社員自ら考え、行動し、互いに高め合う文化をいかにしてつくるべきか。数多くの組織変革を支援してきた中島崇学氏に業種や規模を問わず、いまを飛躍する企業が取り組んでいる「新時代のマネジメント」について語っていただきました。
■中島崇学氏(なかじま たかあき)氏/株式会社共創アカデミー代表取締役/ファシリテーション塾塾長
慶應義塾大学卒業後、NEC入社。人事、広報、組織改革など、社内外のコミュニケーション畑を歩む。特に組織改革では、社内ビジョン浸透のための「3000人の対話集会」の企画実施をはじめ、全社規模での組織開発プログラムを実施。NEC在籍中より社外の仲間と活動開始。会社、家庭以外の「第3の居場所」を創り、そのコミュニティをもとにNPO法人はたらく場研究所を設立。組織開発をテーマに、組織を越えた、横断型勉強会を運営する。社内外の活動の循環が軌道にのり、2019年独立。ライブ型ファシリテーションスタイルの研修が好評を得て、上場企業から官庁、自治体まで活動の幅を広げる。現在は株式会社共創アカデミーを設立し、組織を越えて活躍できるリーダーを育成するためにファシリテーション・リーダーシッププログラムを提供。また、講師を養成し活躍の場も提供している。著書『一流ファシリテーターの空気を変えるすごいひと言』(ダイヤモンド社)、『いったん受けとめる習慣』(フォレスト出版)
多くの経営者が「社員が主体的に動かない」と悩んでいますが、なぜ今、従来のマネジメントが通用しなくなっているのですか?
ひと言で言うと、環境変化の加速や価値観の変化に、組織が対応できていないということです。
かつては、経験豊富な上司が正解を知っていてそれを部下に教えるという構造が成り立っていました。しかし今は、環境変化が速く、正解がすぐ陳腐化し、現場のほうが情報を持っており、「上が正解を持ち続けること」自体が不可能になっています。それでも従来型マネジメントを続けると、上司は疲弊、部下は指示待ち、組織は硬直という悪循環に陥ってしまいます。
また、以前は給料、評価、立場といった外発的動機づけでも、人は動きました。しかし今は、特にZ世代は、「意味が分からない仕事」「納得できない方針」に対して、心が動かなくなっています。つまり「腹落ち」「自分事化」といった内発動機が不可欠になってきたのです。
「関係の質」の見直しで強い組織へと飛躍する
こうした変化に対応するには、部門連携、情報共有、助け合いが不可欠です。 しかし、上下関係が強い組織では、本音が出ない、情報が上がらない、相談が遅れるということが起きています。ほとんどの組織が、関係の質を見直さねばならない状況に直面しているのです。そのカギとなるのが「共創」です。
関係の質を見直すカギ「共創」とは、具体的にどのような状態を指しますか?
共創とは、「ミッションと時流を踏まえ、相互理解を軸に、一人ひとりが、自分らしく、のびのびと共に新鮮な価値を生み出している」と定義しています。「協力」や「協働」は、「想定(決まったゴール)に向かって力を合わせる」という意味です。
それに対して「共創」は「想定を超えた新鮮な価値を創り出すことです。予定調和では、勝てない時代です。一人では思いつかなかったことや、一人では踏み出せなかったこと、互いが影響し合った結果として生まれる価値、「まさか、そこに行くとは」という驚きと喜びが、共創の成果です。
共創の成果として、生産性や利益率、採用面においてどのような変化が現れるのでしょうか?
