今年の最後を飾るのにふさわしいのが、刺激的なこの一冊。
『2028年 街から書店が消える日』(著:小島俊一)
です。
小説ではなく、ノンフィクションです。
現実に起きる話として、書店の現状がリアルに描かれています。
著者は、取次大手トーハンの営業部長等を経て、経営不振に陥っていた愛媛県松山市の明屋書店の代表取締役に就任。
正社員を一人もリストラすることなく、わずか2年半でV字回復させた実績を持ちます。
書店の数が減った、売り上げが落ちた、といった話をたびたび耳にするかと思いますが、一体どれくらい下がったのか?
本書によると、紙の出版物の売り上げは、1996年の2兆6564億円をピークに下がり続け、2022年はその半分の1兆1292億円に。
書店の数もピーク時の25,000店から2022年には半分以下の11,000店(売り場を構える図書カードリーダー設置点は7530店)までにも減ってしまったという。
2022年9月時点で全国の1,741地方自治体の中で26%にあたる456市町村は書店のない自治体となっている。
そして、地方書店の売り上げを支える教科書が、2028年にデジタル教科書の導入が本格化することで、
これまでのような売り上げが見込めなくなるのは必然。
このままなら2028年までには大半の書店は日本から消えてなくなる、というのが著者の予測であります。
では、悲観的な話だけが書かれているかと言えば、そうではありません。
本書では、書店や出版界が抱える構造的な問題を指摘することはもちろん、どうすれば改善が期待できるかを具体的に記述。
書店経営者を中心とした30人のインタビューによって、このご時世でも順調に業績を伸ばしている書店の成功理由や、未来に残り続ける書店の姿もが見えてくる構成になっています。
本書に赤裸々につづられている問題、課題は、書店業界、出版業界ならではのものも当然ありますが、
経営者、リーダーにとって他人事とは思えない内容も必ずやあるはず。
今の現状を見つめ直し、未来に向けての一歩を踏み出すのに、この上なき一冊と言えます。
この年末年始、じっくり読んでみてください。
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は、
『ワーグナー:序曲&前奏曲集』
(指揮:アンドレス・オロスコ=エストラーダ、演奏:フランクフルト放送交響楽団)
です。
先日来日してNHK交響楽団と初共演した新時代の指揮者オロスコ=エストラーダ。
当日演奏されたワーグナーの《タンホイザー》序曲も収録されたこのCD、本書と合わせてお楽しみいただければ幸いです。
では、また次回。