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ビジネス見聞録

第6回 今月のビジネスキーワード「AI(人工知能)」

ビジネス見聞録 経営ニュース

※本コラムは2020年12月号「ビジネス見聞録」に掲載したものです。

 「AI搭載」「AIの力で」「AIを活用して」…。新聞や雑誌、また広告などで、こんな言葉が盛んに使われるようになりましたが、そもそもAIとは何なのでしょうか。武蔵野大学 データサイエンス学部 データサイエンス学科長の中西崇文さんに伺いました。


●第一次AIブームは1960年代

――そもそもAIは、いつ頃誕生したのでしょうか。まずは、AIの歴史から教えてください。

「AI(artificial intelligence)」という言葉が誕生したのは1956年。アメリカ・ニューハンプシャー州のダートマス・カレッジで開催された『ダートマス会議』で使われたのが最初です。これが一つのきっかけとなり、1960年代に第一次AIブームが起こります。

 当時は、プログラムによって自動的に解決できることを「AI」と呼んでいました。パズルを解いたり、迷路を抜けたり、検索することなどが典型例です。いずれも人間なら簡単にできるレベルでしたが、当時としては、凄いことだったのです。もっとも、このレベルではビジネスには役立たないので、「研究室の話に過ぎない」と世間の熱は冷めていきました。

 次のブームは1980年代。この時に発展したのが「エキスパートシステム」です。それは、「もしAならばB」「AかつCならD」といった具合に、ルールをいれていくことによって、誰でも専門家のような判断ができるシステムです。典型例は診断でしょう。患者さんの症状について入れると、何パーセントの確率で、A病、何パーセントの確率でB病といった具合に考えられる病気が出てきます。

 第二次AIブームでは、このような推論が非常に発達しました。しかし、推論の精度をあげていくためには、沢山のルールを人間がコツコツと入力していく必要があります。医療なら手間やコストを惜しまなければ、システムの構築は可能かもしれませんが、ビジネスでは難しい。そもそもルールが確立されてない分野があったり、ルールの量が膨大すぎたりするからです。

 しかし、すべてのルールを書かなければシステムは動かない。それではビジネスでは利用できないということで、再び、ブームは下火になってしまいました。

●第三次ブームのきっかけ

――2010年代に再びAIブームが起こった理由は何でしょうか?

 一つはインターネットですね。インターネットに沢山の情報が溜まってきたので、「そのデータをうまく使えないのか?」「うまく使うためには、どうすればいいのか」といった観点から関心が高まっていきました。そこで着目されたのが、第二次ブームでアルゴリズム(方法)としては考えだされていた「ニューラルネットワーク」という技術です。

 「ニューラルネットワーク」は、人間の脳の仕組みを模してつくられた技術で、情報の入力層と結果を出す出力層の間に、隠れ層と呼ばれる層をもっています。隠れ層を設けることで、より複雑な判断ができるようになると考えられていましたが長い間、机上の空論でした。

 この隠れ層を、多層にどんどん厚くしていくことで、より複雑な判断を可能にしたのが、「ディープラーニング」という技術で、2006年ごろから大きく発展しました。それは、大量のデータと正解のデータを覚えさせると、コンピュータがデータのルールを見つけ出し、新しいデータの中からも、求められているデータをみつけられるようになるという技術です。

 たとえば、大量の猫の画像を覚えさせると、猫の特徴をAIがルール化し、たとえばネット上から猫の写真だけを拾ってくるといったことができるようになるのです。この技術が、今、起こっている第三次AIブームの火付け役なのです。

●AIとは概念

――AIに関連して「ディープラーニング」とか「機械学習」とか、いろいろな言葉がでてきますが、AIとは一種のシステムとして考えればいいのでしょうか?

