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ビジネス見聞録

今月のビジネスキーワード「AIエージェント」

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AIエージェント導入に向く業務、向かない業務

――早めにAIエージェントの導入に取組まないと、大きな差がつきそうですね。

 AIを一部導入しているところと、そうではないところでは、すでに差はつき始めていると思います。業務の最初から最後まで完遂してくれるAIエージェントが入ってくると、その差は、さらに広がると考えられます。しかし、一足飛びにAIエージェントを導入するのは難しいので、まずは生成AI導入から始めるのがいいでしょう。その進化の先にはAIエージェントがあるので、使っていれば自然にステップアップができます。

――経営者は、最初の導入にあたって、どこから手をつければいいのでしょうか。

 導入がわりと簡単で効果が得やすいのは、チャットボットみたいな問い合わせの一次対応、見積書や議事録の下書きなどがいいでしょう。社内のFAQの検索、営業メールの作成、求人票の作成、定期レポートの要約、請求書・発注書周りの確認なども向いています。要するに手作業の削減や応答遅延の短縮が期待できたり、お客様対応の改善などに繋がる業務が取り組みやすいと思います。

――向く業務と向かない業務があるわけですね。

 ポイントは、いきなり広い業務で導入するよりも、ある特定の限られた範囲、なおかつ反復的な業務で導入する。いきなり例外対応をやらせるのは難しい。反復業務という観点では、月に何回も発生する定型業務であることと、作業の手順書など正解が存在し、AIエージェントを教育しやすいものが揃っていることも重要です。あとは、業務内容。AIエージェントに、いきなり最後までやらせるのではなく、最終承認を人間が担当できる業務にすべきです。かつ一件当たりの作業時間を数分でも削減できれば、採算が合うような業務がいいでしょう。

――導入の注意点はありますか?

 すでに優れた自動化ツールを導入しているケースであれば、無理にAIエージェントを導入する必要はありません。最終ゴールは業務の生産性を高めたり、コスト削減などをすること。AIエージェントの導入がゴールにならないように注意が必要です。

――導入にあたってプロジェクトとか作るのがいいのでしょうか。

 一番いいのは、AIなどに興味があったり、詳しい若手社員を中心に、少人数でいいので導入プロジェクトみたいなカタチで進めることでしょう。なおかつ社長は予算を確保し、若手社員がAI導入を進めやすいような環境を作ってバックアップする。それが社長や経営陣の役割です。

 

●圧倒的な差が出るのは業務フローに組み込まれた時

――どのくらいのスピードで進めばいいのでしょうか。

 会社の規模にもよりますが、ごく限られた人数で、とりあえず試してみるという感じなら、まずは、個人の生産性を向上させるというのが一般的な導入のステップになります。会社の売り上げが上がるとか、全社規模の影響が出てくるのは第三段階くらいでしょう。生成AIもそうでした。

 例えば契約書で分からないことがあれば、まずはチャット形式でAIに聞くという形で使われていました。それが、業務に組み込まれるという次のステップに移行すると、システムに契約書をアップするだけで、AIが自動的に問題がないか確認し、問題があればハイライトして返してくれたり、訂正案を提案してくれたりします。

 このように、AIが裏側で動いていると意識せずに使える状態、そこまでいくと、全社的に生産性が上がっていきます。差がつくとすれば、この業務フローに組み込まれるようになった時からでしょう。

――実際、5年くらいたったら世の中どうなるのでしょうか。

 基本的には、人間がやりたい目標を入力すれば、AIエージェントがそれこそ24時間働き続けてかなえてくれる。人間は結果が出てくるのを待つだけです。たまには問題が起こり「どうしましょうか?」とAIエージェントが聞いてくることもありますが、人間が判断するのはそういう時くらい。人間は作業者ではなく、監督者に専念するようになります。今の進化のスピードでは、5年くらいで、そんな時代が訪れると考えられます。

――経営者に限らず、個人は、どんな努力をしなければならないのでしょうか。

 AIの使い方に慣れることでしょうね。AIのリテラシーを高めるって言えばいいのかな。現在のAIが何ができるのかを理解した上で、AIに業務をどこまで任せるのか、任せないのか、人間がやらなければならないのは何かなどを決める必要があります。この線引きは常に意識しておく必要があるでしょう。

――最後にAIエージェント導入のメリット・デメリットを教えてください。

 メリットは、これまでお話したように、AIエージェントの精度が上がり、任せられる部分が増え、それだけ人間が楽をできるようになることです。定型的な見積書や請求書などは、ほぼほぼできるようになってきましたし、パワーポイントでの資料の作成も実用レベルになってきました。

――デメリットは?

 まだハルシネーションが残っているので、仕事を100%任せられないことでしょう。その作業がきちんとできているのか、最後に人間が確認する必要があります。たとえば資料で使われた数字が合っているのか、出典などをいちいち確認していれば非常に時間がかかる。トータルでみれば時間が削減できたのか微妙なケースもありますね。AIの進化にともなってそういう問題は徐々に解消されていくとは思いますが、支払いみたいにお金が絡むことや、お客様への提出書類などは人間が確認しないと怖いですね。

――最後に、AIエージェントとの上手な付き合い方のポイントを教えてください。

 AIエージェントは、自頭がいいけれど、業務のことが何もわからないような新人みたいなもの。自分たちの業務をどんどん教え込むことで、きちんと答えてくれる。数カ月後には、人間と同じ、もしくはそれ以上の成長してくれると思いますよ。

――育て方次第というところもあるのですね。はありがとうございました。(聞き手/カデナクリエイト 竹内三保子)

城田真琴(しろた まこと)EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 テクノロジーコンサルティング ディレクター

大手電機メーカー、大手シンクタンクを経て現職。専門は先端技術、先端ITビジネスの動向分析、それらを活用したIT戦略の立案支援など。総務省「スマート・クラウド研究会」技術WG委員、経済産業省「IT 融合フォーラム」パーソナルデータWG委員、経済産業省・厚生労働省・文部科学省「IT人材需給調査」有識者委員会メンバーなどを歴任。著書は『AIエージェント』(日本経済新聞出版)、『ChatGPT資本主義』『決定版Web3』『エンベデッド・ファイナンスの衝撃』(いずれも東洋経済新報社)など多数。

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