※本コラムは2023年12月の繁栄への着眼点を掲載したものです。
先日、私の無門塾でこのような質問を受けた。
「先ほど価格戦略の話をされましたが、(保険治療で)料金がもう決まってしまっている場合、どうやって利益を出していけば良いのでしょうか。同業の知り合いが困っているのですが」という質問だった。
質問をしてきた方は、歯科医をやっていて先月新しい医院をオープンさせたばかりだ。発表会にも何度も参加したが、いまからは想像もできないほど若い頃は大変苦労をされた。その苦労話を最初に聞いたときは驚かされた。
その方の転機が訪れたのは、仕事をしながらアメリカへ留学をしてからだった。
「大事な歯を何とかして抜かずに治療できないものか」社員に背中を押されて、ペンシルベニア州にて顕微鏡治療の技術を学び資格を取得して戻ってきた。
日本においてその資格を持っている歯科医は数人しかいないという。普通の歯科医院では虫歯治療を行っても9割再発するらしいが、ここの治療法では再発率はほぼゼロだ。「ウチではこの歯の治療はできないから、ここの医院に行くと良い」と同業から紹介で患者さんが来る。予約は1ヶ月以上先までうまっている。
海外などは自由診療の幅が広く、高額な治療費が請求されることがあるが、日本においては医療保険制度が幅広く、勝手に値段を自分で決められない。皆横並びで、そういった業種には価格戦略など無理ではと言うのだ。
考えてみてほしい。自分で値段が決められない業種など世の中には山ほどある。
よく利用する「コンビニエンスストア」「スーパーマーケット」などはどうだろうか。ほぼ商品は横並びだ。仕入れたものをほぼそのまま販売している。オリジナル商品と言えば、お弁当、お惣菜だ。これらが稼ぎ頭で、自分で料金が決められるが、全て数百円の世界だ。
それでも、世の中には儲かっている店舗と、儲かってない店舗に割れる。皆さんのよく行くコンビニも、昔からずっとある店舗と、新しく出来たけど直ぐに無くなってしまう店舗とあるだろう。この差はいったい何処から来るのか。それは、立地と人の差であることがほとんどだ。
歯科医院だって、病院だって、接骨院だって同じだ。
「高齢化が進んでいるのでこれから病院は儲かるだろう」というのは浅い考えで、誰だって腕の良い医院に診てもらいたいのは当たり前のことだ。儲かっている医院、儲かっていない医院に二極化される。
実は、歯科医院も、病院も、接骨院も一度来た患者が、再診察に来ないことが多い。一度来た患者さんが二度目に来ないというのはそれだけで会社の安定は成り立たない。
再診察に来ない理由は、「友人からの紹介で違う医院に替えてしまった」「技術的に不満があった」というのがまず考えられる。
しかし、一番多い理由は、「対応の悪さ」ではないか。皆さんも経験あるはずだ。自分たちがサービス業という感覚が未だにない医院が多い。だったらここにメスを入れればいいではないか。
サービスの教育を徹底していけば変わるはずだ。そうしたら「友人からの紹介で違う医院に替えた」という人が多いのであれば、患者さんが患者さんを連れてきてくれる。
料金が自分で決められないという医院も増客だってできるのだ。それをやれるかどうかを決めるのは常に自分たちだ。
※本コラムは2023年12月の繁栄への着眼点を掲載したものです。