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- 第176号 進化する「静脈物流」
いま、通販ロジスティクス分野で注目されているのが、「静脈物流」という言葉だ。
この語源は、人間の動脈と静脈の関係に例えている。動脈物流は、通常の通販企業から消費者へ届ける物流(B to C) のことで、一方の静脈物流は回収物流のことだ。
一度消費者まで届いた商品を回収する目的で集荷する物流を指している。動脈は心臓から血液を送り出し、静脈は逆に心臓へ戻る血液が流れることから、心臓を企業に、血液を商品に置き換えて表現しているわけだ。
最近、この静脈物流は、通販業界では返品物流として市場が拡大中である。これは、以前にもお伝えした通り、アパレルや靴・バッグ・眼鏡・枕など、様々な商品ジャンルにおいて、「お試しサービス」や「返品無料サービス」を実施している企業が増えているからだ。
また、通販業界では、商品を実際に見られないことから、元々有店舗より返品率が高い。日本通信販売協会の直近のデータでは、衣料品が4.9%、装飾雑貨・貴金属類4.7%で、家電や食料品なども含めた全体の返品率は2~3%となっている。
物流大手の佐川急便では、静脈物流の売上高がこの5 年で倍増しており、荒木社長は「モノの売り方やリコール( 回収・無償修理) への企業姿勢の変化が後押ししている」として、他社と事業提携しながら、この分野への取り組みを本格化させている。
通販業界では、今後、返品率は欧米並みの3 割に近づくとの予測もあり、巨大化した通販物流において、静脈物流が占める割合は高まっていくだろう。この静脈物流の進化は、通販に対する消費者の支持率をさらに上げることになるはずだ。