お客さまが、裏口から入ってきたら?
4月になってから、慌てて新年度の目標を立て始める人って意外と多いですね。中には年末にやり残したあらゆる整理整頓を新年度の目標に引き継いでしまう人も……。
実はこれ、個人だけでなく会社にも言えることです。むしろ会社こそ、情報過多な時代に相応しいこまめな社内美化を強化させていくことが求められます。
さて、少し想像してください。今、目の前に、御社を初めて訪問されるお客さまがいます。もしその方が、うっかり正面口でなく裏口から入ってしまったとしたらどうでしょう。
「うちには裏口なんてないから関係ない」「裏口は社員だけが使う場所だから鍵もかかっているし問題ない」と思われた方も、ちょっとだけお付き合いください。
裏口といえば、社外の人に見えにくい陽のあたらない暗い場所をイメージします。そこは整理ができておらず、余った書類や壊れた部品などが散乱し、足の踏み場もない状態だとします。
忙しさを言い訳に片付けられていない場所。あまり見られたくない、ましてや外部の人など絶対に見せられない。そんな場所に、たまたま足を踏みいれてたまたま目にしたお客さま。一体どんな気持ちになるでしょう。衛生面に対する危機管理が高まっている今、想像するだけでも恐ろしい。飲食業界なら致命的です。
色の話と裏口の話、どう関係あるんだと思われた方も多いでしょう。でも関係ないと思ってしまった方こそ、最後まで読んで欲しいのです。
何故なら「色」は裏や表という境目はなく、どこにでもあり、周囲に影響を及ぼしてしまう繊細な存在だからです。裏によって初めて表舞台の美しさを知れたり、裏舞台を見直したことが、表を見直すきっかけにもなったりもします。そして表を良く見せていく行為は、裏を隅々まで理解したからこそできること。
これまでの色に対する既成概念を、今ここで捨ててください。極端に言うと、「色を色として見ない」ことから色学習をスタートして欲しいのです。
「中身」と「外見」を一致させることの重要性
次に、逆に皆さんがある会社を初めて訪問する時のことを想像してください。会社に到着してまず目に入るのはエントランス周り。
エントランスの何が大切でしょうか。受付で綺麗な女性がお出迎えしてくれること?最新のモニターがありロボットが対応してくれること?それとも広さ?会社の規模に関係なく、お金をかければ大抵のことはできます。
もちろん見た目をよくすることはとても大事です。しかしこの見た目の考え方を勘違いしている方が実に多いのです。
裏口の話もそうですが、見た目というのは表だけではなく、裏口やオフィス内、すべてを指します。
ここまで綺麗にカッコよくしておけば、中身が少々散らかっていてもわからないだろうといった考えを持たられていたら、ちょっとナンセンスです。もしこれが、マンションやビルの設計だったらどうでしょうか。あちこちで地震が起きている今だけに、考えただけでもゾッとします。
「自社なりの綺麗」とは何か?を全社で考える
内装、外装どちらにも言えますが、大事なのはただ綺麗に見せることでなく、自社なりの綺麗に見せる一番の理由を、全社で考えることです。
ただ、トップが理解していないことは社員も理解できません。上に立つ方から積極的に理解を深めなくてはなりません。潔白な嘘偽りのない美しさこそ、本当の美しさ。お客さまへの気配りや思いやりが込められているモノ・コト・スペースは、いつも眩しい光が差し込んでくるかのような、明るい印象を感じさせることができます。
つまり「中身」と「外見」とを一致させることで、本当は深く入り込まないと見えてこない中身を、いかに外見だけで伝えるかが、空間はもちろん見た目を考えるために非常に大切なのです。
初めて御社にいらした方がエントランスでインターホンを鳴らすまでに、どんな気持ちになってくれたらその後スムーズに商談は進み、みなさんの会社のファンになってくれるのでしょうか。
こうした気持ちを考えることこそ、小さな思いやりですよね。お会いした後も大事ですが、その前の空間でどれだけ自社の想いをお客様に伝えておけるかどうかなのです。伝えるのは社長でもなければ社員でもありません。空間自体がダイレクトにお客さまの気持ちに揺さぶりをかけるのです。もちろん無言で。
色は皆さんの代わりに大切なメッセージを伝えることができます。上手に色彩計画を立てることで、わざわざ言葉にしなくても伝えていくことを可能にしてしまうのです。そんな夢のような話を見て見ぬふりをしてしまうほど勿体無いことはありませんよね。次回は具体的に空間にどう色を意識していくかをお話をしていきます。
※本コラムはビジネス見聞録に掲載をしたものです。
■七江亜紀氏(ななえ あき)/株式会社ナナラボ 代表取締役
企業やビジネスパーソンをはじめ今まで3万人以上のカラーコンサルティングをしてきたカラーキュレーター®。
営業成績を向上させる服装の色から部下の力を引き出す色、会議を活発にさせる色など、コミュニケーション力、モチベーション向上などビジネスの場で色の効果を活用するカラーマネジメントを指導。その活躍はファッション、フード、インテリア等…ライフスタイル全般にも広がっている。主な著書に「オレンジこそ最強の色である」、「色が教えてくれること~人生の悩みの9割は「色」で解決できる」他多数。