ある中堅製造業では、以前は設備トラブルが起きるたびに、部署間や上下の社内確認に時間がかかり、復旧まで半日~2週間かかっていました。共創の取り組みとして、枠を超えた現場・保全・品質の混成チームをつくり「判断していい範囲」を明文化、月1回の振り返り対話などを実施することで、連携して復旧できるケースが増え、停止時間が半分以下になりました。
また、あるBtoB企業では、毎年「利益率が下がる→コスト削減」の繰り返しでした。共創型に切り替え、営業・現場・バックオフィスで、「お客様が本当に困っていること」や「お客様の期待の変化」を対話しつつ、一対一の対話で様々な小さな実験を許可するようにしました。すると、新サービスを顧客と共同で開発するなどで、利益率は3年で向上しました。
採用面については、あるIT企業では、給与や福利厚生が整っているのに、応募が集まりませんでした。共創の取り組みとして社内対話を増やし、経営者がビジョンを語り、社員の価値観を言語化すると、社員がSNSや知人に言い始めます。「うちは、意見を言っていい会社だよ」「自分らしく働くことができるよ」と。その結果、社員が〝生きた広告〟になって採用に寄与しました。
共創は「関係性・対話・意思決定の速さ」で決まる
事例をまとめてみると、「共創する組織」へ生まれ変わるということは、シンプルな言動の変化から始まるので、コストがほとんどかからず、成果につながる打ち手ということが分かります。
共創は「資本・規模・制度」ではなく「関係性・対話・意思決定の速さ」で起きます。ですから、中小企業は〝大企業より有利〟です。
詳しく言うとまず『人と人の「距離」が近い』ことが有利です。共創に必要な「関係性の土壌」が、すでにあるというわけです。大企業ではこれをつくるために、研修、制度、プロジェクトなどを時間をかけて進める必要がありますが、中小企業ではスピーディな「場づくり」から始めることができます。
そして次に『「一人ひとりの個性」が価値になりやすい』こともメリットです。
中小企業では、一人が複数の役割を担い、型にはまりすぎることなく、個々の得意分野や関心が仕事に直結します。こうした特徴は、共創にとって非常に有利に働きます。共創は、組織を画一化するのではなく、多様な「その人らしさ」から価値を生みだす取り組みです。中小企業は、人の〝らしさ〟をそのまま活かせる余白があります。
さらに最大の利点は『社長の影響力が圧倒的に大きい』ことです。中小企業では、社長の言葉、社長の態度、社長の問いが、そのまま文化になります。これは裏を返せば、社長が共創の姿勢を体現すれば、組織は一気に変わるということです。大企業では難しいこの〝レバレッジ〟が、中小企業にはあります。
このように共創する組織に必要なことは、「すでにある関係性」を信じ、場と対話で磨き直すことです。それができる中小企業は、大企業よりもずっと早く、ずっと深く、共創を武器にできます。
「共創する組織づくり」を考えている社長は、まず何から始めればよいでしょうか?
共創する人と組織をつくろうとするとき、社長が最初にやるべきことは、人を変えることでも、仕組みを変えることでもありません。社員に何かをさせる前に、組織を変えようとする前に、社長自身が〝共創の起点〟になることが、すべての出発点です。まず「挨拶を変えてみること」から始めてみてはどうでしょうか?
具体的には、①挨拶の後に相手の名前を付ける。(「おはよう。〇〇さん」)②ひと言加える(「寒いけど体調大丈夫?」など)③感謝を伝える(「この間の○○は助かったよ。ありがとう」など)の3ステップです。挨拶は、コミュニケーションの要です。社長が自ら要の基点となることで変化が始まります。社長の小さなひと言が共創する人と組織をつくるスタートになるのです。
共創を組織に定着させる!社員を巻き込む3原則
そして共創の定着のためには継続が重要です。つまり社員を如何に巻き込み続けるかの秘訣が大切で、それは次の3点です。
①共創を広げる人材を探してチームにすること。肩書によらず共創を広げてくれそうな人を探してチームにすることから始めましょう。
②共創を「イベント」にしないで日常に組み込むこと。共創体験での発見やアイデアを具体的に日常業務のやり方や制度や仕組みにすることです。
③小さな成功体験を〝見える化〟すること。変化を実感できないと、元に戻るのが人です。「会議で意見が2倍出た」とか「部署を超えた相談が増えた」などの小さな手応えの積み重ねは全社で見える化をしていく必要があります。
最後に、この講話を聞かれる社長にメッセージをお願いします。
この講話は、社長であるあなた自身が、組織をどんな未来へ導いていきたいのか。その問いに、そっと向き合う時間です。同時にあなた自身の「志」の力強い実現に直結する時間です。共創の起点に立つのは、紛れもなく「社長」です。
社長が孤軍奮闘する経営から、組織全体が無理なく総合力を発揮する経営へ、という経営の質的転換です。そのためのシンプルな秘訣を具体的にお伝えしました。この講話が、あなたの経営人生における確かな転機となることを願っています。共に、時代に応じたパフォーマンスの高い組織をつくって、空前の高業績を実現しましょう。



























