退職金は、最大4回もらえます
読者のみなさまからは、「えっ?!」と聞こえてきそうですね。
1度目は、従業員から役員になるとき
2度目は、社長を退任するとき
3度目は、取締役を退任するとき
4度目は、亡くなったときの弔慰金
合計4回です。
まず、1度目(従業員から役員になるときに退職金を支払う)は、理解していただきやすいと思います。
従業員から役員になるときは、雇用契約から委任契約になります。
自分で会社をたちあげた創業者、あるいは、入ったときから取締役だった後継者は、この退職金はもらえませんが、最初は、平社員で入って、10年くらいしてから、取締役になったというような後継社長の場合は、平社員から取締役になるタイミングで、退職金がもらえます。
しかし、このタイミングで退職金をもらっていない、という方も結構おられます。
それで、後々、役員退職金をもらうときに、この従業員部分の勤続年数を、退職金の計算に含めたい、とご相談を受けます。
これは、残念ながらできません。
役員退職金の計算は、「役員の在任年数」を基礎として計算します。
ですから、もらえる退職金は、このタイミングでもらっておいていただきたいのです。
どうしても、勤続年数を退職金の計算に含めたい、ということなら、退職金を計算する際に、役員年数そのものを伸ばさずに、功労加算金を増やすということで対応したほうがよいでしょう。
次に2度目(社長を退任するとき)も、理解していただきやすいと思います。
私たちがよくお手伝いさせていただく、役員退職金です。
通常、計算式は、最終月収 × 役員在任年数 × 功績倍率 です。
これに、功労加算金を上乗せする、というパターンです。
この役員年数は、平取締役からの年数です。
そして、このときに時々質問を受けるのが、取締役まで辞めないとだめでしょうか?です。
頭の堅い税理士は、役員退職金を支払う場合は、当然、取締役もおりてください。おりなければ、退職金が否認されます!というのです。
これについては、取締役までおりなくても、退職金は支払えます。
それが、いわゆる“分掌変更(ぶんしょうへんこう)”と言われるもので、
代表取締役社長 → 取締役会長になるなど、代表権をとる(返上する)場合は、退職金を支払ってもOKなのです。
ただし、退職金を受けとる以上は、実質的に退職しないといけません。
このポイントはここでは、省略しますが、これが2回目の退職金です。
私たちICOグループは、これまで50社以上の高額退職金をお手伝いしてきましたが、ほとんどのケースで、取締役のまま退職金をもらっています。
もちろん、その後の税務調査で問題になったことはありません。
そして3度目(取締役を退任するときに退職金を支払う)ですが、これは、少し補足説明が必要となります。
2度目の退職金で、オーナーが、代表取締役社長から、取締役会長になった場合、
このオーナーは、依然として、「取締役」であることに変わりありません。
しがって、この取締役を辞められた場合は、相談役とか、顧問とか、ファウンダーとか、お好きな名前のポジションにつかれます。
そのタイミングで、3度目の退職金となります。
ただし、このタイミングでは、たくさんの退職金は、のぞめません。
2度目の退職金を出したあとに、報酬をぐっと下げて、また、3度目の退職金を計算するときの役員年数は、2度目の退職の時期から、計算されるからです。
例えば、会長報酬50万円社長を降りて、10年経過していた方が、取締役までおりたという場合・・・
50万円×10年×3=1500万円程度が相場です。
もちろん、このタイミングでもらう退職金も、色々なケースがありますが、ひとまず、このような流れになります。
最後の4度目(弔慰金)は、退職金とは、厳密には異なりますが、役員(※従業員でも)が亡くなった場合、家族へ企業側が支払うお金です。
弔慰金は、遺族の生活を保障するための福利厚生です。
弔慰金には、亡くなった方の家族を守る目的のほかに、これまでの会社へ貢献してきたことに対する労いの意味も込められています。会社による金額の差はあるものの、勤続年数が長いほどその額も多くなる傾向にあります。
貢献に対するねぎらい、ということで、退職金と似た性格です。
弔慰金は、相続税の対象にならず、また、会社の福利厚生費として計上もできます。
弔慰金の考え方ですが、
・規定に基づいて受ける場合は、その規定等により判定する
・その他の場合は、地位、功労、類似する事業で同様の地位にある者が受ける額等を勘案して判定する
・給料、賃金、扶養手当、勤務地手当、特殊勤務地手当などの合計額含む
ちなみに、相続税の対象にならないとされるのは、基本的には、業務上の死亡の場合は、年収3年分業務上の死亡でない場合は、年収半年分 です。
以上、オーナー経営者の退職金は、最大4回受け取ることができます。