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- 中小企業の新たな法律リスク
- 第24回 『オフィスでも禁煙対策が義務付けられます!』
ヘビースモーカーの田中社長は、賛多弁護士の事務所において打ち合わせ中、タバコを吸いたくなり喫煙室はないかと尋ねましたが、賛多弁護士から「このビル内には喫煙室はありません」と断られました。
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田中社長:最近のオフィスビルはどこも全面的に禁煙ですね。ヘビースモーカーの私としては本当に辛いです。自宅でも妻や娘がタバコの煙を嫌がるため、ベランダで寒々とタバコを吸っています。私が堂々と喫煙できる場所といったら弊社の事務所だけですよ。
賛多弁護士:社長にとって大変残念なお知らせですが、令和2年4月1日から、会社のオフィス内も原則禁煙にすることが法律で義務付けられます。
田中社長:ええ!?私に残された唯一の場所だったのに‥‥。ところで今、「原則」とおっしゃいましたよね。ということは例外があるのですか。
賛多弁護士:はい。屋内を全面禁煙にするか、喫煙専用室を設置するかを選択することができます。但し、喫煙専用室を設ける場合、室外へ煙が流出しないような設備を設けないといけませんし、喫煙専用室が設置されていることを示す標識を設置しなければなりません。
田中社長:弊社では私だけでなく多くの従業員が喫煙者なので、何とか喫煙専用室を設けたいのですが、設置するお金がありません。
賛多弁護士:国から喫煙専用室の設置費用に関して助成金制度がありますので、助成金を申請されてはいかがですか。
田中社長:それはありがたいです。喫煙専用室があれば、その室内でゆっくり仕事や会議を行うことができそうです。
賛多弁護士:それはダメです。喫煙専用室内では仕事など喫煙以外のことを行うことが禁止されていますのでご注意ください。
田中社長:そうなんですか!?もしこれらのルールに違反したらどうなるのですか。
賛多弁護士:まず都道府県知事から指導を受けます。指導に従わない場合は、義務違反の内容に応じて勧告や命令等を受けることがあります。これにも従わない場合は、過料の罰則を受けることがあります。
田中社長:いよいよ本当に喫煙者に厳しい世の中になってきました。ついに私もタバコを止めざるを得ないときが来たのかもしれません。
賛多弁護士:健康のためにもこの機会に止めるのがいいかもしれませんね。
* * *
健康増進法の改正に伴い、令和2年4月1日から、事業主は職場において受動喫煙の防止対策を採ることが義務付けられます。これにより、事務所や飲食店(既存の小さな飲食店は経過措置あり)では原則屋内は禁煙となります。屋内で喫煙を認める場合は喫煙専用室を設置しなければなりません。この喫煙専用室は煙が室外へ流出しないように一定の基準を満たす設備である必要があり、また施設に喫煙専用室があることを示す標識の掲示が義務付けられます。
一定の規模に満たない中小企業は、国から、喫煙専用室の設置や改修費用の一部について助成金を受けることができます。詳しくは各都道府県の労働局へご相談下さい。
また、事業主は、喫煙禁止場所に灰皿などの喫煙器具や設備を置いてはならず、喫煙専用室内で仕事や飲食など喫煙以外を行うことができません。また喫煙専用室への20歳未満(従業員を含む)の入室を禁止しなければなりません(但し、加熱式タバコの喫煙の規制は若干異なります)。
万が一、これらの義務に違反した場合は、都道府県知事が指導を行い、改善が見られない場合には勧告や命令、公表を行う場合があります。さらに改善が見られない場合には罰則(過料)が課される場合があります。
以上
<ご参考>
・職場における受動喫煙防止対策について(厚生労働省HP)
執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 北口 建