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第132回 弛まず進める製造装置の改良で競争力向上はエンドレス(やまみ)

深読み企業分析

いよいよ、豆腐メーカーやまみの業績拡大に弾みがついてきた。2019年の富士山麓への新工場建設を機に、最大市場の関東への進出を果たし、一旦は減価償却費等で営業利益はピーク比3分の1の4億円弱まで落ち込んだ。しかし、2023年6月期にわずかではあるが、2016年6月期の過去最高益を更新し、2024年6月期には営業利益が一気に倍増の20億円越えとなった。

この背景にあるのが、同社の生産性の高さによる競争力であるが、このほど最新鋭の富士山麓工場の見学の機会があり、改めて同社の生産性の高さとその進化について感じるところがあった。

同社の工場の特徴はいかに人手を減らして生産を自動化し、生産スピードを上げるかということである。同社によれば、代表的な300g、400gの豆腐製造を同業他社は1時間に5,000丁のスピードで製造しているのに対して、同社では現時点で1時間あたり最高12,000丁のスピードで製造しているため、コスト競争力が圧倒的である。また、常にスピード化の追求を行っており、将来的には、1時間あたり20,000丁の生産を目指しているとのことである。

スピード化を進めるためには、いかに人手を省くかということになり、その面でも生産コストに占める人件費比率は大きく低下する。さらには生産工程における人の関与が極力少ないため、極めて衛生的である。人手を使わず無菌状態で製造から梱包まで行うことで、かつては消費期限が3日程度だった製品の消費期限を10日~2週間まで伸ばすことができた。その結果、廃棄ロスが減るなど、スーパーにとっては極めてメリットの大きなものとなっている。

また、独自の自動化装置の開発によって、人手では手間がかかり、他社が顧客の許容できる価格では提供できない商品も同社では提供可能であり、これも圧倒的な競争力の源泉となっている。一例に、600gの豆腐を75個に分割した業務用(麻婆豆腐など用)の豆腐がある。外食産業や中食産業がこの商品を使って調理する場合、パッケージをひっくり返して鍋や窯に入れるが、この時に従来製品では小カットした豆腐が崩れることがある。それに対して、同社ではひっくり返しても崩れにくいような豆腐に仕上げている。同社によれば、これは同じ価格では絶対に他社ではまねできないものと考えている。

今回の工場見学の中から、ここでは、一例として厚揚げの製造ラインについて述べる。大規模なメーカーの豆腐工場での豆腐製造は、スタート地点で豆乳ににがりが投入され、固化が始まってライン上を進行方向に進んでいって、40分ほどで横5-7m、長さが数十mの豆腐ができて、その先頭から裁断され、一般的にスーパーの店頭で目にする豆腐の形になって、そこから先はパッケージに詰める工程となる。ただし、厚揚げラインの場合には、その前に揚げ工程になって、その後にパッケージ化のラインへと進むことになる。

この工程自体は、他の大規模豆腐メーカーも大きな差はないと思われる。この工程で差が出るとすれば、まずはラインの幅である。ラインの幅が倍ならば、それだけで生産スピードは倍になる。ただし、単にライン幅を倍にすれば済む話ではなく、それによって新たな問題点が発生するため、その解決が開発の肝となる。また、ラインの全長ができる限り直線的で長ければ、スムーズに流れて効率が良くなる。同社の工場は2019年に建設されたものであり、その辺りも考慮して、縦の長さを十分にとった構造となっている。

豆腐の製造装置はステンレス製であり、使おうと思えば、30年でも40年で使い続けられるものである。それゆえ、投資コストを考えれば、なるべく長い期間使い続けようとするものである。しかし、同社では耐久年数とは無関係に、できる範囲で新しい製品に変えている。例えばセンサー一つをとっても時代とともに反応スピードが速くなるため、新しい装置を導入し続けることで、1時間あたりの生産数量が多くなって行くことになる。

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