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経済・株式・資産

第112回「まさに禍を転じて福と為す好事例」寿スピリッツ

深読み企業分析

寿スピリッツ(2222)の2023年3月期第3四半期累計決算は54.3%増収、営業利益は8.0倍となった。コロナ規制が段階的に解除されていることから、前年同期比で大幅な増収増益は当たり前であると言えば言えるのだが、そうではなくコロナ前との比較においても、特に直近3カ月の数値は驚嘆すべきものであった。

まず、コロナ前の絶好調時との比較を見ると、第2四半期までの累計値で売上は10.2%減、営業利益は19.6%減と依然回復はしたものの完全復活にはもうしばらくかかるという感じであった。しかし、同様に第3四半期累計値で計算すると、売上高は0.9%減ながら営業利益は10.8%増となっている。当然ながら第3四半期3カ月の業績にはすさまじいものがあり、前年同期比では39.3%増収、76.7%営業増益であるのは当然として、コロナ直前で同社業績の四半期のピークであった2020年3月期第3四半期との比較で、なんと14.9%増収、50.7%営業増益となっているのである。

これはかなり想像を絶するものである。まず、前年同期のコロナ感染者数の1日辺り平均値はわずか306人と極めて低水準であった。一方、今期の平均値は86,178人と第2四半期比では33.4%の減少とは言うものの、前年同期比では爆発的に増えた水準であった。それゆえ、国民が慎重に行動するのではないかとも考えられたわけである。

しかし、同社ビジネスから見た場合には、すでに四半期ベースで過去最高益であったコロナ禍直前の2020年3月期第3四半期(2019.10-12月)の水準を15%も上回る売上を達成し、営業利益では50%も上回っているのである。そのためコロナ感染者数の推移から見ても、当面はこの水準の売上、利益を達成する可能性が高いものと考えられよう。

会社側ではこの第3四半期決算を踏まえて、第2四半期決算時に期初計画を増額修正した水準をさらに増額修正としている。直前予想は33.3%増収、営業利益4.4倍に対して、H&Lリサーチでは37.7%増収、営業利益5.1倍としていたが、会社側では今回44.1%増収、営業利益を5.7倍へと増額修正した。しかし、第4四半期予想に関しては依然かなり堅めと考え、H&Lリサーチでは今回、54.5%増収、営業利益は6.9倍の97億円とした。これは過去最高益を大幅に更新するものとなる。

さらに、この第3四半期、第4四半期並みの急回復は来年度の上期までは継続し、その後は10%増収、15%営業増益程度の安定成長軌道に回帰すると見て、来期も23.5%増収、44.2%営業増益と大幅な利益拡大が続くとした。

なお、このような驚異的な業績となる背景は、もともとギフトスイーツ市場では圧倒的な存在感を示していた同社ではあるが、コロナの逆風下でさらにその存在感が高まったことである。ギフトスイーツ市場は大半が中小企業であり、コロナ下においてまさに守りの経営をせざるを得なかった。それに対して同社は、駅ビル、駅地下、空港などにおいて一等地を確保すべく、新たなブランドを次々立ち上げたことで、コロナ前比でより一層存在感を高めることに成功したものである。

有賀の眼

コロナと言う少なくともこの数十年間を取れば未曽有の事態によって、経済、社会が大混乱に陥った。しかし、まさにこんな時にこそ、本当の意味での経営力が問われ、そしてそれに対して同社は期待以上に応えることができた好事例ではないかと思われる。同社とて最初から今の好調が見通せていたわけではない。当初は、まさに倒産まで頭をよぎったと述べているほどである。そういった危機だからこそ、不退転の決意を秘めて、生き残るために邁進した結果であろう。

まさに、ピンチはチャンス。こんな時にこそ経営者は本領を発揮する時が来たと、腹を据える覚悟が必要だと思えるのである。

 

 

 

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