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第162話 政府も企業も家庭も金欠病

中国経済の最新動向

 3年も続いた中国の「ゼロコロナ政策」は、見直さなければならない段階に来ている。民心離反のほか、政府も企業も家庭も金欠病に罹り、「ゼロコロナ」政策は継続不可能に陥っているからだ。

 

◆全国31省・直轄市・自治区が全て財政赤字に転落

 「ゼロコロナ政策」を推進するため、中国は膨大の資金を投入し、毎日のように全員PCR検査を実施してきた

 

 新型コロナ発生以降、全国は一体どのぐらいのPCR検査を行ったか?中国衛生部門のデータによれば、今年4月上旬まで、全国で115億回のPCR検査を実施し、1人当たり8回の計算だ。4月以降、コロナ感染拡大によって、上海、北京、深圳など大都会ではPCR検査が日常となり、実施回数は急増し、累計で200億回を突破すると推計される。これらのPCR検査は無料で政府の財政支出に計上されている。

 

 それでは全員PCR検査のために、政府はいったいどのぐらいのコストを払っているか?当局の公式発表がないが、民間研究所の試算がある。

 

 東呉証券研究所の試算によれば、中国の東部(沿海部)と中部の都市部で人口3000人毎にPCR検査スポットを設置すれば、合計16.8万ヵ所にのぼる。設置費用は1ヵ所3万元で計算すれば47.5億元かかる。48時間毎に1回検査を実施すれば、一年間の検査費用は1.45兆元(約29兆円)にのぼり、全国財政収入の7.18%占める。これらのコストは全部、地方政府の財政で賄っている。

 

 さらに「ゼロコロナ政策」のため、上海市をはじめ全国主要都市のほとんどはロックタウンを実施し、経済成長に大きな打撃がもたらされた。図1に示すように、今年第2四半期の経済成長率は上海市▼13.7%、吉林省▼4.5%、北京市▼2.9%、海南省▼2.5%、江蘇省▼1.1%と、相次いでマイナスに転落している。同期の全国経済成長率も0.4%にとどまり、1989年天安門事件以来2番目の低さを記録した(図2を参照)。

 

 筆者の試算によれば、「ゼロコロナ政策」の影響によって、今年の中国GPP成長率は政府目標より2.5ポイント低下し、2.85兆元(約57兆円)のGDPが損失してしまう。全員PCR検査のコストを加算すれば、今年1年間のコストは4.3兆元(約86兆円)にのぼる。

出所) 各地方政府の発表により筆者が作成。

出所) 中国国家統計局の発表により筆者が作成。

 

 景気の悪化によって、財政収入は激減している。中国財政省の統計によれば、今年1~6月全国財政収入は10兆5221億元で前年同期比10.2%減少し、うち税収が14.8%減少した。

 

 こうして収入激減、支出が急増した結果、今年1~6月中央政府の財政赤字は2兆3666億元にのぼり、全国31省・直轄市・自治区もすべて財政赤字に陥ったのである(表1を参照)。

出所)中国財政省の発表により筆者が作成。

 

 特に、2019年中央政府の財政収入に大きく貢献した広東省、上海市、北京市、江蘇省、浙江省、山東省、天津市、福建省など8省市は、今年1~6月にいずれも財政赤字に転落した。

 

 要するに、政府にはもう金がない。「ゼロコロナ政策」を支えてきた経済基盤が崩れた形となっている。

 

 

◆倒産や登録抹消の企業が356万社

 今年、上海市をはじめ多くの都市がロックタウンを断行し、生産や営業停止に追い込まれる企業が数多い。そのため、経営破綻や倒産に陥った企業は後を絶たない。

 

 国家発展改革委員会の統計データによれば、2022年1~6月に倒産した企業は46万社にのぼる。そのほか、310万社の中小商業店舗が登録を抹消した。両者合計で356万社が「ゼロコロナ政策」のために姿が消えた。

 

 生き残った企業の多くも減収減益に陥り、厳しい経営が続いている。「捜狐財経」によれば、10月31日まで1~9月期決算を発表したA株上場企業4964社のうち、2601社が減益または赤字に転落し、全体の52.4%を占める

 

 増値税(付加価値税)と企業所得税は2021年度中国税収の最大の2項目であり、前者は全体の36.8%、後者は24.3%を占める。今年、中国企業の多くが減収減益に追い込まれたため、当然、政府の税収も大幅に減少した。

 

 さらに、多くの企業が生き残るため、やむを得ず人員削減または従業員給料削減を実施している。これは一般家庭の家計を直撃する形となる。

 

 

◆若者5人に1人が失業

コロナ感染拡大の最大の被害者は若者だ。「ゼロコロナ」政策及び各地のロックタウン多発・乱発によって、多くの若者は仕事を失ったためだ。

 

 図3は中国政府が発表した今年失業率の推移だが、これを見れば16~24歳の若者の失業率がいかに高いかがわかる。特に、4月上海ロックタウン実施以降、若者の失業者が急増した。ピークの7月に若者失業率が19.9%に上り、統計開始以来の最高を記録した。言い換えれば、若者5人に1人が失業中だ。

 

 「ゼロコロナ政策」の下で生計が直撃された若者たちは、その不満の矛先を「ゼロコロナ政策」及び中国政府に向け、大規模な抗議行動を起こした。11月下旬、上海、北京、成都、新彊ウルムチなど各地で発生した、「ゼロコロナ」をめぐる抗議行動の中心は、正に若い人たちである。この点については、習近平国家主席も認めている。

出所)中国国家統計局の発表により筆者が作成。

 

 6月1日に北京で開かれた中国の習近平国家主席と欧州連合(EU)のミシェル大統領の会談に同席したEUの高官によれば、会談の際、習氏は中国各地で発生した厳格なコロナ規制に対する抗議運動について、「感染症の拡大から約3年が経過し、人々が不満を抱いているためだ」と説明し、「主に大学生や10代の若者」が抗議していると述べたという。そのうえで、習氏は「中国国内では現在オミクロン変異株が主流となっており、デルタ株よりも致死率が低い。それがコロナ規制を緩和する道を開き、一部地域ではすでに緩和されている」と語り、「ゼロコロナ政策」の見直しを示唆した。

 

 これまで「ゼロコロナ政策」を支えてきたのは、国民の支持及び国の財的余裕という2つの基盤だった。しかし今、この2つの基盤はいずれも崩れている。

 

 全国各地で発生した大規模な抗議行動は、国民が既に我慢の限界に達し、これ以上「ゼロコロナ政策」を支持しない意思を示している。政府も企業も家計も赤字状態なので、経済的にも「ゼロコロナ政策」が持続できない。3年も続いてきた「ゼロコロナ政策」は、遂に見直さなければならない段階に来ている。習近平政権がこうした厳しい現実を無視して「ウイズコロナ」という時代の潮流に逆らうことはもうできない。

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