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- 第88回「VR/ARに続くMRとは?」
技術そして製品で今、最もホットなジャンルの一つが、仮想体験を実現する「VR」「AR」そして「MR」。近年では一般紙やテレビニュースなどでも取り上げられるなど、目にしたり聞いたりする頻度が高くなりました。
今回は、VR/ARとそして比較的新しい言葉「MR」を解説しつつ、具体的な製品やビジネスへの応用イメージなどをご紹介します。
製品やサービス、業務の効率化など、幅広い応用が期待できます。
■簡単解説、VR/AR、MRとは?
比較的古くからある言葉は「VR」。Virtual Reality(バーチャルリアリティー)の頭文字を取ったもので、主に立体映像によって現実に近い体験を得る「仮想現実」と呼ばれる技術です。
この連載コラムに初めて登場したのは、2014年の記事「VRヘッドセットが本格発進!」でした。
当時は技術がようやくこなれて、クオリティー面でもコスト面でも、一般消費者が満足できるレベルに達した製品が登場したのが印象的でした。
2回目の登場は2016年の記事「VR元年!テレビを超える存在に?!」でしたが、大規模な展示会が開催され、ハードウェア、コンテンツ、関連サービスの拡大を肌で体感し、「テレビ」に置き換わるような勢いが印象的でした。それから約3年、まだ日常に浸透しているとは言えませんが、VRを利用したゲームやアトラクションが増加していて、技術は医療などでも採用できるレベルまで高度化しています。
VRを追うように話題に上るようになった言葉が「AR」(Augmented Reality/オーグメンテッドリアリティ)で、VRは現実の視野を遮って映像の世界に没入するのに対し、ARは現実の視界に映像を重ね合わせる違いがあり、「拡張現実」と呼ばれています。大ヒットしたスマートフォンゲーム「ポケモンGO」は、カメラで捉えた実際の風景の中にモンスター(キャラクター)を表示することで実在感が得られ、ARの好例と言えます。
そしてさらに新しい言葉が「MR」。「Mixed Reality」(ミックスドリアリティ)の略で、コンピューターグラフィックス(CG)による仮想世界と、視界に入っている現実世界をミックスして新しい体験を生み出す技術。ARに似ていますが、目の前に現れた立体のCG像を、観察者が移動したり首を動かして視点を変えると、それに応じたCG映像が生成され、見え方も変わるという点で異なります。なお、学術的には、VRやARなどの総称としてMRと定義していたり、また適用される各分野での認識には幅があるようですが、概ねこのような認識で良いでしょう。具体的には、「ポケモンGO」でキャラクターが目の前に現れるのが「AR」、さらに観察者が横に移動してキャラクターの側面をみることができれば「MR」という感じです。
■具体例
「MR」として真っ先に思い浮かぶのが、マイクロソフト社の「Microsoft HoloLens」(ホロレンズ)です。ゴーグル型で映像の生成に必要なコンピューター機能を一体化し、位置や距離の精密な把握、言い換えると、より自然で現実感のあるMR体験が可能です。例えば医師が手術前に患者の臓器を複数名であらゆる角度から観察して検討したり、建築や大型工業製品などの設計段階において、実際に試作を眺めるような作業を仮想的に体験させてくれます。コスト低減はもちろん、コンピューター映像上での変更は比較的容易で時間短縮につながり、各分野での応用が期待されています。
【Microsoft HoloLens】
https://youtu.be/MVXH5V8MVQo(マイクロソフト)
そな注目のMR技術は、たくさんの企業や個人が研究開発や製品化に取り組んでいます。その一つとしてご紹介したいのが、日本の「ホログラム株式会社」による「だんグラ」。スマートフォンを流用し、ゴーグルは双眼鏡のように手で持って覗き込むタイプで、しかも素材を段ボールにすることで低コスト化。簡易版のMRと言って良いでしょう。
実際に開発者である同社CEO橋口氏にお話しを伺いつつデモンストレーションを体験しましたが、これがなかなかのクオリティー。ベンチャー企業でコストを抑えつつも、独自にレンズを設計することで、像に歪みや色収差の極めて少ない高画質を実現していて、同ジャンルの他製品よりも高品位。観察者の動きは、スマートフォンのカメラ機能を利用したものですが、移動した際の見え方の変化も自然で驚きました。さらに同社では、コンテンツの開発環境も提供する計画だそうで、個人がゲームを作ってみんなで気軽に楽しむような時代もやって来そうです。
開発した「だんグラ」を覗く、ホログラム株式会社CEO橋口氏
「だんグラ」は2眼方式で視差による立体映像を風景に重畳(ちょうじょう)できる。
「だんグラ」 クラウドファンディング(マクアケ)先行予約発売サイト:
■さいごに
MR技術は、ゲームやエンターテイメントでの活用はもちろん、医療現場や各種モノづくりにおいて、現実を先取りして検討する可能性を広げ、安全、安心、低コスト、時短を実現しれくれる切り札となるでしょう。工場での組み立て作業指示、物流倉庫でピックアップするアイテムの指示など、作業者の負担を軽減しつつスピードアップなども期待されています。精密で高価なMR技術は医療や企業で、簡易的なMRは手軽なゲームで余暇の楽しみを広げるなど、仕事や生活にどんどん取り入れられて行きそうです。MRを活かして業務の合理化を図るもよし、MR関連の製品やサービスを提供するもよし、MRから目が離せません。