福岡市から車で40分位。筑豊地区の炭鉱町の名残が残る飯塚市。戦前戦後経済発展をたたえた石炭の町ということもあってか、大物政治家や財界人を輩出しているエリアである。
しかし、今は、田園地帯が広がるのどかなエリアである。
その郊外の田んぼのど真ん中に、今回ご紹介する“焼肉業界のレジェンド”『焼肉のMr.青木(ミスターアオキ)』はある。ちなみに、『焼肉のMr.青木』はミシュラン2014福岡・佐賀においてビブグルマンに格付けされています。
『焼肉のMr.青木』を仕切るのは青木繁道さんだ。繁道さんのお父さんは広島カープの野球選手で、ウィキペディアにも載っている。
話は戻って、『Mr.青木』は焼肉店、精肉店、食肉卸を経営している。繁道氏は市場に通い、肉を厳選する。質、量ともに申し分ないのだが、その中でも焼肉店で販売させる肉の鮮度は抜群である。
一般的に、肉は食品衛生の関係で卸業者からは、真空をかけパック詰めすると、多くの場合真空パックごと低温殺菌して販売される。真空をかけることに難点があり、脱気をして真空にするため、細胞がかなりの力でひっぱられ、一般的には肉の組織が壊れる。この状態を宇宙に肉を投げると弟子の石崎くんは言った。
そして、自由水が遊離する、俗に言う“ドリップアウト”という現象がおこる。 さらに、冷凍すれば、細胞は細胞内にある自由水の膨張により、“ドリップアウト”は顕著になる。
脂肪が多い肉ほど真空パックをかけても問題ないというが、湯煎で低温殺菌をすれば脂肪の変性があるのは否めないようだ。霜降りの脂が流れている肉があるがこの行程が関係しているのかもしれない。
青木では焼肉店、精肉店、食肉卸を経営している強みを活かし、枝肉は、まず焼肉店へ、そして焼肉店である程度の時間を経過すると精肉店へ、そして、さらに時間が経過すれば真空して卸先と流れる。つまり、この三位一体の環境を活かして焼肉店では抜群の鮮度の無真空の肉を提供されるのだ。
今回の訪問は、以前御紹介した大阪の大繁盛焼肉店『万両』滝本昭人社長と、『魚男』森智範社長など会員顧問先の五名で伺った。テーブルにつくと青木社長が「本日はありがとうございます!!!」と元気よく!挨拶にいらっしゃる。ほんと元気がいい。
まずは、テーブルには、有田焼き(有田えいこう作)の四段重が運ばれる。青木社長の「野菜をとって欲しい」ということから一番上にはきれいにエディブルフラワーが散らした野菜の生春巻き、二段目には、サラダやキムチやおろしポン酢のタレ皿が入っている。
そして、湯引きしたセンマイが出たあと、まずは、特選の赤身盛りがやってくる。
まだ屠畜して三日目の和牛タン、リブロース、ヒレ、カルビ、ハラミだ。もちろん、無真空。この品質に、さすがの『万両』の滝本社長も「反則ですわ」と言う。卸をやっている相乗効果だ。青木さんの店の特徴は全国でも屈指の鮮度だが、この一皿は誰もそのことを否定しえないものだ。
とくに、このハラミはさすがの『万両』でも年に一回あるかないかのハラミだと言っている。つまり、「ありえへん」ハラミらしい。ヒレも、脂の左の三角の部分を外せばシャトーブリアンだ。
せっかく美味しい肉なので、滝本さんに焼いてもらうことにする。三日目のタンは良く焼き、表面をサクサクにするのがポイントと興奮気味に御託を並べている(笑)。でも、たしかに、サクサク、モチモチ、ジュースィ。
リブロースは塩と胡麻油でもんだ葱でいただく。うーん、さすがに肉の仕事が多い私でも「た・ま・ら・ん」という印象だ。
次は和牛ホルモン(ひとつだけ豚)盛り合わせだ。シマチョウ(テッチャン)、ヤン、サンドミノ、ギャラ(コブ)、豚のガツが入っている。シマチョウの鮮度がこちらのトレードマークだ。朝10時に屠畜したものを持ってきたので鮮度抜群だ。当然、ありがちなアンモニア臭はない。そして、なんとこのシマチョウは包丁を入れていない。青木さんが鮮度のよいそのままの食感を食べて欲しいという思いが、ひしひしと伝わってくる。
メインディッシュはすだれステーキ(リブ芯)、究極の焼きシャブだ。こりゃすごい。炙り握りが添えられる。
最後にデザートだ。
いやー、凄いのなんのって。しかも、安い。6千円。これだけの品質で東京だったら万はいくだろう。これだから地方の飲食店は勉強になる。
最後に店内を見学させていただいた。スワロフスキールームや100人入る掘りごたつ席など、他の追随を許さないローカル店だ。
ほんと、凄かった。
焼肉のMr.青木(ミスターアオキ)
福岡県飯塚市鶴三緒一本木1171-1