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経済・株式・資産

第29話 商品譲渡担保の契約は、企業の生き死にを決める

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銀行から、今回は別枠で融資をだしますから、商品の譲渡担保契約を結んでくださいと言われる場合がある。
 
「商品を譲渡担保にいれたのでは、商売ができなくなるから」と言うと、金融機関の担当者は「ちゃんとご融資がご返済いただけるのなら、ふつうにお客さんに商品を売ってもかまわないのです。商品売却代金もそちらで運転資金に組み入れてもなんら問題ないのです。当行としては担保の意味合いがあるだけなので」と回答する。
 
譲渡担保差入証を読むと確かにそのとおりなのだ。かくして譲渡担保契約を結ぶと、その企業の命運は債権者・金融機関に握られることになる。
 
いったん企業側になにか問題がおきたときなど、この契約は企業をじわじわと苦しめ始める。
たとえば、業況が悪化して返済が出来なくなりリスケをするときには、この契約書の下記文面が経営者を苦しめるのだ。
 
「譲渡物件は、担保権設定者(物上保証人)が引続き占有し、当銀行からの請求があるまでは通常の営業方法により、第三者に相当の価格で売却できるものとします。ただし、当銀行の請求があった場合には、全譲渡物権を当銀行またはその指図人に当銀行指定の場所で指定の方法により引き渡すものとします。・・・担保権設定者(物上保証人)は、善良なる管理者として保管義務を負い・・・」
 
この文からわかるように、銀行が請求をすれば商品は銀行のものになってしまうのだ。さらにこの請求から商品の移転までは待ったなしなのだ。
 
さらに金融機関の譲渡担保の契約には、その後に仕入れ、その店に収容した商品も所有権移転の対象になるという条項や、厳しい報告義務が指示されることが多い。そして、返済が遅れて期限の利益を喪失しようものなら、銀行はそれら商品を任意の方法で売却し返済にあてることができるなどという規約もはいっている。
 
「元金返済をストップしてください。利息だけはお支払いしていきますので」と銀行に頼んだとたん、では、この契約にもとづきxx店の商品の販売を中止し、商品を引き渡してください。商品の売り先はそちらでみつけてきてご連絡ください・・・と、いうこともあるのだ。
 
これでは資金繰りが破たんし、膨大な赤字が生まれることになる。
 
当期の売上原価 は、
期首商品在庫 + 当期商品仕入高 – 期末商品在庫
 
で、売上からこの売上原価を引いたものが 粗利益といわれる。
 
銀行主導で、債権回収のために譲渡担保の商品をたたき売る。当然、その分の売上は通常販売より少ないものとなる。もちろん、たたき売りだから売上原価よりもはるかに低い金額となる。
 
結果として 粗利益の段階で大幅赤字。さらに給与や水道光熱費、店舗の家賃といった一般販売管理費を差し引くと、それこそ膨大な赤字が計上されることになる。
 
さらに この場合の商品の叩き売り代金は、銀行のものとなり、企業の資金繰りをさらに苦しめる。
 
これだけ書けばおわかりいただけるだろう。
 
商品譲渡担保はその企業の生き死にを決めるものになるのだ。

 

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