一見すると、ビジネスにも経営にも関係なさそうであるにも関わらず、
驚くほど多くを得られる本があります。
今回紹介する
『スポーツは人生に必要ですか』(著:森林貴彦、為末大)
も、そんな一冊。
2023年夏の甲子園で慶應高校野球部を全国優勝に導き、
大旋風を巻き起こした監督の森林貴彦氏と、
五輪に三度出場した元陸上競技選手の為末大氏の熱き対談。
“組織”のスペシャリストである森林氏と、
“個”のスペシャリストの為末氏が、両者の立場、視点から話が展開し、
それぞれが単独で語る以上の化学反応が生まれています。
組織を育て、引っ張ること、そして、同時に強い個を育てていくことは、
まさに企業経営にそっくり当てはまる、といっても過言ではありません。
従来型の指導が即パワハラやコンプライアンス違反となりかねない今日、
指導者はどのように組織を育て、部下や弟子を育てていけばよいか?
手軽に読める新書でありながらも、両氏の対話には、
組織運営やリーダーシップに関する重要な示唆が、専門書以上に多く含まれています。
たとえば、
●二・六・二の法則の活かし方
●「主体性」は内発的動機と外発的動機のバランスで育つ
●「スランプ」を乗り越える方法
●成長には「踊り場」がある
●「異なる価値観」による自己変革
●フィードバック文化を醸成する
●「メンタルモデル」の違いを理解する
●「結果だけ」で判断しない
といったあたりの内容は、両氏の実際の失敗&成功体験に基づくものであり、
非常にリアルでわかりやすい。どこをどう工夫すればよいか、
具体的なヒントとして大きく役立つはずです。
個人的には、指導者は「中動態」(能動でも受動でもない状態)を意識するべき、
というところに、とても共感しました。
これからのリーダーには何が必要か?
より高みに導くためのエッセンスがぎっしり詰まったこの一冊、
ぜひ読んでみてください。
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は、
『DREAM BOX』(演奏:パット・メセニー)です。
ジャズ・フュージョン音楽界のレジェンド、パット・メセニーのギターソロ作品集。
グループのリーダーとしても、ソロとしても持ち味を発揮し続け、
70歳を超えてもチャレンジを続けるメセニーは、本書の著者と通じるものを感じます。
本書と合わせてお楽しみいただければ幸いです。
では、また次回。