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第37回 豊富温泉(北海道) まるで石油⁉ 日本一個性的な湯

高橋一喜の『これぞ!"本物の温泉"』

■日本最北の温泉街
 温泉の旅を終えて家に帰ると、家族から「温泉くさい!」と言われることがある。成分の濃い温泉に入ると、硫黄などの匂いが肌や服にしみついてしまうのだろう。
 
源泉が発する香りも温泉の魅力のひとつ。なかでも最も強烈な匂いを放つ湯が、日本最北端の温泉街、豊富温泉に湧く。
 
 稚内の市街地に温泉施設ができたことにより「日本最北端の温泉」の座は譲ったが、温泉街を形成する温泉地としては日本最北といえるだろう。
 
ちなみに、石狩と豊富温泉を結ぶオロロンラインは、印象に強く残るドライブルートである。日本海に沿って南北に走る道路は、地平線に向けてひたすらまっすぐ延びる。視界に飛び込んでくるのは大自然ばかり。荒々しい日本海と、そこに浮かぶようにそびえる利尻島の利尻富士。海と反対側の方角に目を向ければ、荒涼とした原野や湿原がどこまでも広がる。
 
人工物は、道路と風力発電用の巨大風車ぐらいしか見当たらない。道路に沿って数十基の白い巨大風車が一直線に並ぶ光景は、美しくて息をのむほどだった。
 
■まるでオイルにつかっているかのよう……
 豊富温泉は10軒ほどの宿が並ぶ小さな温泉地。その一角にある町営の「ふれあいセンター」では、一般客でも気軽に日帰り入浴が楽しめる。
 
37.jpg
 
 源泉をそのまま引いた湯治客用の浴室と、加水して温泉成分を薄めた湯が注がれる一般客用の浴室に分かれているが、泉質重視なら湯治用の浴室を選択するといいだろう。
 
 建物の外にも匂いが漏れていたが、浴室内は強烈なオイル臭が充満。オイル臭のする温泉にはときどき遭遇するが、ここまで鼻にツンとくる匂いは初めてだ。実は、豊富温泉は石油を掘っている最中に湧き出した歴史をもつ。だから、石油に近い成分を若干含んでいるのだろう。
 
 10人ほどが浸かれるタイル張りの湯船には、緑色がかった黄褐色の濁り湯がかけ流しにされており、湯の表面はギトギトとした油の膜で覆われている。おそるおそる湯船に浸かると、あまりの衝撃に、「うおぉぉ!」と今まで温泉に浸かるときには出したことのないような声を思わず発してしまった。
 
「とろり」を通り越した「どろり」とした入浴感。「スベスベ」を通り越した「ヌルヌル」の肌触り。湯船に浸かると、オイル臭はますます強烈に鼻を刺激する。この手の匂いが苦手な人は、気持ち悪くなるかもしれない。まるでオイルタンクに浸かっている気分だ。
 
■効能を求めて全国から湯治客が訪れる
 これまで3500以上の温泉に入ってきたが、これほどの衝撃を受けたことはない。湯に身を預けながら「世の中にはいろいろな温泉があるのだなあ」とあらためて温泉の奥深さにしみじみと感じ入るのだった。
 
 しかし、湯上がりは、そんな感動の余韻に浸っている余裕はなかった。体中に黄色の温泉成分がべったりと付着し、ワックスを塗ったかのようにテカテカに輝いている。普段は温泉成分を流してしまうのがもったいないので、湯上がりにシャワーを浴びることはしないが、今回ばかりは例外。だが、シャワーの湯は見事にはじかれてしまい、いっこうに温泉成分が落ちない。しかたなく、せっけんをつけてゴシゴシとタオルでこすると、タオルは茶色に変色してしまった。
 
 おそるべし、豊富温泉。しかし、効能は抜群。とくにアトピーなどの皮膚病に効果があると評判で、全国から湯治客が豊富の湯を求めて集まってくるのだという。
 
 次の目的地に向かおうと車に乗り込むと、車内はあっという間にオイル臭が充満。自分でも体がオイルの匂いを発しているのがわかる。このまま満員電車に乗り込んだら、間違いなく異臭騒ぎになるだろう。なにはともあれ豊富温泉は、はるばる訪ねる価値のある、日本一個性的な泉質の名湯といえる。
 

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