PayPayの100億円キャンペーン連発で注目を集め、競合他社も追随し存在感を高めている、スマホを用いたQRコード(バーコード)決済。
2019年10月の消費税率アップに合わせ、政府はキャッシュレス決済の場合、軽減税率(事業者の規模に応じ、2%または5%をポイントで還元)を適用するとして、個人商店など中小小売店のキャッシュレス化も推進しようとしています。
キャッシュレス化は、消費を活発化して経済効果が見込めるとされていますが、金銭の流れを把握して漏れなく税収を得ることや、消費者にとっても利便性が高まるなど、当然の流れと言えるでしょう。
一方、中小小売店キャッシュレス化の「切り札」と言われることも多いQRコード決済は、日本でも本当に普及するのでしょうか?筆者は極めて懐疑的に見ています。
当コラムでは、「
第82回 中国出張にWeChat Pay」で、QRコード決済が既に当たり前のように浸透している中国の状況をお伝えしましたが、そうした体験も踏まえ、筆者の視点で考察し、「日本でQR決済が普及しない5つの理由」を述べたいと思います。
■中国でQRコード決済が普及した背景
中国でQRコード決済が普及した理由の一つとして「偽札問題」が上がることがあります。もっともらしく納得してしまいそうですが、QRコード決済は利用の大半が日常的な少額決済に利用されていて、またセキュリティーの観点から1日の利用額に上限も設けられています。強いて言えば、決済のほとんどはQRコードで済ませられるほど普及しているものの、現金が使えない訳ではありません。
こうした状況から、「偽札問題」がQRコード決済普及の大きな理由とは考えにくいといえます。
筆者の考えとして、普及の理由は「合理性」の一言に尽きます。ポイントを整理すると:
1. スマホの普及率が非常に高い(高齢者にも浸透し使いこなしている)
誰でもQRコード決済が利用できる環境が整っている。
2. 事業者はWeChat PayかAlipayの2強。
利用時に混乱しない。
3. 財布レス
スマホの他に財布を持って出かけるのはもはや面倒な時代に。
4. 釣銭レス
現金決済では釣銭の硬貨が荷物になる。
5. 安全
店舗側も利用者も紛失や盗難の心配が現金よりも少ない。
■さいごに
筆者の考えとしては、日本でキャッシュレス化に適しているのは、既に生活に根付いている電子マネー(スマホを含む)ですが、公平な競争を考えるとサービスを特定の業者に絞ることはできず、乱立による混乱が収まるとは考えられません。
そう考えると、乱立で混乱している間に、QRコード決済によるパワープレーヤーが小規模店舗やユーザーを獲得し、その後に電子マネーへ移行するシナリオも見えてきます。
「100億円」のような大型キャンペーンは太っ腹に見えますが、先々の電子決済覇権を考えれば、投資に見合うと判断したのでしょう。
余談ですが、現金決済よりも電子決済が主流となる可能性は高く、その際、一部の事業者が独占して利益を上げる構造は好ましくありません。政府による「通貨の電子化」にも注目したいものです。