 少しややこしいのですが、AIは、概念だと思ってください。人間のような振舞いをする機械、あるいはコンピュータのことを「AI」と呼んでいるのです。 

 言い換えれば「AI」は、人間の知能を実現しようとする試みで、そのためには様々な方法があります。先ほど説明したように第一次のブームではプログラム、第二次ブームではエキスパートシステムなどが試されました。

 そして、現在は、「AI」を実現する手段として機械学習に注目が集まっています。機械学習にもいろいろあります。「ディープラーニング」も、「ニューラルネットワーク」も機械学習のひとつです。

●AIでできること

――「AI」の凄さは分かりましたが、具体的には、どのように活用すればいいのでしょうか?

 それは、「AI」の話をした時に、必ず聞かれる質問の一つですね。私は、人工知能ができることは6つだけだと考えています。それは、「探索」「推論」「分類」「回帰」「クラスタリング」「次元削減」です。

 「探索」は、指定されたキーワードや条件を与えると、それに合致した情報を探してくる技術。Googleが典型ですが、すでに当たり前すぎて、誰もAIと呼ばないし、研究としても完成しています。しかし、非常に人間っぽい機能なので、「AI」ができることの一つに入れておくべきだと考えています。

 「推論」は、与えられた問題について、あらかじめため込まれている知識データ、つまり「ものごとのルール」を基に答えを導き出す技術。これは、第二次AIブームで誕生し、発展した技術です。コールセンターで最適な答えを出すため、保険会社が保険金を支払うかどうか判断するためなど、先述した医療現場以外でも、様々な場所で使われています。

 そして、「分類」は、提示されたものが何なのか、過去のデータから判別してくれること。画像認識や音声認識、個人や属性を特定する顔認識技術などもそれにあたります。「これは中西の顔」「これは橋」「これは猫」といった具合に、指示に従ってデータを分類していきます。自動運転で止まるか止まらないかを判断するのも「分類」です。

 「回帰」は、これまでのデータの遷移から少し先の未来を予測する技術。明日の株価や明日の天気、将棋の次の手などを予測するために使われるのが、この技術です。少しややこしいのが「クラスタリング」。データをどんと与えた時に、似た者同士を自動的に分けてくれる技術です。「分類」と似ていますが、「分類」では、「世田谷在住者」「高額所得者」といった具合に、どう分けるかは、あらかじめ人間が決めているのに対して、「クラスタリング」は決めません。

 たとえば、顧客データを渡して、「5つのタイプに分けてほしい」と指定すると、「AI」が、それぞれの特徴を分析して類似点を見つけて分けていきます。人間の常識に捕らわれないので、データから導き出される特徴の類似度によって分けていくことがポイントとなります。

 最後が「次元削減」。これは、問題を解くための「解空間」を小さくする技術で、よくカクテルパーティー効果にたとえられます。それは、会場ががやがやしていても関心のある人の声ははっきり聴きとれるといった人間の能力のことです。同様に、コンピュータが、すべてのデータを分析するのではなく、答えになりそうなデータだけをピックアップして、分析する範囲を狭めます。そうすることで、分析にかかるコストや時間を削減したり、結果を分かりやすくできるのです。

 「次元削減」の有名な例は、特徴を絞りいこんでいくことで、「猫」とは何かを、人間に教えられることなく理解したことです。AIは、このような6つの能力を単独で、あるいは組み合わせることで、様々なことを可能にするのです。

●中小企業が導入するために

――AIは様々なことができますが、中小企業が導入するためには、どうすればいいのでしょうか?

