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- 第65回 『血を繋げる。』(著・鈴木 満)
たとえ成功、目標達成することはできても
成功し続けること、目標達成し続けることは容易ではありません。
先日、プロ野球の巨人が球団ワースト記録を更新する
13連敗を喫しました。
言わずと知れた球界の盟主であり、勝つことを宿命づけられた常勝チーム。
3連覇を達成したのは、ほんの3年前のこと。
わずか3年後に、こんな事態がやってくるとは
一体誰が想像したでしょうか。
サッカーでも、昨年、数々のタイトルを獲得してきた
名門・名古屋グランパスが、まさかの二部降格。
今年はJ2リーグから再起を図っている最中です。
伝統ある名門や強豪であれ、勝てる組織をずっと維持することは難しい。
まして、伝統もない小さな組織が、いい状態を保ち続けることが
いかに難しいのか。
これは、スポーツに限らず、会社やグループ、団体にも共通することだと思います。
しかし、決して恵まれた環境にないにも関わらず、
常に勝ち続けている集団もあります。
たとえば、サッカーの鹿島アントラーズ。
本拠地がある茨城県の鹿嶋市は、
海沿いに位置する、人口7万にも満たない小さな町。
片田舎といっても過言でない環境の中、
なぜ、鹿島アントラーズは強いのか?
Jリーグ発足以来、ずっと常勝チームであり続けられるのか?
そのヒミツが分かるのが本書
『血を繋げる。』
です。
チーム設立当時から強化責任者を務める、
鈴木満氏による初の著作。
正直、これほど濃い内容とは思いもしてませんでした!
Jリーグに参加すること自体が難しい、とまで言われた状態から
世界的な伝説のサッカー選手、ジーコとともに1つ1つチームを作り上げてきた
当初の秘話の数々。
ここには、強い組織づくりのヒントが、山のように詰まっています。
「ジーコが残したものを守り、伝えていくのが我々スタッフの仕事。
継承しようという努力を怠ったら、血は簡単に途絶えてしまう。
ジーコの思想は消えてなくなってしまう。
血を繋ぎ、この体質を守っていきさえすれば、
誰がトップに立っても同じ思想で運営されていく」
この鈴木氏の言葉こそ、鹿島アントラーズの強さそのもののように
思えてなりません。
時を経て、監督や選手が変わっても
鹿島アントラーズの伝統はしっかり受け継がれ、
そして、強さも受け継がれていく。
そのために何が必要で、どんなことをしているのかが
非常に具体的に書かれていて、目を見張ります。
一体感のある組織運営、人材獲得や育成に関することなど、
どれもビジネスに参考になることばかり。
チームのスローガンである
「献身、誠実、尊重」
も、まるで社是のようですし、
大きく頷いたり、目からウロコの事柄も多いはず。
経営者やリーダー必読の見逃せない一冊です!
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は
『ブラームス:交響曲第1番&第2番&第3番&第4番』
(指揮:カラヤン 演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団)
です。
歴史と伝統あるオーケストラが受け継ぐ音と魂。
カラヤン指揮によるブラームス交響曲の名演とともに
合せてお楽しみいただければ幸いです。
では、また次回。