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- 高橋一喜の『これぞ!"本物の温泉"』
- 第38回 自宅風呂のススメ―自粛期間中は自宅で長湯を楽しもう!
■家にいる時間が長い今こそ湯船につかろう
新型コロナウイルスが猛威を振るっている。あらゆる業界が影響を受けているが、旅館や温泉施設も例外ではない。温泉旅館の多くが客室稼働率の大幅減、あるいは一時休業を余儀なくされている。ついには廃業のニュースもちらほら耳に入ってくるように……。温泉旅館をはじめ、観光業は大変厳しい状況にある。
温泉を利用する立場の私たちも、もどかしさが募る。温泉に入って少しでも支援をしたいところではあるが、自粛期間中は現地にも行けない。自宅で耐え忍ぶしかないのが現状だ。そこで今回は、番外編として「自宅風呂のススメ」をテーマに、その楽しみ方をお伝えしよう。
近年は若い世代を中心に、入浴をシャワーで済ませてしまう人が多いようだ。仕事などで忙しい現代人にとって、「風呂を沸かして湯船につかる」という行為は、面倒に感じるのかもしれない。しかし、自粛期間中や在宅ワークであれば、湯船につかる時間を捻出するのはむずかしくないだろう。
なにより湯船につかる行為は、リフレッシュ効果がある。自宅からあまり出られない人にとっては、気分転換になるだろう。シャワー派の人は、この機にぜひ湯船につかってみてほしい。入浴の気持ちよさを再認識できるはずだ。
■ぬる湯にはリラックス効果がある
湯を張るときには、湯の温度も工夫したい。日本人が最も気持ちよく感じるのは42℃だといわれる。少し熱いくらいで、シャキッとする感覚があるが、42℃以上の湯は精神と緊張を高ぶらせる「交感神経」という自律神経を刺激する。朝、元気に一日のスタートを切りたいときにはいいが、就寝前に入浴するならおすすめできない。
夜の入浴には、37~39℃のぬるめの湯が向いている。脳と体をリラックスさせる「副交感神経」を刺激する。就寝前にぬるめのお風呂にゆっくりつかると、快適な睡眠ができるといわれている。
37~39℃の湯だと、「ぬるくて風呂に入った気がしない」と感じる人もいるだろうが、ゆっくりと20分ほどつかっていると、じんわりと額に汗が浮かび、体の芯まで温まってくる。熱い風呂に数分入るよりも湯冷めしにくいのもメリットだ。しかも、夏に向けて気温が高くなる時期には、ぬる湯のほうが快適だ。
なにかと緊張や不安に襲われる昨今は、心をリラックスさせるのも大切なこと。いつもよりぬるめの湯に長くつかって、ざわつく心を鎮めてみよう。
■半身浴で読書も楽しい
長湯が苦にならない人には半身浴もおすすめ。湯船に座った状態で、みぞおちのラインまで湯を張り、ゆっくりと湯につかる入浴法だ。このときも37~39℃に温度設定しておくと、リラックスできる。
半身浴は体が温まらないイメージがあるが、下半身からゆっくり温まり、血液循環も活発になるため、しだいに上半身も温まってくる。もし寒く感じるようであれば、ときどき肩までつかったり、湯をしみこませたタオルを肩などにかけたりしてもいいだろう。
そもそも長湯や半身浴は退屈……という人もいるかもしれない。半身浴なら読書をしてもいいだろう。私は濡れてもかまわない週刊誌を持ち込んでいる。なかには、スマートフォンを持ち込んで、映画を観たり、音楽やラジオを聞いたりする達人もいるとか。ジップロックのような食料保存袋にスマートフォンを入れれば、水没させることなく、画面操作もできるそうだ。
基本的に入浴で体を温めることは、基礎体温の上昇を促し、免疫力を高めることにもつながる。ウイルスを寄せつけないためにも、入浴を上手に活用したい。ただし、いくらぬる湯や半身浴でも長湯が過ぎるのは禁物。自分の体調と相談しながら、無理だけはしないようにしよう。入浴前の水分補給も忘れずに。