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社長業

第56回 「家族主義」という言葉の変遷

繁栄への着眼点 牟田太陽

※本コラムは2024年2月の繁栄への着眼点を掲載したものです。

 「家族主義」という言葉は、「家族のような関係性」をもって働くという社風である。「家族主義」「家族経営」言葉通り実際に家族からスタートし、いまでも社内に親族が多い会社もある。それは特に問題はない。実際に良い会社も多い。

 昭和から平成にかけてよく使われてきた言葉だ。一見温かみも感じる表現ではあるが、令和に入り6年、今の若者は、「家族主義」という言葉に対して良い印象を抱いているのかと疑問に思う。

 「ブラック企業」などという言葉が出てきて以降、「家族主義」という言葉に対してのイメージも変わりつつあるのではないか。ともすれば、良い印象を抱いているのは、経営者側の人間だけなのではないか。

 「家族主義」という言葉を隠れ蓑にサービス残業を強いる会社が一部であったり、それがあたかも大多数の会社がやっているかのようにマスコミによって取り上げられたり、「家族主義」が悪いことのように警戒されるようになったのではと強く感じる。

 誤解のないよう言っておくが、「家族主義」を謳う会社を否定しているわけではない。

 しかし、どこまでいっても結局は、「社員は家族ではない」ということを認識はしておかなければいけない。

 日本経営合理化協会も設立当初から、「家族主義」を謳い長く長く経営をやってきた。

 2003年新春全国経営者セミナーの時だ。招聘していた故ゴルバチョフ氏が、突然開催2日前に来れなくなった。担当の熊谷の心境を考えると心臓を掴まれるような思いだったはずだ。

 その時、出社した牟田 學は、熊谷のもとに脱兎のごとく走り寄ると責めることもなく、「熊ちゃん身体は大丈夫か」と熊谷の身を案じた。20年以上経つが、熊谷が牟田 學のことを紹介するときは今でもこの逸話を話す。

 家族のように大切な社員に度を超えるような暴言を吐いたりする人には、たとえお客様であっても毅然とした対応をしてきた。それは今も変わらない。ただ、「家族主義」という言葉は、社内外に対してあまり使わなくなった。

 わざわざ言葉にして謳う必要もなく、社長の心の中だけにしまっておけばいいと私は思う。常日頃からそう思っているのであれば、前述の牟田 學のように咄嗟の行動で出るはずだ。それを聞いた社員が何も感じないはずがない。

 社員は家族ではないし、ましてや奴隷でも駒でもない。雇用を通じて繋がった、大切な会社の資産だ。その社員に、「成長意欲」「達成感」をいかに与えるか。

 そうすることによって、資産価値を高めることが、社長の最大の仕事であり責務である。その結果として企業価値が高まり、将来の繁栄に繋がるのである。

※本コラムは2024年2月の繁栄への着眼点を掲載したものです。


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