menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

サービス

75軒目 「新祇園名物の肉割烹」

大久保一彦の“流行る”お店の仕組みづくり

にくの匠 三芳(みよし)
(京都)
 
shikumi75_01.jpg 最近、紹介して喜ばれる店が京都の祇園にある。
 京都というと伝統の和食を想像する人がいるかもしれない。しかし、その店の業態を簡潔に言えば『肉割烹』だ。肉業界にあって京都祇園は、肉割烹という特殊な業態が存在することも有名だ。今日は、その中でも最近、注目されている『三芳』を紹介しよう。
 
 この店を知ったのは、以前紹介した万両の大将と『カハラ』でとある女性と臨席したご縁から始まる。その女性はかなりの食通で、その口調は「焼肉屋なのに『三芳』行ったことがないのはもぐりだ」というニュアンスすらあった。早速、万両の大将と翌月の予約を入れた。
 
 『三芳』はバーテンダーをしていたオーナーが祇園にある自宅を改装してスタートした。現在のスタイルになるまで、いろいろあったようだ。この店のオーナーの良さは、我々のように“肉業界”にどっぷりつかった人間では考えられない斬新さにある。その斬新さは決して奇をてらうことなく、しかし、「そうかこういう方法もあったなぁ」と気づきを与えるものだ。そして、肉の可能性を様々な形で再確認させてくれることだろう。
 
 店に入ると、料理屋らしい雰囲気が漂うカウンターがあり、その印象がとても強く、テーブル席があったことを忘れるくらいだ。そして、バーテンダー出身のオーナーらしく、手元の動きが美しく、そして、お客様との間も絶妙だ。
 
 まず一品目は体をあたためてからと、食感を残した白菜のスープからスタートだ。とても優しく、この後、肉料理がたくさん出るようには思えない。スープをすすっていると、大きな昆布にのったタンをおもむろに取り出し、包丁を入れ始める。否が応にもまな板の上を見入ってしまう。思わず写真を撮ってもいいか尋ねた。
 
shikumi75_02.jpg 手元に名物の“近江牛のタンの昆布〆”が運ばれてきた。細かく刻んだ塩昆布が添えられています。多くの食通を唸らせているこのタンの感動は忘れられない。「熟成させず、新鮮な近江牛のタンを昆布〆にしています」とオーナー。
 
shikumi75_03.jpg タンに合わせて、静岡“初亀酒造” SUPERIOR大吟醸游月(ゆうづき)が提供される。
 
shikumi75_04.jpg 低温熟成酒の中汲み大吟醸を21ヵ月氷温貯蔵清酒鑑評会出品用酒として丁寧に丹精込めて小仕込みで熟成させている。ちなみに、四合瓶で一本16,800円につき、したがって半合で4,000円だった。まあ、そう考えれば安いが…しかし、この酒の凝縮感はすごかった。少し口に含んだだけでボワーンとくる。
 
 薄切りにした近江牛雌牛のサーロインに続いて、今月の蒸し物――聖護院蕪蒸しと続く。中には軽く焼いた自家製の餅の中に牛の角煮が潜んでいて、これがうまい。手が込んでいるのは、二種類の蕪を使っていることだ。
 
shikumi75_05.jpg この蒸し物には、静岡の“正雪”土瓶囲い 純米大吟醸を合わせてくれた。マスカットの香り、私の印象はメロンの香りだ。
 
shikumi75_06.jpg 凌ぎは九条ネギの稲庭うどんだ。九条ネギの食感がいい。上には“(脂)カス”、すなわち、ホルモンがのっている。柚子釜に入った、近江牛内もも、あんぽ柿、白和えが続く。くるみのアクセントだ。
 
shikumi75_07.jpg 今月の焼き物は、テールの西京焼きだ。下仁田ネギに生の胡椒を添えてある。
 
shikumi75_08.jpg そして、クライマックスに向かう。まず、近江牛サーロインのしゃぶしゃぶだ。続いて、ステーキで、信州牛のシャトーブリアン。
 
shikumi75_09.jpg しゃぶしゃぶとステーキが一緒に食べられるのもこの『三芳』の良さだ。ステーキのお酒には、スモーキーさが合うと言うことでサントリーの白州のソーダ割りが供せられた。デザートは白州つながりで、白州をかけた抹茶のアイスだ。
 
shikumi75_10.jpg お会計をしたふたりの印象は「安かった」。そして、「これはいい店を教えてもらった」だ。
 
 牛を一通り楽しめるのに、今までの京都にありがちの肉割烹の「もう、しばらく牛はいい」という後味はない。また、来月も来たいという印象だ。メニューも月替わりであり、上質で繊細な印象。その秘密は、多用されている汁物(料理の汁気)にあるように思う。だしでお腹いっぱいになるが、変な満腹感がない。これがこの店の秘密なのかもしれない。
 今や人気の『三芳』少人数なら21時以降は狙い目だそうだ。東京のジェームズ大久保の紹介と言ってみて欲しい。スペシャルという裏メニューがある。
 
 
にくの匠 三芳
京都府京都市東山区祇園町南側570-15
電話 075-561-2508
→食べログ内ページ

 

74軒目 「奇跡の復活を遂げた30年以上続く老舗」前のページ

76軒目 「札幌ラーメン対決」次のページ

関連記事

  1. 16軒目 「ニューヨーク視察で外せないピザ屋」

  2. 111軒目 「《相模原、多磨エリアの超人気焼肉店》味ん味ん 稲城矢野口店@東京都稲城市矢野口》」

  3. 38軒目 「グループ客にフォーカスする」

最新の経営コラム

  1. 朝礼・会議での「社長の3分間スピーチ」ネタ帳(2024年11月20日号)

  2. 第七十八話 展示会後のフォローで差をつける「工場見学の仕組みづくり」

  3. 第219話 少人数私募債の相続対策

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. マネジメント

    ナンバー2の心得(16) 忠僕にも決断の時あり
  2. 戦略・戦術

    第218話 退職金は、最大4回もらえます
  3. 経済・株式・資産

    第128話 「政令、中南海を出ず」の教訓 ~なぜコロナウイルス肺炎対応の初動が遅...
  4. 不動産

    第14回 広告宣伝費を査定し、宣伝会社の発注は入札制にする事
  5. ブランド

    イメージ戦略の一般論と罠 その8「知識とテクニックにおぼれた勘違い」
keyboard_arrow_up