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社長業

第13回 自ら風をつくる社長になる

繁栄への着眼点 牟田太陽

 「全国経営者セミナーの控室での話だ。中谷彰宏先生から興味深い話を聴いた。
 「『空気を読む』とは言うけど、社長が空気を読んでいては遅い。これからの時代は、自ら空気をつくり出していかないと時代に飲み込まれてしまう」と言う。私も同感だ。
 「空気」や「風」には色々な役割がある。
 私が日本経営合理化協会に入協して間もない頃聴いた話だ。あるビルを建設した時に、エントランスの吹き抜けに竹林をつくった。ビルに入ってくる誰もが脚を止めるほど竹林は立派なものだった。
 しかしながら、数か月も経たないうちに竹林は枯れてしまった。何度も何度も竹を植え直した。それでも竹は枯れてしまう。土、水、光が植物にとって欠かせない要素であることは小学生でも知っている。それを十分に満たしていても枯れてしまう。とうとう専門家にアドバイスをもらうこととなった。
 「風ですね」専門家は、竹林を見るなり言った。
 ビルのエントランスの吹き抜けという空間。「全く風の起きない環境では根が育たない。いくら土や、水や、光があってもこれでは枯れてしまう」と言うのだ。風が葉を揺らし、竹全体をしならせるからこそ、しっかりとした根が育つのだ。それから工夫を重ね定期的に葉に風を当てるようにした。竹林は枯れることなく、いまでも入館する人たちの目を楽しませている。
 組織でも同じことだ。
 波風もないような環境で育ってきた組織が強い組織になるかといえば、私はそうは思わない。むしろ逆だろう。「まさかの坂」が目の前に現れたとき、そんな温室で育ったような組織が対応できるとは思えない。強い組織をつくるためには、多少の風は不可欠なのだ。
 また社長であるならば、自ら社内で風を起こしていかなければならない。常に新しい風を吹き込む努力をしてほしい。
 いろんな会社の組織を見ているが、どこの会社も大体50代より上か下かで組織は分かれる。それはバブルを体験しているかいないかの差だ。ここには断層にも近い決定的な差がある。
 皆さんの会社の50代社員は、社内的に給与が高めではないだろうか。 最前線で働いている30代社員と給与の差がないだろうか。にもかかわらず、給与が高いベテランといわれる社員ほど変化を嫌ったり、新しいことを拒んだりしてはいないか。それではいけない。組織という竹林の中で、若い竹は枯れてしまうだろう。
 これからの組織は、まず20代、30代の若い社員の意見を潰すことなく前向きに議論できる空気を社内につくらなければならない。その若い社員たちに次の時代の価値を考えてもらう。その価値が実現可能かどうか見極め、バックアップしていくことがベテラン社員の仕事だ。誰もが変化は怖いし、新しいことは勇気がいることだ。その風は社長が起こしてやらなければ社員から動くことは決してない。
 社内で吹く風は、最初は小さいかもしれない。しかし、社長が先頭に立ち、やり続けることで必ず続く者は出てくる。そうすれば社内で吹く風は次第に大きくなるだろう。それが誰の目にも明らかに見えるようになれば、その風を人は、「社風」という。
 社長は、空気の流れに沿って動いていてはいけない。自分で空気の流れをつくり出すくらいになってほしい。
※本コラムは2020年4月の繁栄への着眼点を掲載したものです。

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