 まず、意識してほしいのは、いよいよ中小企業がAIを導入するフェーズに入ってきたということです。その理由は、オープンソースが盛んになってきたからです。オープンソースとは、無償のソフトウェアのことで、無料で使える上に、自社に合わせた改変も自由です。中には、何百万円、あるいは何千万円にも匹敵する最新のソフトウェアもあります。オープンソースの普及によって、AIは中小企業にも手が届く技術になったのです。

 ちなみに開発会社が無償でソフトウェアを公開する理由は、企業力の高さをアピールしたり、多くの会社で使ってもらうことで早めに不具合を発見したり、仮に技術者が辞めてしまっても利用者同士のコミュニティで開発を進められるといったことが期待できるからです。

 オープンソースを利用するためには、多少のプログラミングの知識は必要です。社内にプログラミングを分かる人間がいないからといって、外部のシステム会社に頼めば膨大な費用がかかります。小規模ながら、AIの導入で成功している企業の多くは、まず社内にAIの部署をつくり、1から勉強するといったところから始めています。1カ月やったら、こんなことが分かった。2カ月たったら、何かが動くようになった。成功している企業の多くも、そんなレベルからのスタートです。仮に分からないことがあれば、ネットで検索すれば、いくらでも解決策はでています。

 ところで、「AI」は、具体的に解決したい課題があってはじめて導入できるものです。AIを導入して効率化を図るなどと大上段に構えず、「この作業は疲れる」「重複する作業だ」「ミスが多い」といった日常の作業の中で考えた方が課題をみつけやすいかもしれません。

 一方、今、流行している「AI」はデータがないと動かないので、課題を決めたら、課題を要素に分解して、まずは要素要素になった部分をデータとして観測できるかどうかをチェックします。現在はセンサーもあるし、画像認識や音声認識などの技術も発達しています。いろいろなデータのとり方があるので、ひとつのやり方がだめでも、すぐにはあきらめないでください。データがとれれば、あとは、プログラミングをして、実装します。

 このように何が課題か、あるいは、どうすればデータをとれるかといった現場のことは、どんなに優秀な「AI」の専門家でもわかりません。だから専門家に任せっぱなしにすれば、費用が高い上に、うまくいかないケースが少なくないのです。そういう意味でも、社員がAIについて知ることが重要だし、専門家にお願いする場合も、現場と専門家が二人三脚でAI化に取り組むことが必要なのです。

 それでは、中小企業はAIで何をしているのでしょうか。IT業界で有名な活用例は、元システム開発者で、きゅうりの等級を自動的に分ける自動きゅうり仕分け機をつくったきゅうりの栽培家の話でしょう。きゅうりは、長さ、色つや、太さ、イボの有無など、多様な要素で9段階に分けて出荷します。これまで手作業でやっていましたが、非常に神経を使う作業です。そこで、先述したAIの「画像認識」を使って自動化したのです。現場のことが分かるからこその「AI」だといえるでしょう。

 一方、AIは自動化する技術なので、労働者が職を失うという危機感をもつ人は少なくありません。自動化できるところに多くの人を張り付けているケースもありますが、水面下では、すでに多くの中小企業がAI化に取り組んでいます。来年くらいから、それが明らかになっていくでしょう。

 しかし悲観的になる必要はありません。それらのAIをどのように使えばよいのかというリテラシを高めることができれば、新たな職業につくことも難しいことではありません。逆にいえば、ほとんどの方が、データサイエンスやAIのリテラシを持ち、社会を変えていくことができれば、急速に発展する技術を適用していくグロバール社会の中でも生き残れるのではないかと考えます。(聞き手 カデナクリエイト/竹内三保子)

 

 

 

 

中西崇文(なかにし たかふみ)
武蔵野大学データサイエンス学部データサイエンス学科長。2006年3月、筑波大学大学院システム情報工学研究科にて博士(工学)の学位取得。2019年4月より現職。専門は、データマイニング、ビッグデータ分析システム、統合データベース、感性情報処理、メディアコンテンツ分析など。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター主任研究員、デジタルハリウッド大学大学院客員教授などを兼務。著書に、『稼ぐAI 小さな会社でも今すぐ始められる「人工知能」導入の実践ステップ』(朝日新聞出版)、『シンギュラリティは怖くない ちょっと落ちついて人工知能について考えよう』(草思社)などがある。

※本コラムは2020年12月号「ビジネス見聞録」に掲載したものです。

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