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税務・会計

第108回 部門の予算編成に経理を参加させると目標達成度が上がる

賢い社長の「経理財務の見どころ・勘どころ・ツッコミどころ」

会社の予算編成には、経営層が示した目標値を各部門に落とし込むトップダウン型と各部門からの予算を積み上げるボトムアップ型があります。

いずれかのやり方で、経営目標を達成するための売上や経費などの数値を予算にまとめていきます。

このとき、経営トップと各部門間の予算の調整など、予算編成をコーディネートする役割を担うのが、中小企業においては経理部門です。

経理が、各部門の予算編成の段階から関わることにより、全社予算の実現可能性が高まります。

そこで今回は、部門の予算編成に経理を参加させるメリットについて、説明します。

 

経営トップと各部門の予算調整はどうやっていますか?

 

経理の視点で部門予算の実現可能性をチェックする

中小企業の予算編成の仕方は、会社の規模や業種によってさまざまです。

毎月の収入や支出を会計の勘定科目ごとに詳細に設定している会社もあれば、ザックリとした売上と経費の目安を示しているだけの会社もあります。

 

部門管理者の会計の理解度に差があるのも一因です。

会計や予算をよく理解していない部門管理者の場合、会社の売上目標に合わせて、部門の売上目標を設定し、売上の増加分に見合う経費を調整して、予算書を作成しているケースが少なくありません。

前年度の予算集計のExcelシートをコピーして、数値の検討をほとんどせずに、売上高と経費を各2%ずつ増加させただけの部門予算資料を見たことがあります。

 

会計の理解度が低い部門管理者に対しては、経理が予算の考え方や、会計数字の設定の仕方などを助言してあげるといいでしょう。

経理担当社員は、会社全体の財務状況や資金繰りを日常的に把握しています。

月次決算においては、経理が各部門別の業績を集計して、勘定科目ごとの変動を点検しているので、数字の推移や傾向を踏まえた検討ができます。

 

経理が各部門の予算編成会議に参加することで、計画が現実的かどうか実績値をベースに客観的に評価するようになります。

たとえば、予算の収益予測が楽観的すぎる場合や、支出計画が不必要に膨らんでいる場合、経理の視点から具体的な調整を促すことが可能です。

これにより、翌年度になってから予算が実績と乖離するリスクを軽減できます。

 

各部門がどうやって予算数値をまとめているか知っていますか?

 

経理がムダな支出を削減する

予算編成をする時期は、第3四半期から年度末にかけてです。

今期の業績達成に向けて忙しい時期なので、翌期の経費予算の詳細を検討する時間はあまりありません。

その結果、多くの場合、経費科目の金額は前年踏襲か、前年度の金額に物価上昇分をプラスするだけになりがちです。

それぞれの経費の内訳について、費用対効果を検証することなく、継続して支出している費用がほとんどです。

 

このように、各部門が独自に予算を策定する場合、資金のムダ遣いや不必要な支出が発生していることがあります。

たとえば、毎年同じ時期に広告宣伝費を支出している場合、本来であれば、売上の増加や顧客獲得効果を測定して、広告媒体や宣伝時期、金額等を毎年見直すべきです。

 

また、物価上昇が続く中、何もしないと経費予算は増加し続けます。

経理から経費削減事例を提示しない限り、自ら積極的に経費削減を予算に盛り込む部門は多くないでしょう。

具体的には、全社でデジタル化を促進し、コピー用紙代、プリンタートナー代、封筒代、郵便代などの経費削減策をすべての部門で実施するようにします。

 

経理から費用対効果の実績値や経費削減例などを指摘されて、部門管理者がはじめて問題に気づくことはよくあります。

毎月の請求書の内容をチェックしている経理が、ムダを省き、適切な資金配分の再検討を提案することで、効率的な予算に基づく事業活動が実現するようになるのです。

 

物価上昇や賃上げで、会社の経費は何パーセント増加していますか?

 

経営方針を各部門と共有し全社予算の整合性を確保する

各部門が個別に予算編成した数字を集計すると、会社全体の事業計画とは一致しないことがあります。

その場合、各部門から提出された予算案を差し戻して、何度も作り直してもらうことになり、時間と手間ばかりかかります。

 

しかし、当初から経理担当社員が各部門の予算編成会議に参加することで、会社全体の方針に基づいた一貫性のある予算編成が可能になります。

経理は、経営陣の意図や長期的な財務戦略を理解しているため、各部門の計画が経営方針と整合性を保っているかをチェックする役割を果たしてくれるからです。

 

一方で、経理担当者が予算編成会議に参加することで、管理部門と事業部門とのコミュニケーションが充実し、情報共有がスムーズに行われるようになります。

これにより、管理部門が事業部門の活動内容や目標を深く理解し、現場の状況を経営トップへフィードバックできるとともに、関連部門との協力体制が強化されます。

結果として、予算編成のプロセスが全社で透明化され、数字の信頼性が向上します。

 

このように経理が、部門の予算検討段階で、経営側と各部門との調整役になることにより、効率的に実現可能性が高い予算を策定することができるようになっていくのです。

 

部門管理者は、経営方針を理解していますか?

 

予算の精度を高めて計画の実現度を向上させる

今回は、部門の予算編成に経理を参加させるメリットについて、説明しました。

ポイントは次の3つです。

  • 予算編成のやり方を経理が各部門に助言する
  • 経理が経費予算を点検して部門予算のムダを排除する
  • 経営側と各部門の考え方を経理が数字で調整する

 

各部門の予算編成に経理担当者が参加すると、予算の実現可能性が向上するだけではありません。

経理が予算の背景や数字の中身を理解しているため、予算執行後の業績管理の数字の検証が深まり、問題が発生した場合でも、迅速かつ的確な対応ができるようになることでしょう。

こうして予算の実行精度が高まると、各部門の計数管理のレベルが上がり、会社の成長が期待できます。

 

予算が絵に描いた餅で終わっていませんか?

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