
前回、「コミュニケーションの大事な要素である言葉と表情」についてお話をしました。今回は「言い換えのポイント」についてお話します。
「言い換えのポイント」という活字をご覧になって一瞬どういうこと?と思われたかも知れません。答えは『相手の反応をよく見極めて、相手に合わせた選択を、リスペクトを持って使う』がポイントです。それには「相手が気持ちよく受けとれる言葉の弾を多く持つ」必要があります。まず正しい言葉遣いのマスターは、マストです。敬語の尊敬語・謙譲語の使い分けはすでに皆さんご存じですから、ここでは紙面の都合上割愛いたします。ただ分かっているつもりでも、皆さんが時に現場で間違えてしまう二点について触れておきます。
一点目。社内で先輩以上の方と話すときは尊敬語を使うのは当然です。そこにお客様が登場なさると、自社の先輩以上の方や先輩以上の方の話題については、即謙譲語に変えるのが正しいです。うっかり尊敬語を使わないようにしっかり気を付けます。言葉遣いが間違っているというクレームを受けたり、あるいは社格を下げてしまいます。
【例文】
・(〇)社内の方に「○○部長(あるいは部長)は只今会議中です。」※「役職名」にはすでに敬意が含まれています。
・(×)社外の方に向けて「○○部長は只今会議中です」※社外の方には「部長の○○(あるいは○○)は只今会議中です」が正しい言葉遣いです。
二点目。「お~なる」の尊敬パターンと「お~する」の謙譲パターンの違いを正しく理解しましょう。
【例文】
・「お~なる」の尊敬パターン
「こちらにお掛けになってください。」/「ひざ掛けをお使いになりますか?」など。
・「お~する」の謙譲パターン
「○○様、タクシーをお呼びしました。5分ほどで来るそうです」/「○○様、お嬢様のご入学をお聞きしました。おめでとうございます!」など。
この二つのパターンを正しく理解できていると、お客様に「○○様、△△についてお聞きしましたか」や「○○様は編み物をするのですね」などとおっしゃることはありません。
では、今回の本題に入ります。前述した「弾の数を持つ」に有効なのは、接遇用語のマスターです。接遇用語は接客用語よりさらに丁寧で、相手にリスペクトも伝えられます。また日常生活においても相手に好印象を与え、良好な人間関係を保つのにも役立ちます。その意味から基本的な接遇用語への言い換えを覚えましょう。
※「→」の下の四角に覚えたらレ点を付け、ご自分の弾の数を視覚化します。
・ぼく、わたし→□わたくし
・わたしたち→□わたくしども
・自分の会社→□当社(話し言葉)、弊社(書き言葉)/相手の会社→□御社(話し言葉)、□貴社(書き言葉)
・相手→□あなた様、□ご本人様・□そちら様
・第三者→□どなた様、□どちら様、□あちらの方、□男の方、□女の方
・夫/妻→□旦那様、□ご主人様/□奥様
・同伴者→□お連れ様、□お連れの方
・子ども→□ご子息、□ご令息/□お嬢様、□ご令嬢/□お子様
・一昨日(おととい)/昨日(きのう)/今日(きょう)/明日(あした)/明後日(あさって)→□一昨日(いっさくじつ)/□昨日(さくじつ)/□本日(ほんじつ)/□明日(みょうにち)/□明後日(みょうごにち)
・去年/今年→□昨年(さくねん)/□本年(ほんねん)
・あっち/こっち/そっち/どっち→□あちら/□こちら/□そちら/□どちら
・できません→□できかねます/□致しかねます
・ええ、そうですが→□はい、さようでございます
・そうですか→□さようでございますか
・すみませんが→□申し訳ございませんが
・ちょっと待ってください→□少々お待ちになってください
・今、席にいません→□只今席をはずしております
・伝えます→□申し伝えます
・参りませんか→□いらっしゃいませんか
・はい、います→□はい、おります
・どんなことですか→□どのようなご用件でしょうか
・○○さんですか→□○○様でいらっしゃいますか
・○○様のお宅ですか→□○○様のお宅でございます
・知っています→□存じております(事)/
□存じ上げております(人)
・知りません→□存じません/□存じておりません
・~と思います→~□と存じます
・後から知らせます→□後ほどお知らせいたします
・何とかしてもらえませんか→□ご配慮願えませんでしょうか
・もし都合がよかったら→□もしご都合がよろしければ
・すぐ行きます→□すぐ(只今)参ります
・いつでもいいから来てください→□いつでも結構ですので、いらっしゃってください
・待っています→□お待ちしております
・わかりました→□かしこまりました/□承知いたしました
・面倒かもしれませんが→□お手数ですが
・どうですか→□いかがでしょうか
・そのとおりです→□ごもっともでございます/□さようでございます
・いいでしょうか→□差し支えございませんか/□よろしゅうございますか
・一応→□念のため
・残念ですが→□あいにくですが
・お久しぶりです→□ご無沙汰いたしております
・ご理解いただけましたでしょうか→□説明不足のところはございませんか
・とんでもないです→□とんでもないことです
以上は、基本的な接遇用語のほんの一例です。接遇用語の財産を増やすために、ご自分でも是非お調べください。
あなたがもし指導者のお立場であれば、上級編として、使う頻度の高そうな言い換えセンテンスをいくつか紹介します。答えは一つではありませんので各々でもお考えください。
・仕事は上手くいっている?→□「○○さん、最近仕事はどう?」
・こんなこと言いたくないけれど→□「気になっているので伝えますね」
・皆も頑張っているわよ→□「○○さん、よく頑張っているわね!」
・それは違うでしょ→□「そうしたいのは、どういう思いなの?」
・失敗しないでね→□「いつもの調子でね」
・このくらいの仕事ならできるでしょ→□「この仕事、○○さんにお願いしたいです」
・なぜそういうミスをしたの?→□どうしたらそのミスを防げたと思う?」
・だからいったでしょ!→□「次からは気をつけようね」
いかがでしょうか?伝えたい熱意が勝ってしまうと、その言葉を受け取る側の気持ちを推し量るのが疎かになってしまうことが、ままあります。そこを瞬間思いとどまり、頭の中で高速に「言い換えセンテンス」を絞りだしましょう。人に言われて嬉しかった言葉の貯金もメモしておくと役立ちます。
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