◆漫楽園◆
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同店の前身は、今から16年前にオープンした東京初の漫画喫茶。純喫茶を居抜きで使ったというその店は、パソコンを置いてない昔ながらのスタイルの漫画喫茶だ。店の老朽化、客の高齢化、さらにネットカフェの台頭で売上は年々減少していた。ところが、『漫楽園』に変わってから、売上は115%、120%とジワジワと上りはじめた。また、客数も1日90数人からから120人以上に増加した。今年も客数は依然伸びている。
すでに、多くの人は「漫画喫茶」と言えば、『ネットカフェ』を思い浮かべるようになった。『ネットカフェ』の特色は、個室、24時間営業、映画、音楽、ゲームなどネット環境の充実、シャワー完備、宿泊可能…。実に多様なサービスが整っている。
「つまり、ネットカフェにとって、漫画は単なるオプションの一つに過ぎないわけです」と『漫楽園』のオーナーの西川嘉津美さん。それでは、「漫画喫茶」とは何だろうか。西川さんは、それを考え続け、最終的に「漫画と喫茶の楽しさを創造すること」を愚直に追求した店づくりをすることにした。
漫画については、まず、入り口近くにディスプレイ台を置き、漫画好きのアルバイトと相談しながら、例えば『ガロ』系のマニアックな漫画を飾ったり、書店には売っていないミニコミ誌を並べたりした。また、西川さんは沖縄好きだったので、琉球新報で連載している4コマ漫画をはじめ、沖縄の新聞社や出版社が発行した作品を集めたり、沖縄の漫画だけを配信しているケータイサイト「コミックチャンプル」、着メロサイト「ちゅらサウンド」と提携したりして、夏には沖縄フェアを開催するようになった。
また、神保町という場所柄、人がほとんどいない夜の時間帯は、喫茶店という広いスペースを利用して、漫画家のトークショーなども開催するようになった。漫画の品揃えに特徴が出れば、文化的な雰囲気になり、有名漫画家も、一種の漫画振興として協力してくれるようになるわけだ。漫画にちなんだ軽食を出す「マンガメシ」といったユニークな企画を次々に打ち出すことで、漫画好きの客の間に『漫楽園』の知名度は広がっていった。現在では、漫画関連のイベントの貸し会場としても利用されるようになった。その後、西川氏は企画を請け負う任意団体「Asia’n Complex Production」http://acproduction.org/を設立し、漫画・イラストを通じた様々なイベント企画・運営なども手がけるようになった。
運営内容についても、幾つかの変更を加えた。まず、飲み物については、前店舗時代から飲み放題で価格は1時間400円だった。格安コーヒー店がある時代、この価格では喫茶目当ての客を呼び込むのは難しい。そこで、料金体系を15分100円~に改めた。さらに、今年からコーヒーのグレードを大幅にあげた。喫茶店と遜色のない味にしたことで、朝の一服、朝の一杯など喫茶店としての利用客も急増したという。飲食店の許可が取れ次第、ビールも出す予定だ。それによって、さらに客は増えることが期待できそうだ。
同店の業績は、「漫画」と「喫茶」という『漫画喫茶』の原点に戻り、また、店主やスタッフの個性が反映される個店の強みを活かしたことで好転しはじめた。同様に、原点を見つめ直すことによって復活しそうな業種は沢山ありそうだ。(カデナクリエイト/竹内三保子)
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