です。お申し出者は、一方的に豊かな説明をされるのが一番キライなのです。「消費者のくせにこんなことも知らないの?」と言われているようで苛立ちます。そうなると説明のはしばしで小さな上げ足をとってきます。「なぜ、そうなっているの?」「誰が決めたの?」など、申し出内容の解決とは無関係な部分にこだわって担当者を困らせようとします。それはあなたの説明が詳しければ詳しいほど相手は引き下がりやすいと、まちがった理解に基づいた対応していることが原因です。実は『説明』に相手を引き下がらせる力はないのです。
『説明』を早く、速くしすぎない。詳しくしすぎない。豊かにしすぎない。必要最低限が最適。
クレーム対応の実力の高さは、どれだけ企業側の考えや、製品やサービスの『説明』を少なくしながら、相手に快く引き下がっていただける対応ができるかで測ることができます。『説明』にはお申し出者にとって納得できない製品特有の事情もたくさん含まれています。するとお申し出者は、その不可解な点を詰問せざるをえなくなります。そしてさらに担当者はしどろもどろになりながらも『説明』をすると言う状態が続きます。それは知らぬ間にお互いが行くつもりでなかった話しの方向に向かうことになり、双方共に苛立ち、時間のかかる不幸な対応になるのです。
【その2】『誠意』という言葉はお客様の口から出る言葉で、担当者は口に出してはいけない。
「誠意をもって対応いたします」などと言っていたなら明日からは『誠意』は使わないこと。
申し出者にとって『誠意』とは『特別対応』をすることを約束したことになります。
「お客様のことを一生懸命考えて対応します」と言いたいなら『誠意』ではなく『誠心誠意』で。
クレーム対応の際にとても興奮したお申し出者に「誠意を見せて下さい!」と言われる場面はよくあることですが、担当者もしばしば「誠意ある対応をいたしますので、少々お時間をください」などと言っている場面を耳にします。クレーム対応時における『誠意』というのは『特別対応』のことと理解されてもやむをえないことを知っておいてください。悪質クレーマーに至っては「誠意を見せろ!」と言いながら「金を出せ!」と言っていると考えて間違いないわけです。そのことと同じように『誠意を見せる』とは『標準以上の特別対応をして上げます』と約束したように相手はとらえる危険性があります。ただ担当者としては「このお申し出に一生懸命に対応します」という意味で『誠意』を使っていることが多いのだろうと思いますが、相手はそのような理解をしないのです。
『誠意』はNGトーク。「誠心誠意対応いたします」「誠実な対応をと思っております」が最適!
「誠意を持って対応をいたします。」と言った相手が悪質クレーマーだったりすると「今、誠意を持って対応すると言いましたね?」「あなたの会社の誠意はどんなものか見せてもらいましょう」と『誠意』という言葉に執拗にからみついてきて最終的には金銭の話しをせざるをえない状態になりかねません。悪質クレーマーには『誠意』は『お金を払う対応』と聞こえるようです。『誠意』という言葉を使いたい時には『誠心誠意』や『誠実な対応』と、どのお客様にも言い換えることをお勧めします。こんな小さな言葉にも立場違いで齟齬は発生するものなのです。