menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

キーワード

第64回(「無料&放置の“オープン戦略”で活気を呼び込む はんだづけカフェ」)

「社長の繁盛トレンド通信」

 
 

 ◆はんだづけカフェ◆ 


「無料&放置の“オープン戦略”で活気を呼び込む!」

 

秋葉原の新しい顔ともいえる『3331 Arts Chiyoda』。この3階に「はんだづけカフェ」はある

まるで教室のカフェ内。黒板などはそのままだ。左半分が通常のオフィス空間となっている
   

はんだごてはステーション型というプロユース品。ネットを見たメーカーが提供してくれた

ま設計どおりに、部品を基板に配置する「チップマウンター」などの本格的なツールも利用できる
   
 


メイドカフェ、編み物カフェ、勉強カフェ、猫カフェ……。

すでに百花繚乱のカフェ業界だが、東京・神田末広町に『はんだづけカフェ』なるものが誕生し、人気を集めている。文字通り、電子工作の基本作業である「はんだづけ」が自由に楽しめるカフェのことだ。元中学校を改装して、ギャラリーや美大のサテライト教室など、アート系のテナントを集めた複合施設『3331 Arts Chiyoda』の3階に場を構えている。

もっとも「カフェ」の名はついているが、このカフェではお茶やコーヒーは出ない。

そのかわり、元教室の空間には大きめのテーブルが置かれ、ニッパーやラジオペンチ、そしてもちろんはんだごてなどの電子工作用のツールが用意されている。来場者はこれらをすべて無料で使える。室料も無料。会員証さえつくれば、この場所で自由に電子工作ができる、というわけだ。

運営しているのは、電子工作部品を輸入販売する『スイッチサイエンス』。イタリア製の「アルディーノ」という名のマイコンボードがメイン商材だ。同品はシンプルながら手持ちのパソコンで、いろんな「制御」を簡単に楽しめる人気商品である。例えばカメラのシャッターを遠隔操作で切れるようにしたり、フィギュアの目にLEDを装着して自在に点灯させたり、といったことができる。

最も、特徴的なのがUSB端子を繋げば、すぐにパソコンと同期できることだ。実は「アルディーノ」のように簡便にパソコンと繋げられるマイコンが多々登場。ちょっとした電子工作ブームが起きているという。プログラミングやCGなど“デスクトップ上のものづくり”に従事する人は増えたが、メカをいじり、制御するという“リアルなものづくり”は、パソコン好きにとって、実に新鮮に映ったわけだ。

「もっとも、ブームで裾野が拡がっても、電子工作には道具をそろえる必要もあるし、場所も不可欠です。そこで、電子工作のための“ツールシェアの場”を提供しようと考えたのがこの『はんだづけカフェ』なんですよ」(スイッチサイエンス取締役・山田斉氏・以下同)

もともとカフェの半分はスイッチサイエンスだ。つまり、事務所スペースの半分を開放して使っているというわけだ。

「基本的には僕ら社員も来場者の作業を手伝うことはありません。そこにコストはかけたくないし、とにかく自由に気ままに電子工作に触れてもらいたいという意図があるので」

実際、想像以上に「自由に工作を楽しむ」人が多く来店している。50代くらいの筋金入りの電子工作好き、オブジェを作成する美大生、さらに携帯電話やサングラスを飾り立てるギャルの若い女性たちまでが集う。先述通り、スタッフは何も手伝わないが、隣り合う席同士で自らの制作物を自慢しあったり、アドバイスをしあったりという光景が日々見られるという。『ユーストリーム』などの動画配信サイトで、楽しげなカフェの姿も公開されている。

もちろん、いくら来客数が多くともそれ自体は利益を生まない。しかし、この場所で電子工作の楽しさを味わえれば、同社の製品のリピーターになる人も増えるだろう。またユーザー同士の交流から、新しいマイコンボードのアイデアが生まれ、スイッチサイエンスが商品化する、なんていうことがあるかもしれない。

実は「アルディーノ」をはじめとした同社が扱う電子工作部品は全て“オープンソースハードウェア”という概念に基づく製品だ。回路図もソフトウェアも公開されていて、誰でも好きなようにカスタマイズできる。技術を囲い込まず、オープンにしているからこそ、多くのユーザーが集まり、製品の質が高まり、ユーザーも増えたというわけだ。

『はんだづけカフェ』が、無料で場所と機材を貸し、利用者に勝手気ままに楽しんでもらっているのも、同じような“オープン戦略”に基づいた結果、といえそうだ。

「場所代を無料にする」「ツールをタダで貸し出す」「楽しそうなコミュニティの姿をネットで公開する」……。こうした活気の輪を作り上げれば、また多くの人が「自分もそこに参加したい」と考えはじめる。また、そこに集った人々の集合知が、画期的な製品やサービスを生み出すかもしれない。はんだづけカフェの成功を見ると、あらゆる業種でオープン戦略は応用できるのかもしれない。

◆社長の繁盛トレンドデータ◆

『はんだづけカフェ』
東京都千代田区外神田6丁目11-14 3331 Arts Chiyoda #307
TEL:03-6803-2425

http://handazukecafe.com/

 

 
 

第63回(「超・地域密着で顧客の心を掴む ダイシン百貨店」)前のページ

第65回(原点に戻る 漫楽園」)次のページ

JMCAおすすめ商品・サービスopen_in_new

関連記事

  1. 第1回(イメージを大胆に変える)「グレートアントニオ」

  2. 第8回(柔軟な姿勢で時流をとらえる)「吉田スーツ」

  3. 第2回(テーマをとことん絞り、「超専門店」化する)「葱や平吉」

最新の経営コラム

  1. 第49講 カスタマーハラスメント対策の実務策㊱『出るところに出る!』第1部

  2. 第192回 コミュニケーション上手になる仕事の進め方116『話の伝え方』

  3. 202軒目 「博多もつ鍋 もつ彦 なんばアメ村店 @なんば ~大阪名物の『もつ鍋』を初めて食す」

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 製造業

    第171 号 緊急!インフルエンザ撃退2大対策
  2. マネジメント

    第357回 【生産性向上編③】少数精鋭の良さを活かして生産性を向上する
  3. 教養

    第1回 アクションポエム『1%の自分革命』(平野秀典 著)
  4. 人事・労務

    第48話 「2012社長・重役報酬の実態調査」に見る役員報酬の特徴は?
  5. 経済・株式・資産

    第79話 IMFはなぜ中国の経済見通しを上方修正したか?
keyboard_arrow_up