債務を全額支払えない状態で会社が倒産すれば、当然のようにその保証人である社長も破たんする。
会社倒産後は社長の個人信用情報に異動情報という傷がつき、社長は借入れやクレジットの使用ができなくなる。
そんなふうに思われているが、じつはこれは間違いなのだ。
正確に書くと、社長が会社の連帯保証人であったとしても、債務・借入れの状態や社長個人の債務の状態によって社長が無傷ということもありえるのだ。
では、どんな場合に個人信用情報に傷がつき、どんな場合に傷がつかないのかを書いてみようと思うが、これを詳細に書けば本の1~2章ができあがるほどの分量になるので、いくつかの事例で話を進めていくことにします。
まず、会社が倒産して債務が支払えなくなったとすると、その債務の債務者と保証人に支払いの督促がされる。
これでも支払いがされない場合は期限の利益喪失となる。期限の利益喪失になるのは債務者と保証人だから当然、個人である保証人はブラック(異動情報)になると思われている。
しかし、債権者がKSC、CIC、JICCといった信用情報機関の登録機関に加盟していなければ個人信用情報を登録できないのでブラックになることはありえない。
仮に、ある大阪の会社A社が倒産して、返済できなくなった債務が信用保証協会付の借入れだけで、かつ、連帯保証人の社長の負債がまったくなかった場合、銀行の債務のほとんどが代位弁済で信用保証協会のものとなる。
2014年8月現在、山口県・東京都・名古屋市・愛知県以外で信用情報機関の登録機関に加盟している保証協会はないので、融資していた銀行が個人信用情報登録で保証債務の延滞を登録しなければ、そのまま社長個人はブラックにならずにすむこともできる。社長は今までどおりクレジットカードを使うことも可能なのだ。
もっとも、だからといってその社長が経営する別会社で新たな借入れを他の金融機関でしようと思っても、一般的には問題がある。これをするにはある程度の下準備とテクニックが必要になる。さらに融資している銀行の保証債務の信用情報機関の登録は銀行によって対応がまちまちなのだ。
じっさいに数億円の負債を背負って倒産したが、社長の個人信用情報に傷がつかなかった例もいくつも見ている。
前記と同様の事例で、社長が保証して信用保証協会付融資を借りていた銀行に社長個人の別会社保証のカードローンがあり、残額が100万円だったとしよう。
会社の融資が延滞して、このカードローンを全額返済したいと100万円と利息をもって銀行に行った場合、信用保証協会にすでに事故届けがだされているならその全額返済は認められず、結果としてそのおカネは会社融資の返済に充当される。
このカードローンの残債を返済できる資金があったとしても銀行が同じなら、会社債務延滞時なら会社債務の返済優先とされるため、カードローンは延滞させられ、主債務者である社長の個人情報には必ず傷がつく。
このカードローンが他のD銀行のものであった場合は、保証協会付融資を借りていた銀行から代位弁済がされて、信用保証協会から預金の差押がD銀行とかにこなければ無傷のままという可能性もある。
債務を全額支払えない状態で会社が倒産して、その保証人である社長の個人信用情報に傷をつけたくないなら経営が正常のときから、個人の資産形成も含めて、準備しておく必要がある。このことを理解していないと悲惨な結果にみまわれる。