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人間学・古典

第66講 「帝王学その16」
酒を飲むは人の苦情なり。君を欺くは臣子の大罪なり。

先人の名句名言の教え 東洋思想に学ぶ経営学


【意味】

酒を飲むことは人間として通常のことである。しかし主君を欺くことは臣下の大罪である。



【解説】
「宋名臣言行録」からです。帝真宗から迎えの使者がやってきた時、魯宗道(ロソウドウ)は近くの飲み屋に居り出頭が遅れました。使者が気を遣い遅れた理由の口裏を合わせようと申し出ると、掲句の言葉が返ってきました。剛毅な性格の宗道には、次の逸話も伝えられています。


諫言大夫(カンゲンダユウ:帝を諌める官位)であった魯宗道は、帝真宗の失政を見つけるたびに弾劾文を上奏していましたが、真宗の方は少しずつ疎ましく思いはじめます。これを感じた宗道は、真宗の面前で堂々と自己弾劾(自己罷免の一つ)をしました。
「私は諫言大夫の地位にあるが故に、諫言を繰り返して参りました。これは職務に忠実ならんがためです。しかるに陛下は諫言の多さから、私を遠ざけようとされています。諫言を申し上げ納得いただく立場にありながら、職務を果たさず、いたずらに虚名を抱く、俸禄を貪るようなことは、私には出来かねます。願わくは即刻を罷免していただくことをお願い申し上げます」と。
この時、真宗は一時の迷いを詫び宗道の忠勤姿勢をねぎらいました。


王朝の政治姿勢は、武断政治と文治政治に別れます。前者は豪腕武将などの荒っぽい独裁政治であり、後者はその対極の法令や前例踏襲の安定した官僚政治です。
王朝興亡史をみますと、創成期には前王朝を倒し隣国との戦いに勝つためには武断主義であり、安定期になると文治主義となります。武断には強権・単純・活力のイメージがあり、文治には安定・複雑・衰退となりますが、創成期の武闘派の実権が安定期になるにつれて文治派に移ります。そして次第に前例踏襲の内向き姿勢となり、長期的な組織崩壊の道を歩むことになります。


この傾向は現代の企業でも同じです。創業期の製品開発や販路拡大にはなりふり構わない社員の活躍がありますが、安定期に入ると次第に前年比較の経営計画の採用となり、活力が失われその先は倒産の影もチラつきます。
経営学の理論上では企業法人の命は法律上の永遠の命ですが、現実には「企業寿命30年説」などともいわれるように、多くの企業が倒産消滅しています。


論語に「剛毅木訥(コウキボクトツ)は、仁に近し」とありますが、「組織の中興の人」といわれる人は、原則を大切にする頑固な精神の持ち主で、実は魯宗道もそのような素養の人物です。現代ではその代表的な人物は、中国では周恩来首相、日本では土光俊夫氏などではないかと思われます。
「中興の祖たる人物」が輩出される条件は二つあります。一つはその組織を取り巻く環境が中興の人物を持続的に受容し、全権を委任できるものであるかという点。もう一つは中興の人自身が、「剛毅さ+謙虚さ+持続力」のバランスの良いしたたかさががあるかという点です。

 

杉山巌海

第65講 「帝王学その15」 国を治むるは、樹を栽うるがごとし。本根揺かざれば枝葉茂栄す。君よく清浄ならば、百姓なんぞ安楽ならざるを得んや。前のページ

第67講 「帝王学その17」 我まことに無能なり。ただ一能あり、よく人を用うるのみ。次のページ

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