この数字は、矢野経済研究所が調査した、おけいこ・習い事市場に関する2011年度の市場規模(受講料ベース)である。
カテゴリ-別では、スポーツ教室が3,620億円、茶道や書道、短歌・俳句などの日本文化が3,554 億円と全体の4割を占め、アートが2,548 億円、ダンス教室が2,305 億円と続いた。
この調査では、資格取得やプロフェッショナル養成を目的とする専門学校等は含ま ず、師匠・講師・コーチなどが、主に大人向けに教えるおけいこ・習い事が対象。
首都圏や近畿圏、その他の政令指定都市に在住する20 歳代~60 歳代の男女6,103人に、インターネットでアンケートを実施した。その結果、習い事をしている人は全体の12.2%、男女別では男性が7.0%、女性18.0%と、女性が男性の倍以上だったことがわかった。
具体的なおけいこ・習い事の種類は、「フィットネス・スポーツ」(32.4%)と「外
国語」(27.6%)が上位で、「音楽(楽器・唄)」が14.9%、「ビジネス・資格関係など」「アート全般」がそれぞれ12.4%、「料理」が11.5%、「PC」が10.4%。
また、情報収集手段を聞いたところ、「知人等からの直接の口コミ」が49.9%、「イ ンターネットによる検索」が43.2%で、「チラシ」(13.9%)、「新聞広告」(7.0%)
を大きく上回った。
事業者別にみると、フィットネスセンター市場が拡大傾向にあるものの、カルチャーセンターや通販業界に含まれる通信教育市場は減少傾向にある。
このおけいこ・習い事市場を牽引しているのは、まさに団塊の世代を加えたシニア 世代である。日本の平均寿命は、男性が80 歳、女性が86 歳。会社をリタイアしてからの“自由時間”は、勤続40年分の労働時間より多く、その余暇を意欲的におけいこ・習い事にあてて、生活リズムを整え、生きる楽しみを作っている、積極的なシニア層が多いことの表れだ。
矢野経済研究所は「おけいこ・習い事市場では、次世代の顧客に合わせた教室の 立地、Web メディアを活用した受講者への周知、新しいコンテンツ開発の取り組み等が成功の鍵となっていく」と論じている。
4人に1 人が65 歳以上という超高齢社会が目前に迫る中、消費支出の大きいシニ アの存在感は、あらゆる市場で高まっている。このシニアの取り込み戦略のスピードによって、各社の業績は大きく明暗を分けることになる。
だが、その一方で、現在の事業を長期的に成長させていくためには、次世代の若い顧客層の確保も同時におこなっていかなければならない。これは、すべての業界が抱える社会構造的な命題と言えるだろう。