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第39回 たまて箱温泉(鹿児島) 「3密」とは無縁の絶景露天風呂

高橋一喜の『これぞ!"本物の温泉"』

■円錐形の山容が美しい「開聞岳」
 緊急事態宣言が解除され、おっかなびっくりであるが、少しずつ日常を取り戻しつつある。休業していた温泉施設の多くが続々と営業再開しているのも朗報である。
 
 とはいえ、完全に不安が払拭されたわけではない。「3密は避けたい」というのが本音かもしれない。そこで、今回は3密になりにくい大露天風呂を紹介したい。
 
 薩摩半島の最南端は亜熱帯の植物群が生い茂り、どこか南国の空気が流れている。南へ車を走らせていると、やがて富士山を彷彿とさせる美しい山が姿をあらわす。薩摩富士と称さる「開聞岳」だ。バランスのとれた円錐形の山容が美しい。山麓の半分は陸地に、半分は海に面していることもあり、海がよく似合う名山である。
 
 そんな開聞岳を背景にして入浴できる温泉が、「たまて箱温泉 ヘルシーランド」だ。露天風呂のみの日帰り施設で、湯船からの大パノラマが人気を集めている。世界最大級の旅行クチコミサイト「TripAdvisor」で、「行ってよかった日帰りスパ&温泉施設」で2014年から2017年まで4年連続全国1位に選ばれた実績をもつ。
 
 たまて箱温泉には2つの露天風呂がある。「洋風露天風呂」と「和風露天風呂」の2つで、偶数日と奇数日で男女が入れ替わるシステムだ。
 
■海と山を同時に望む絶景
 同温泉には2度訪ねたことがある。1度目は嵐のような天候で、「雨でだいぶぬるいですが、よいですか?」と受付で尋ねられるほど。この日は「竹山」(別名:スヌーピー山。横になったスヌーピーのような姿をしているため)という巨大な奇岩と海を望む「洋風露天風呂」が男湯だった。
 
 50人以上は余裕で入れそうな大露天風呂。開聞岳は見えないが、間近に迫る竹山と断崖絶壁に押し寄せる白波。こちらも絶景である。
 
 
 
 だが、雨風が強く、強風にあおられた湯が顔にぶち当たる。まるで台風レポート状態。大自然の絶景を楽しむはずが、大自然の猛威にさらされるハメになってしまった。
 
 それから7年後、2度目の訪問を果たした日は快晴だった。この日は、開聞岳と大海原を望む「和風露天風呂」が男湯。絶景としてよくメディアに取り上げられるのは、こちらの露天風呂だ。晴れた日には、遠くに屋久島や、竹島、硫黄島まで見えるとか。
 
 石づくりの湯船はテニスコートが収まるくらいの大きさ。ひっきりになしに入浴客が訪れるが、広いから気にならない。3密とは無縁の環境である。正面は大海原に面しており、右手には開聞岳がそびえる。海と山の絶景を同時に拝むことができる温泉は、そうないだろう。
 
■全国的に貴重な「砂むし風呂」も
 入浴客は各々、海あるいは開聞岳が見やすいベストポジションに陣取り、思い思いの時間を過ごしている。わたしのお気に入りは、海側の湯船のふちに腕を置き、うつぶせになるスタイル。景色をゆっくり楽しめると同時に、潮風が顔に当たって気持ちいい。日が沈む夕暮れどきは、さらなる絶景を楽しめるだろう。
 
 温泉も悪くない。わずかに黄色をおびた透明湯の泉質は、塩化物強塩泉。100℃に達する泉温を下げるため、加水および一部循環しているので源泉の個性は薄まっているが、塩化物泉特有の塩分を感じられるのはうれしい。湯船からはオーバーフローも見られる。塩素の臭いもほぼないので、入浴感はかけ流しに近い。
 
 なお、たまて箱温泉の一帯は、もともと高温の温泉に恵まれた地で、ヘルシーランド内には、砂むし温泉「砂湯里」もある。地熱で温められた砂の中に埋まる砂むし風呂を楽しめる。海に面した天然の砂浜で湯浴みを楽しめるスポットは、全国的にもまれである。
 

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