【意味】
志を達成するには、実現できなかった場合の恥ずかしさを自覚することが大切である。
【解説】
古来「志」に関する言葉は多いのですが、その大半は
「正しい志を持つ こと」
「実現のための強い気持ちを持つこと」
の二点、いわゆる立志に関するものがほどんどです。
正しい志と強い気持ちの大切さは誰でも解りますが、いつの間にか挫折してしまうのが人間の弱さです。
当初の志をどのように持ち続けるかが肝腎ですが、掲句は『志の持続方法』の一つです。
私事ですが、48才の歳に「一般旅行業務取扱主任者試験※」を受験する羽目になりました。
年齢を考えますと気力や記憶力に不安があり、単なる受験作戦だけでは合格できないと思いましたので、
「羞恥心による立志継続法」を活用しました。
受験申込書を拡大コピーし、「不合格では学生に恥ずかしくないか?」と朱書きをし て自宅の各所に張り出しました。
お陰で気力の衰えを克服した充実の2ヶ月間でした。
もう一つの『志の持続方法』に「100万回発心口述法」があります。
曹洞宗の開祖の道元禅師に「一発菩提心を百万千万回も起こすべきなり」という名言がありますが、
この名言の教えを基にしたものです。
「一発菩提心」とは、僧侶になろうとする際の心構えです。
具体的には、仏道修行に より仏力を会得し、その仏力を以て悩める大衆を導きたいとする衆生済度の志です。
この志を出家の発心といいますが、出家の発心を百万回千万回も繰り返すことによって強い志を持ち続けよという教えです。
縁日で買ってもらった風船と同じように、発心のヤル気という空気を注入しなければしぼんでしまうからです。
道元禅は綿密禅ともいわれ、禅師は修業の権化のような人です。
だから一度決意をし たならば、後は淡々と志に向かって修行のできる宗教的天才と思っていました。
しかし、この名言は天才禅師も我々凡人と大差はなく、放置すれば
弱まる志を百万回千万回と繰り返して心に刻み付けていたことになります。
つまり「天才と凡人は才能の優劣にあるのでなく、志の繰り返し回数の差」となります。
これが 「100万回発心口述法による立志継続法」です。
実際には100万回は大変と思われますが、歩く歩調に合わせて口述していますとか なりの回数になります。
そして回数が重なるにしたがって自分の心が整備され、無理なく志の実現に向かって努力できるようになります。
私どもの学校では難関資格を数多く扱っていますが、受験生の合否の分かれ目は、能力や努力よりも、
むしろそれら以前の立志の持続力の工夫ができるかどうかに係っています。
企業の事業計画においてもしばしば「初志貫徹」というような
勇ましい賭け声が先立 ちますが、勇ましさだけで物事は成就しません。
どの企業にも定款に事業目的が掲げられていますから、
それを繰返し確認することが、「100万回発心口述法」に通じるものと考えます。
※一般旅行業務取扱主任者試験
・現在の総合旅行業務取扱管理者試験という国家資格。
旅行者のニーズに合った旅行を提供するため、企画やセールス、添乗までをトータルプロデュースする専門資格。
国内限定の国内旅行業務取扱管理者に比べ海外旅行まで取り扱える総合旅行業務取扱管理者がより難関。