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社長業

第14回「人生100年時代」の経営

繁栄への着眼点 牟田太陽

 「コネクト」が、確実にキーワードとなってくる。 「人生100年時代」とはニュース、雑誌など何度も見る言葉である。世界で長寿化が急激に進んでいる。100歳以上の人口推移を日本だけで見ても平成元年に約5,000人であったのが、平成30年には約70,000人まで増加している。
 このままいけば先進国では、2007年生まれの2人に1人が100歳を超えて生きるといわれる。これが、「人生100年時代」と言われる所以だ。そこで重要なのが、これまでとは異なる新しい人生設計が必要になるということだ。
「20年学び、40年働き、20年休む」人生を大きく分けて、この3段階であったのが、4段階になるので多様化されるという。これはあくまで一般的な考え方だ。 私は、社長対象に物を書いたり話したりしているので、さらに細かく5段階に分けることにしている。 「0歳から20歳は知識の修行」「21歳から40歳は感性の修行」「41歳から60歳は人生を知る」「61歳から80歳は次代の育成」「81歳から100歳は次代に継いでいく」この5段階だ。
 その「人生100年時代」において不可欠なのが「コネクト」だ。全てのモノが繋がっていて、尚且つ「シンプル」でなくてはいけない。新型コロナウィルス感染拡大期においての台湾の対策は素晴らしかった。
 日本でも台湾でもマスク不足は同じであったが、そこからの対応は天と地ほど差がある。台湾では、当初政府がマスクを買い上げ、コンビニエンスストアを通じて一人につきマスク3枚と制限販売した。それでもマスク不足は解消されず、国民の不満は続いた。そこで台湾政府は、全国にある健康保険特約薬局で保険証を提示して購入するという実名購入に踏み切った。保険証1枚につきマスク3枚まで、一度購入すると一週間再購入は出来ないという仕組みだ。 しかも、薬局に人が押し寄せることを予期して、国民身分証(日本のマイナンバーに相当)の下一桁が奇数の人の何曜日、偶数の人は何曜日と販売日を分けたことによって解消されたのだ。この判断、スピード対応が日本に欠けるものである。マイナンバーは日本にも導入されているが、他国の表面だけ捉えて導入するので形ばかりで実がない。これは全てにおいていえる。働き方改革しかり。キャッシュレスしかり。どれも場当たり的で複雑である。「コネクト」「シンプル」とはかけ離れていて、「人生100年時代」のモノではない。 「人生100年時代」は、雇用も大きく変わる。
 定年延長、再雇用はこれからも増え続けるだろう。ただし人間一人ひとり個体差はある。
 「商品でも、企業でも、すべてにおいて成長曲線はある」とはいつも講演などで言っているが、人も当然同じだ。
 にもかかわらず、自分の成長曲線の全体像は考えている人は少ない。意外なほど自分の目の前しか見ていない。自分の目で見える範囲しか気にしない。視野が狭い。だからウィルスという目に見えないモノが自分の生活空間に現れると、必要以上にパニックになる人がいるのかもしれない。そんな人が周りに必ずいるはずだ。
 重要なのは、目線をもっともっと先に持つことだ。大きい流れの中で起きる様々な出来事を、偶然ではなく必然と捉えられるかどうか。それを冷静に判断して行動していく人であれば、会社としても永くいてほしいものだろう。難しことだが。
 全てのことには意味がある。「人生100年時代」において、人の受け皿である会社も永く永く生きていく必要がある。
 自社を取り巻く経営環境の変化は決して偶然ではない。いろんな要因が重なり合って起きる必然である。それを社長がどう捉えるかで自社の将来も決まる。まずは、大局的な視点で捉え、そして局地的な視点で行動する癖をつけてほしい。
※本コラムは2020年5月の繁栄への着眼点を掲載したものです。

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